[読書] 「暮しの手帖」とわたし (大橋 鎭子/著・花森 安治/イラスト・暮しの手帖社) 感想 ※平成28年度前期 NHK連続テレビ小説『とと姉ちゃん』モチーフ,大橋鎭子の自伝

朝ドラ『とと姉ちゃん』モチーフ 大橋鎭子さんの自伝
『暮らしの手帖』は母の愛読書であり、私自身も幼き頃から親しみ読んでいた。特に、物心がついてからは「広告のない本」と言う異質な存在と真面目な編集姿勢に興味関心を抱きつつ読んでいた。その創刊者であり編集長・大橋鎭子さんが93歳で亡くなる3年前に書いた、90年間の人生の回想録。
また、鎭子さんは、2016年4月4日放送開始のNHK連続テレビ小説『とと姉ちゃん(高畑充希さん主演)』(公式)のモチーフとなっている。なお、脚本家・西田征史さんの解説と、大橋さんが93歳で永眠するまでのエピソードを特別収録した『【ポケット版】「暮しの手帖」とわたし』が2016年3月23日に発売予定だが、今回はオリジナル版の感想。
10歳で亡父の喪主を務め、家族を支えた “とと姉ちゃん”
物語は、とと姉ちゃんと呼ばれた戦前編と、女性編集長としての戦後編に大きく分かれる。
小学5年生の時、「お父さんは、みんなが大きくなるまで生きたかった。でもそれがダメになってしまった。鎭子は一番大きいのだから、お母さんを助けて、晴子と芳子の面倒をみてあげなさい(P.48)」と言葉を遺して亡くなった父の臨終でも、泣かずに家族を支える決心をした鎭子。
そして、亡父の葬式の喪主も小学5年生の鎭子が務めた。喪主の挨拶もしたと言う。これは、父の言葉を重んじた母があえて一歩退き、長女を前面に立てたそうだ。因みに、亡き父に代わって母と妹たちを守る「とと(父親)」の役割を果たしたから「とと姉ちゃん」と呼ばれたと言う。
一方、母も父親のいない3人娘を育てなければいけない厳しさの中で、小樽育ちで女子美術学校出身の母は、オルガンを弾いて娘たちと歌うのが何よりの楽しみだったと。何とも凛とした中に愛情溢れる家族像が見えてきた鎭子の子供時代だ。
お金や物が無くても、工夫と知恵でおしゃれで豊かに…
戦後編は、『暮しの手帖』創刊までの経緯や、販売経路の苦労話や執筆者探しの努力、記事の信ぴょう性の確保のための工夫など、1946年(昭和21年)から今もなお読者からの熱い信頼を受けて発刊し続ける魅力の原点がぎっしりと詰まった内容。
特に、26歳の鎭子さんの「女性を元気にしたい」との思いで、戦後すぐにお金や物が無くても、工夫と知恵で暮らしをもっとおしゃれに豊かにできるアイデアを集めたのが『暮しの手帖』。この本で、どれだけの家庭が明るく楽しくちょっとおしゃれな暮らしができたろうか。
また、『暮しの手帖』と言えば「商品テスト」が目玉記事。信ぴょう性と信頼の証として、広告は外部からのものは一切受けず、自社書籍についてのみとしているのが素晴らしい。
その理由(P.107)は「表紙から裏表紙まで全部の頁を自分の手の中に握っていたい」のと「スポンサーからの圧力がかかる、それは絶対に困る」とある。この潔さと拘りには感服してしまう。
自分で行動して良いと思ったら、考えずに行動に移す
暮しの手帖社代表取締役社長の横山泰子さん(妹の息子の妻)によるあとがき「今日も鎭子さんは出社です」によれば、父を亡くし10歳で喪主を務めた時の「私がしっかりしなくては」と言う、家族を自分が守るのだと言う気持ちの強さが鎭子さんの生きる原動力だとある(P.221)。
鎭子さんは少しでも関係を持った人は他人に思えず親身になってお世話したそうだ。時には大きなお世話と思われたり、一生感謝されたり。結局、行動の人なのだ。自分で行動して良いと思ったら考えずに行動に移す。このバイタリティーが鎭子さんの魅力。
また、本書の随所に30余年共に仕事をしてきた編集者でグラフィックデザイナーの花森安治さんへの敬意がちりばめられており、雑誌づくりの面白さと言う面でも十分に楽しめる。
あとがき
決して最初からダメと言わず、言いたくないを原点に、生きるだけでも大変な戦後間もない頃に「行動あるのみ」で突き進んだ鎭子さんの半生と、仕事の相方である花森安治さんの誌面への拘りも熱く語られており、人にものを伝えると言うのがどう言うことか考えさせられます。
また、朝ドラのヒロインのモチーフとして大橋鎭子さんを見ると、明るくて元気で歌が好きで、責任感が強くて家族思い。自他共に認める人一倍のお節介で、バイタリティー溢れる女性像は、朝ドラのヒロインとしてピッタリだと思います。本書が原作や原案でないので、どんどん脚色したら面白いドラマになるような気がしました。
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