映画「ザ・ウォーク(3D・日本語字幕版)」 感想と採点 ※ネタバレあります

なお、原作小説である大道芸人フィリップ・プティのノンフィクション『マン・オン・ワイヤー』は未読。
また、本作で描かれる、プティの挑戦への決意から成功を関係者の証言や再現映像で見せるドキュメンタリー映画『マン・オン・ワイヤー』(2009年日本劇場公開)は鑑賞済み。

ざっくりストーリー
1974年、フランス人の大道芸人フィリップ・プティ(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)は、当時世界一の高さを誇った地上110階、高さ411mのワールド・トレード・センターのツインタワーの間を鋼鉄製ワイヤー(綱)1本で繋ぎ、命綱無しの綱渡りに挑むことを決意する。
プティは、仲間たちとNYに渡り、42m離れた両タワーの間に200kgのワイヤーを渡すため、建設作業員や観光客を装って幾度も建築中のタワーに侵入し、銀行強盗の下見さながらの入念な計画を練っていく。そして1974年8月6日朝6時の決行の時が近づいてくるが、仲間の裏切りなど予想外のトラブルがプティの行く手を拒む…。
1974年、WTC で綱渡りをした男の著書の3D実写ドラマ
1974年にワールド・トレード・センター(WTC)のツインタワー間での綱渡りを達成した、フランスの大道芸人のフィリップ・プティの挑戦の実話を、3Dで完全実写ドラマ化した映画が本作。実際の映像は残されていないが、再現映像で見せるドキュメンタリー映画『マン・オン・ワイヤー(2009)』では描かれたことがある。
変わり者を主人公にした、とてもシンプルな物語
主人公のフィリップ・プティはワイルドでタフ、建築や工学にも鋭い感性を持ち語学も堪能、時にお茶目で時に沈着冷静な男だ。その彼が、世界各地の有名高層建築物を無許可で綱渡りする無謀かつ非合法な挑戦を続けた原動力は、高くそびえるものを見るとのぼって渡らないと気が済まない破天荒な性分だ。「理由なんてない」が口癖だったそうだ。
本作は、そんな変わり者を主人公にした、とてもシンプルな物語。全体は3部構成になっている。
以下からネタバレが含まれますので、ご理解の上、お進み下さいませ。
第1部はプティの生い立ちに始まり、綱渡りに目覚め、命を懸けた挑戦でないと「生」を感じないことを悟るまで。第2部は挑戦を実現させるためにスパイのように周到な準備を重ね、明朝までの徹夜の悪戦苦闘。第3部はプティしか知らない悟りの境地とも言うべき天空の世界の疑似体験だ。
「自分も一歩前へ出よう」「前向きな気持ちになれる」「夢を叶えるのは自分の力だ」「美しく清らかな世界観」なんて言葉が似合う映画ではある。
また、物語は本人の後日談と言う形式で進むから、挑戦が成功するのは分かっている。しかし、最新のVFXと3D技術がもたらしたリアルな高さ、風、霧、空気の見事な再現力を魅せた3D演出は、超が付く程の高所恐怖症の私には十分過ぎる恐怖感と緊張感と不思議な解放感で、正に手に汗握る映像になっている。
数々の名作を生んだゼメキス監督最新作としては…
ただ、80~90年代に数々の名作を世に送り出したロバート・ゼメキス監督の最新作として見ると些か残念な仕上がり。そもそも主人公の無謀な綱渡りが「生」のためなのか「パフォーマンス」なのか曖昧だし、キャラ設定もお世辞にも際立ってるとは言い難い。そこへ次々と協力者が集まってくるから「何のため?」ってことになる。
そんな基本設定できっちりと3部構成になってるから、今一つワクワク感に欠ける。カメラワークや編集も斬新さは薄い。ただ、最新技術の使い方の巧みさは健在。嫌味と違和感のない3D効果映像で、高所恐怖症の私も最後にはプティしか体験できないはずの世界を味わうことが出来た。
“永遠に” とだけ結ぶ余韻のメッセージ性は力強い
劇中では触れられないが、プティが綱渡りをした日は、ウォーターゲート事件でニクソン大統領が辞任する前日。そう、アメリカ史上初めて大統領が辞任するという前代未聞の出来事で、国民の政治不信が頂点に達しようとしている時。それから僅か27年後に、20世紀後半のアメリカ経済の象徴でもある WTC と言う建築物が崩壊した。
展望台へのパスの有効期限が “永遠に” と書き改められたと言う主人公の言葉と、その後の美しい WTC がそびえ立つ NY の街並みの映像に、テロや戦争を感じさせることないまま、プティがしたことの意味を観客に投げかけたまま終わるエンディングは、ゼメキス監督らしい力強いメッセージだと思う。
あとがき
1974年、世界一の高さを誇った地上110階、高さ411mのワールド・トレード・センターの42m離れたツインタワーの間に200kgのワイヤーを渡して行われた命懸けの綱渡りを、そして誰も傷つけず誰の命も奪わなかった美しい犯罪を、是非3Dのスクリーンで体験して欲しいです。それをどう受け止めるかはあなた次第…
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The Walk CD, Import Alan Silvestri
マン・オン・ワイヤー 単行本 ? 2009/6 フィリップ プティ (著), Philippe Petit (原著), 畔柳 和代 (翻訳)
マン・オン・ワイヤー スペシャル・エディション(2009)(2枚組) [DVD]
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