世界一難しい恋 (第8話・2016/6/1) 感想

日本テレビ系・『世界一難しい恋』(公式)
第8話『新たな恋は足裏上手安らぎ秘書?ダメ親父教えるまごころ』の感想。
零治(大野智)は、美咲(波瑠)に放った自身の最低な発言を後悔する。落ち込む零治の様子を見た白浜(丸山智己)やまひろ(清水富美加)たち社員は、零治が発言を撤回する場を設けようと画策。美咲に謝る機会を得た零治だが、彼女から思いがけないことを聞き、さらにひどい言葉を返してしまう。そんな中、和田(北村一輝)と話した零治は、舞子(小池栄子)を見る目が変わる。一方、零治と確執のある父・幸蔵(小堺一機)が職場に現れる。
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
今回も感想に入る前に、第6話の感想に 927 回、第7話の感想に 920 回もの膨大なWeb拍手を頂き、ありがとうございます。反響の大きさに管理人・みっきーも驚いております。では今回も、大反響にビビることなくいつも通りに私独自の解釈で、第8話を分析&エンジョイしたいと思います。
今回は過去の応用編でもあるので、「説明不足」と思われたら、第6話と第7話の感想を読んで頂けると分かり易いと思います。
"視聴者を焦らしまくる" 制作陣の攻めの姿勢が良い
まず、細かい部分に入る前に言いたいのは、前回で零治(大野智)が美咲(波瑠)を強制解雇したことで、ある意味淡々と進んできた「34歳で初恋を叶えた恋愛感情をこじらせたホテル社長」の物語に、思い切って終止符を打った本作。今回は最終章に向けてまた大きく舵を切ってきた。
それが、これまで零治の良き理解者であり恋の指南役であった舞子(小池栄子)を、零治の恋愛対象(風)に新たに位置付けた。それによって、恋バナとしては零治と美咲の微妙な関係が唯一の見所だったのに、舞子の母や姉に似た包容力の愛の行方までが見所になり、零治と舞子の距離感まで変えてきた。
残り2話の終盤である第8話でも、更に変化を見せて “視聴者を焦らしまくる” 本作の制作陣の攻める姿勢はホント素晴らしい。
“上手と下手” の演出テクの応用編を解説
では、まずは第6話の感想で書いた “上手と下手” の演出テクの応用編を。冒頭、美咲を解雇して落ち込んでる零治が舞子と初出社するシーン。マイナス思考の人物は下手(しもて:画面に向かって左側)向きなのを思い出して欲しい。落ち込んでる零治はエレベーターの中も、出る時も下手向き。ここまではいつも通り。
いつもなら、3カット目で社長室に入る時は、下手のドアから上手(かみて:画面に向かって右側)に向かって歩く零治のカットになる。しかし今回は見逃しそうなほど短いカットだが、零治の胴体だけが下手に歩く1カットが挿入されていた。
そしてその分、社長室に入る最後のカットは撮影セットの構造上で上手向きにしか撮影できない(と思う)から上手向きのカットの零治は下を向いて短いカットで済ませていた。もうお分りだと思もうが、零治の落ち込んだ心境をいつもの出社シーンで表現するための技が使われたのだ。
毎度のように、普通にエレベーターからは下手向き、その後は上手向きで零治が入って来たら、いつもと同じ。映像が同じだと登場人物の内面も同じに映る。それを嫌っての「零治の胴体だけが下手に歩く1カット」で、今回で更に変化を見せる本作の制作陣の攻める姿勢を冒頭でしっかりと見せた訳だ。
零治の "真正面目線" で、物語の先に暗示をかけた
“上手と下手” の演出テクは、美咲とまひろ(清水富美加)のカフェのシーンにも踏襲された。美咲のカットが、これでもかと言う程に徹底的に下手向きなのだ。それに直結する社長室の零治まで、下手向きのアップと言う凝りようだ。
前回で、実業家とコールガールが出会い恋に堕ちるアメリカ的シンデレラストーリー映画『プリティー・ウーマン』でリチャード・ギアに愛想をつかして去っていくジュリア・ロバーツをリスペクトしたように、零治の下を去った美咲。でも、美咲には別れても捨て(隠し)きれない感情があることを “下手目線” で描いた。
その美咲の感情に、更に “下手目線” の零治を繋げて気持ちも繋がっていることを表現。そして秀逸なのが零治が思い立った時に “真正面目線” の無言の1カットを入れて、物語が違う方向に進みそうな暗示をさせたこと。今回は零治の短い1カットが演出の肝になっているのだ。
