世界一難しい恋 (第9話・2016/6/8) 感想

日本テレビ系・『世界一難しい恋』(公式)
第9話『諦め切れない恋と夢…偶然再会で最高のプロポーズ』の感想。
美咲(波瑠)に会えず、電話もできない状況下、零治(大野智)は自転車通勤の三浦(小瀧望)が毎朝、美咲と擦れ違うことを知る。そこで、通勤を自転車に切り替えるが会えずじまい。さらに、美咲の勤務先近くで風船を配る‘ゆるキャラ’の着ぐるみに目を付け、中に入っている藤田(上島竜兵)の特訓を受ける。一方、和田(北村一輝)が突然思いも寄らぬ行動を。零治は和田と話し、美咲についてまだ知らないことが多いと気付く。
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
感想に入る前に、第6話の感想(本家blog)に 951 回、第7話の感想(本家blog)に 950 回、第8話の感想(本家blog)に 705 回もの多大なWeb拍手を頂き、ありがとうございます。大反響に管理人・みっきーも驚いております。では今回も、皆さんの期待に恐れることなくいつも通りに私独自の解釈で、第9話を楽しみながら分析したいと思います。今回も誤字脱字ありの長文で恐縮です…
前回以上の、脚本と演出の攻めの姿勢に脱帽
今回は最終回直前回と言うことで、再び同じホテル社長の零治(大野智)と和田(北村一輝)を対比させ、ホテルを舞台にしたラブコメであることを再認識させたのが良かった。
また、自分のホテルをつくりたいと言う “未来のホテル経営者” として美咲(波瑠)を描きつつ、零治の父・幸蔵(小堺一機)と絡めて、「俺の夢に触るな」と言った零治に美咲が心を動かされのも印象的。
零治、美咲、和田の3人を一か所に集めて描くのでなく、ラストシーンまで零治と和田、和田と美咲の2ショットだけで引っ張り、途中で着ぐるみの中の零治と美咲と言う変則2ショットを挟んで、これでもかと言うくらいに視聴者を焦らしまくった前回以上の脚本と演出の攻めの姿勢に脱帽だ。
ドラマとCMの内容が、見事にシンクロしてる
さて、今回はテレビドラマとして本作の企画性と内容が、ドンピシャにマッチしていることに驚愕したことに触れてみたい。それが、零治が “ゆるキャラ” の着ぐるみに目を付け、中に入っている藤田(上島竜兵)にビジネスの話を持ち掛けるシーンと、その直後に放送された『キリン一番搾り』のCMとの関係だ。
ご存知の通り、テレビドラマは視聴者にCMを見てもらうために作られる。CMありきでテレビドラマは成立しているのだ。だから、CMの内容とドラマのテーマは合致しているのが良いに決まってる。しかし、多くの場合は、さっきまで泣いていた主人公が、CMではにこやかに笑ってるような、物語を台無しにする作品が殆どだ。
だが、本作は違う。これから藤田に特訓を受ける零治の前に、大野智さんと上島竜兵が出演する『しあわせ一番町 ガラス工房篇』が流れる。「喜んでくれるかなあ」と相手のことを思って、ガラス工房で吹き棒を吹きビールグラスを作る男たちに、「きっと伝わりますよ」のナレーションが被る。
この「きっと伝わりますよ」の意味は当然にお中元のことなのだが、零治の美咲への気持ちとしっかりリンクしている。ここがお見事なのだ。真剣な表情で誰かへの贈り物を作るCM中の2人とドラマの中の2人が完全に重なっている。ここまでドラマとCMの内容が見事にシンクロしている連ドラは、ここ最近観たことがない。
零治抜きで、零治の存在感と2人の距離感を描く演出
今回、私が注目した演出は、終盤で零治が留学時代に使っていた本を美咲が手にするシーン。三浦(小瀧望)が去り、封筒の差出人「鮫島零治」のアップで印象的な効果音が入る。ここから今回最も秀逸でさり気ない演出が始まる。
ここから効果音やBGMは一切なくなり、現場の環境音だけの世界になる。紙の擦れる音を強調したりするが、無音の世界が続く。そして零治のメモが登場。普通なら零治のナレーションでメモの内容をなぞる(読み上げる)のが一般的な演出だが、第4話も担当した菅原伸太郎氏の演出は違う。
