映画「AUTOMATA オートマタ(日本語字幕版)」 感想と採点 ※ネタバレなし


ざっくりストーリー
太陽風で砂漠化が進み、人口は2100万人となった人類存亡の危機の2044年の地球。人間に代わる労働力として、「生命体への危害の禁止」「自他のロボットの修正(改造)の禁止」と言うルールが製造時に組み込まれた人工知能搭載ロボット “オートマタ” が人々の生活を支え、安全な暮らしを送っていた。
ある日、突然に「修正(改造)」の原則が破られ、オートマタを製造管理する企業の保険部から派遣された調査員ジャック・ヴォーカン(バンデラス)は調査を開始する。ヴォーカンは首謀者と目的を探りに砂漠化した荒野へ行くが、彼の想像を遥かに超える複雑で恐ろしい真実を知ることになる…。
「2045年問題」を扱った、挑戦的なロボットSF映画
『シャッター ラビリンス』のガベ・イバニェス監督が、『マスク・オブ・ゾロ』などのアントニオ・バンデラスを主演に迎え、人工知能の発達し過ぎた世界を描いたSF映画であり、随所に挿入されるアクションも見所の映画。
だが、これまでのロボットを描いた映画の多くは、人間と同等に近い知能を持ったロボットとの闘いや交流が多かった。しかし、本作は違う。
人類が生み出したテクノロジーが、人類の限界、予測を越えて急激に進展し始めるポイント「技術的特異点(シンギュラティー)」は本当にやってくるのか?と言う、所謂「2045年問題」を真正面から描いた、挑戦的且つ痛切なロボットSF映画だ。
自動進化する人工知能の恐怖に晒される人類の恐怖
本作が描くのは、『ブレードランナー』的な荒廃した近未来・ディストピア(ユートピアの正反対の社会)とも違うし、『アイ,ロボット』的な夢や平和とも違う、もっと現実的なディストピアであり、希望が存在するの世界。人類と人工知能との「共存」と「未来」だ。
また、これまでのハリウッドが送り出して来た独善的なSF映画とは一線を画しているし、自動機械化(ハリウッド)されたハリウッド的映画現場からは創造出来ないアバンギャルドな作品でもある。
物語としては、主人公の調査の苦悩が中心となるが、主人公の妻が妊娠中であったり、進化したロボットたちがオートマタ(自動人形)を作るあたりは、生命の誕生やダーウィンの進化論とも重なり、哲学的な面白さもある。とにかく、自動進化する人工知能の恐怖に晒される人類の恐怖がひしひしと伝わる作品だ。
ガベ・イバニェス監督のリアルなSF映像へのこだわり
物語や設定以上に素晴らしいのが、一目見てわかるガベ・イバニェス監督の映像へのこだわり。作品に登場するロボットたちの動きが実にリアルなのだ。最近のCG技術の進歩は凄まじいが、やはり動作については違和感が拭えない。それを払拭するために、ロボットを人形師が動かすと言うアナログな撮影方法を選んだ。
人形師がロボットの人工知能になったと言う、何とも洒落た、そして意味深な選択。俳優が演じる登場人物と人間が動かす本物のロボットが1つの画面に共存することでしか生まれないリアルさ。これを観るだけでも価値がある。
「CGじゃリアルなSF映画は作れない。シンギュラリティ映画「オートマタ」はSFだからこそリアルにこだわる : ギズモード・ジャパン」より無断借用
あとがき
ハリウッド的SFアクション大作でもありません。CGゴリゴリの驚異的身体能力を持ったロボットも登場しません。『ブレードランナー』的なディストピアの世界を、主演のアントニオ・バンデラスを活かすべく西部劇映画風なモチーフを引用して、人類と人工知能との「共存」と「未来」を描くじわじわと描くだけ。
でも、監督が拘ったアナログなロボットの演技に惹かれること間違いなし。少し退屈な部分もあり地味ですが、実に考えさせられるSF映画の傑作の1本です。
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