[読書] クライマックスまで誘い込む絵作りの秘訣 ストーリーを語る人のための必須常識:明暗、構図、リズム、フレーミング (マルコス・マテウ-メストレ/著,平谷 早苗/編,株式会社Bスプラウト/訳・ボーンデジタル) 感想

脚本の意図を如何に構図に落とし込んで行くか
著者は、20年以上に亘りドリームワークスやソニーピクチャーズなどで映像制作に携わり、12年以上にわたりイラストとビジュアルストーリーテリングのテクニックを教えている人。
従って、カメラマンの視点からの構図やフレーミングの撮影現場の実践的な話と言うより、あくまで脚本の意図を構図やフレーミング、照明やリズム感で画コンテに落とし込んで行くか的な机上の論理が中心になる。
よって、演出家や映画監督を目指す人、映画を観るのが好きでカメラワークの意味を知りたい人などに向いている。実際にどう撮影するかと言った実用的、現実的なことを知りたいなら他の本がある。
「サムネイル」と言う考え方が面白い
まず、本書で目に付くのが、そのカットがどのような「形状」で構成されているか?と言う視点で添えられている「サムネイル」と言う手法だ。下の書面を見てもお解りだろうか。
右頁上の画コンテのようにフレーム内に映っている「要素」(キャラクター、家具、岩、木など)をベースにせず、左頁中央のように、その構図が明快かつ読み取り易い基本的な「形状」になっているかを第一に考えるのだ。
台詞などを排除して、構図だけで観客を魅了させる
これは、かなり面白いが斬新で難しい考え方であるが、「要素」にばかり拘った構図づくりをしていると陥り易いパターン化やアイデア枯渇防止に、この方法が有意義であることが分かってくる。極端に言えば、「サムネイル」の意味さえ理解していれば、如何なる「要素」にも容易に当てはめることが出来るのだ。
登場人物のビジュアルやそれらが発する台詞、背景の映像や音楽を一度すべて排除して、臨場感や物語を観客に伝え、作品世界に引きずり込むには何よりもそのカットに最適な構図が必要と言うこと。それを230のイラスト、166の図解でがっつり教えてくれる。
あとがき
人によっては理解し難い理論かもしれませんが、漫画など描いている人は納得し易いかもしれません。とにかくビジュアル(視覚)によるストーリーテリング(観客に印象付ける)に拘りまくった本です。大型本なのでイラストも大きくて見易いし、翻訳文もこなれていて読み易いです。
例えば、光の明暗、遠近感、立体感はもちろんのこと、連続した構図から生まれる新たなリズム感や物語性など、内容は専門的ですが、映画やアニメ好きなら意外と読み物としても楽しいと思います。映画のもう一つの楽しみ方を知りたい人には、是非ともお勧めしたい1冊です。
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Filmmaker's Eye -映画のシーンに学ぶ構図と撮影術:原則とその破り方-
映画のようなデジタルムービー表現術--デジイチ撮影の技と心得 (玄光社MOOK)
映画術 その演出はなぜ心をつかむのか
映像の原則 改訂版 (キネマ旬報ムック)
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