涙を堪える零治、大きな瞳に涙を溜める美咲に感動
演出の話が続いたから、ここでは演技面で私が好きなシーンのことを書いてみる。それが美咲の送別会での零治と美咲の涙ぐむ芝居だ。実は乾杯の前から、2人とも(舞子も)少し目は潤んでいるのだが、口ゲンカが始まると、徐々に涙ぐんでいく。「神奈川県から出て行け」と強がる零治は涙をグッと堪え続ける。
一方、そんな無茶ばかり言う零治にどんどん悲しさを増す美咲の目も、少しずつ少しずつ涙が溢れんばかりになっていく。強がることしか出来ない零治のもやもやした気持ちを涙を堪える演技で魅せた大野智さん、不安な気持ちが増えていくだけの美咲を大きな瞳に涙を溜める演技で魅せた波留さん。2人の演技力に感服だ。
零治と舞子の複雑な距離感を "全身と爪先" で描写
では、再び演出の話。今回でお見事だったのが、今回で更に変わった零治と舞子の距離感を映像で表現したシーン。もちろん、零治が舞子にキスをしようとするシーンではない。21分頃の運転手の石神(杉本哲太)から舞子は零治を「本当の見方」と伝えたあとの、社長室のシーンだ。
文字で解説するのはとても困難だが、ここに触れない訳にはいかないから、出来るだけ解り易く要点を書いてみる。ここでの見所は、実はこれまであまり映らなかった舞子の全身(フルショットと言う)の映し方と、舞子の爪先だ。2人の距離感がいろんな意味で徐々に近づくことを表現しているのだが…
冒頭、舞子は奥の部屋にいて、舞子は小さく映り足の爪先まで見えている。手前の零治は足が見切れており、2人の距離が遠いことを示している。その後、舞子が零治のもとへ歩いてくるが、ここでも1カットだけ画面下ギリギリに爪先があることに気づいて欲しい。
一気に零治に近づかずに、一度全身を見せることで、舞子が零治に対して一目を置いた尊敬する人物であることを描いているのだ。そしてその後は一気に近づき、零治に触れる。熱を測ったあと、カメラは奥の部屋に入り怪訝な顔の零治を映すことで、更に違った角度から2人の複雑な距離感を描く。
いやあ、画面ギリギリの爪先や奥の部屋からのカット、実に丁寧な演出と撮影と編集だ。こう言う手抜きゼロの仕事を見るだけで嬉しくなってくる。
更に恋心をこじらせた零治を演じた大野智の新たな魅力
今回は、舞子、石神、そして和田(北村一輝)の3人の恋の指南役を上手く活用して、再び「難しい恋」を魅せたと思う。特に父・幸蔵(小堺一機)を登場させて「会いに来る勇気」で受け身の零治に行動力を付けたのは良かった。そして、48分頃に足を揉んでもらう零治が舞子を「村沖」と苗字で呼ぶのも新鮮で良かった。
しかし、一番良かったのは、34歳で折角初恋を叶えたのに失恋までして、更に恋愛感情をこじらせたホテル社長が、自分の感情を上手くコントロール出来ない状況を、前述の涙やふくれっ面の表情など多彩な芝居で見事に演じた “俳優・大野智” の新たな魅力だ。
もちろん、波留さんや小池栄子さんも素晴らしいし、北村一輝さんが登場すると画面が引き締まる。本当に脚本と演出を俳優陣が素晴らしく一体化している本作。今後が楽しみでしょうがない。
あとがき
ラストで緑色のネクタイで変身して、美咲のもとを訪れるシーンの2人のやりとりも感動的でした。果敢に攻めまくる零治も純粋でカワイイですが、そんな零治に美咲が冷静に対応するのが実に切なすぎます。また、コンシェルジュの登場で、ホテルが舞台のドラマであることを再認識もさせてくれました。
そして、ラストで美咲を出待ちする時に二十六夜の月(「C」の逆向きが三日月で今回は「C」の月だから)が1カット入りますが、これも “上手向き” に見えませんか。月も零治と美咲の「難しい恋」を応援してる。そんな風に見えました。次回も大いに期待します。
【お知らせ】(2016/05/19 21:09)
『『世界一難しい恋』の記事に、たくさんのWeb拍手をありがとうございます』
を掲載しました。皆さんに感謝いたします。
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【これまでの感想】
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