第4話で、「冴えない男のラブコメ」と「客を満足させる天才男サクセスストーリー」を見事に融合して魅せた演出を活かして、ここ数回控えめに描いていた「零治のサクセスストーリー」を印象的に復活させるため、そして視聴者と美咲を同じ気持ちにさせるために、零治のナレーションを入れず想像させた。
そして、丁寧に緻密に書かれた零治の注釈メモのアップで、「45秒間の沈黙」を破り、サントラ24曲目の『世界一難しい恋 おまえが好きだ』のサビがかかる。映像ではページがめくられる度に美咲のアップが寄っていき、大アップの美咲の笑顔で心境に大きな変化が起きたのが分かる。
零治が登場しないのに零治の存在感と2人の距離感を最大に描く秀逸な演出だと思う。
"ただのラブコメで終わらせない" 大野智の演技の魅力
今回は企画性の高さ、脚本の緻密さ、演出の細かさに触れてきたが、やはり “俳優・大野智” の演技の素晴らしさを再確認・再認識した1時間だった。
34歳でやっと初恋を叶えたのに失恋して、アンコントローラブル(操縦不能を意味する航空用語)になった自分の感情を、必死にコントロールしようとする複雑な心境の “鮫島零治” を、絶妙なバランスで誇張・強調し簡略化・省略化した表情だけでなく身体全体を使った喜怒哀楽の演技で、魅力ある登場人物に魅せていることだ。
言い換えれば、漫画が原作で無いのに敢えてのちょっぴり劇画チックな演技で、「大人も子どもも楽しめるラブコメ・ファンタジー」に昇華させているのだ。ただのラブコメで終わらせないと言う “俳優・大野智” の強い意思が、この恋を成就させたい “鮫島零治” に重なる。ホント、素晴らしい演技だ。
「クビアカトラカミキリ」と美咲の衣装に注目
零治「周りの人間が躍起になって消そうとしても、
やけになった自分が本気で消しにかかっても、
それでも消えずに残ってしまうもの。
それが俺にとっての夢だ。つまり、君にそっくりだ」
美咲「クビアカトラカミキリと、どっちが似てますか?」
零治「どっちにも、よく似てる。
何度もクビと言いかけたのに言えず、
やっとクビと言えたのに、
それでも消えずに残ってしまうもの。それがみささんだ」
この愛の告白のシーンも素晴らしかった。のだが、ここで最後に1つだけ、美咲の衣装に注目して欲しい。本作で「クビアカトラカミキリ」が初めて登場するのは、第1話の中盤で零治が「お前はクビだ」の言い訳するシーンだ。その時の美咲の衣装が、黒系とベージュ系の太い横ストライプのセーター。
そして、この場面での美咲は、黒系とベージュ系の横ストライプのワンピース。この黒系にベージュ系のストライプこそ、「クビアカトラカミキリ」の胴体の模様に似ている(画像リンク)のだ。こう言う遊び心をきちんと取り入れてるから、ラブコメとしての完成度が上がると言う好例だと思う。是非、録画で確認して欲しい。
あとがき
感想記事のアップが遅くなりました。何せ朝の6時から4回は観直し確認したり、本作のサントラCDを聴き直したりしたので。そして、午前中が全く仕事にならない…(苦笑)
それにしても、ラストシーンをキスでなく、ハグに留めた脚本のセンスが最高ですね。それに5段の段差から少しずつ近づくあの緊張感の演出、あのぎこちなさの演技、すべての視聴者がハラハラドキドキしたのではないでしょうか。むしろ、キスよりも胸キュンさせる不器用なハグがサイコーでした。
恐ろしい程に芯の強い男が、恋愛だけは不器用と言うのが堪らない。芯の強さで恋愛相手への臆病さを乗り越えようと成長している零治から目が離せません。一体、最終回はどんなエンディングになるのか、楽しみです。
【お知らせ】(2016/05/19 21:09)
『『世界一難しい恋』の記事に、たくさんのWeb拍手をありがとうございます』
を掲載しました。皆さんに感謝いたします。
【お知らせ】(2016/05/19 12:47)
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