終戦70年ドキュメンタリー「私たちに戦争を教えてください」 (2015/8/15) 感想

フジテレビ系終戦70年ドキュメンタリー『私たちに戦争を教えてください』(公式)
『いま、会っておかなければいけない人がいる 今日、聞いておかなければいけない声がある』の感想。
終戦時に10歳以上だった、戦争の記憶がある世代の人口は、この15年でほぼ半減している。(2000年時の65歳以上人口は2204万人、2015年現在の80歳以上人口は1013万人)これら生き証人の世代が減少し、対照的に戦争を知らない世代が増加、もはや親、子、孫の3世代に渡って戦争を知らない家庭も少なくない。
この番組は、そんな現代だからこそ、戦争を知らない若者5人が、自分と同じ年頃を戦争のまっただ中で過ごした戦争体験者に会い、自分の言葉で問いかけ、戦争とは何かを学んでいく番組だ。
戦争を知らない世代の代表として、小栗旬、松坂桃李、福士蒼汰、有村架純、広瀬すずという今最も影響力のある5人が「いま、会っておかなければいけない人がいる。今日、聞いておかなければいけない声がある」という番組コンセプトを自ら体現していく。
---上記の番組内容は[公式サイト]より引用---
戦争体験者の生の声を4時間10分も放送した価値はある
内容の精査をする前に、今人気の若者俳優たちを起用して、若者目線で若者に向けて終戦記念番組のドキュメンタリー番組をつくったことには一定の価値があったと思う。
この時期、特攻隊の原爆投下の既存の映画やアニメなどを放映したり、戦争関連のスペシャルドラマを方法するのも悪くないが、戦争体験者の生の声を4時間10分もの長尺で放送したのは新鮮な企画として良かったと思う。
5人の俳優の “素” が見えた企画だった
さて、番組の内容はどうったろう。小栗旬さん(32)、松坂桃李さん(26)、福士蒼汰さん(22)、有村架純さん(22)、広瀬すず(17)と性別も年齢もキャラクターも異なる5人の戦争体験者らへのインタビュー。
いくら構成台本があると言っても、話し手が素人さんだから聞き手としての腕の魅せ所でもあるし、歴史認識、相手の言葉の理解力、自らの言葉の発信力、そして最終的に人間性や人柄まで丸見えになってしまう。編集で何とかバレないように工夫はされていたが…
小栗さんのやるせない言葉に重みを感じた
小栗旬さんは32歳で、子どもの父親でもあるし、自ら映画のメガホンもとるような俳優さんだから、流石に伝え方がこなれてる。特に、真珠湾攻撃に参加した元ゼロ戦「天才」パイロット、原田要さんとインタビューは印象的だった。そして、ハワイ真珠湾での人間魚雷「回天」の操縦室に入った小栗さんのやるせない言葉に重みを感じた。
軍人を身近かな問題に捉えて理解しようとした松坂さん
松坂桃李さんは、1万人の日本兵の内、生存者わずか446名というパラオの激戦地ペリリュー島での生存者1人となった元日本軍兵士に、現地でインタビュー。終戦も知らされず戦後2年半も洞窟で身を隠して地獄のような日々を過ごした場所を「第2の故郷」と語る理由を探す。
印象的だったのは松坂さんが幾度か「洗脳」と言う言葉を繰り返したこと。きっと公開中の映画『日本のいちばん長い日』で本土決戦を主張しクーデターを企てる将校役を演じたのが反映されているのかもしれない。今回の5人の中で軍人や兵隊と言う人間を一番身近かに捉えて理解しようとしていたように見えた。なかなか気概があって良いと思った。
自分の気持ちを言葉にできずにもどかしい様子の有村さん
有村架純さんは、自分の溢れ出る気持ちを言葉にできずにもどかしい感じが伝わって来た。きっと感受性が豊かなのだろう。ただ、激戦地で逃亡の途中、家族とはぐれ、たった一人で戦場をさまようことになった白旗の少女、比嘉富子さんが上手く有村さんをリードするような形になったのが救い。もっと、22歳の女性の生の声を、考えを聞きたかった。
広瀬さんに「特攻隊員との淡い恋」は難し過ぎたか
そして、広瀬すずさん。「これが等身大、平成27年の17歳の女の子です」と言うドキュメンタリーとしても少々厳しかった。特攻隊員との淡い恋の実体験者から話を聞き、目の前に死が迫る中で生まれた恋を追体験させようと言う企画意図は解かるが、残念ながら企画倒れで終わったと思う。
もう、画面全体から話を理解できていない様子が漂い過ぎて、むしろその様子が気になって、八牧美喜子がお気の毒さえ見えてしまった。広瀬さん自身に問題が無いとも言えないが、私は広瀬さんに与えるテーマが間違っていたと思う。「恋」でなく「親友」「家族」といった具体的なテーマの方が良かったのではないだろうか。ナレーションはそれなり良かっただけに残念。
広島でのインタビューアーっぷりが良かった福士さん
まず、(不覚ながら)福士蒼汰さんのナレーションに惹き込めれてしまった。小栗さんとは一味違った丁寧なのに熱の入った語り。福士さんは広島で爆投下から3日後には走っていた路面電車、通称「被爆電車」の運転手、当時10代の少女だった増野幸子さん、児玉豊子さんとのコーナーが印象的だった。
冒頭のカメラへ向けて自身の意見を話す福士さんと、増野さんと児玉さんへのインタビューアーとしての福士さん、明らかにきちんと立場を整理しているのが良かった。また、話し手のお二人への態度も紳士的だったし、お二人の言葉を良く聞いて自分の言葉で返していたのも良かった。また、このコーナーが映像とナレーションの構成が一番良かったかもしれない。
あとがき
フジテレビだから、それなりの作為的な構成や史実の捻じ曲げなど無いかと心配したのだが、私が見る限りでは予想以上に偏見の無いつくりでホッとした。特に、真珠湾奇襲や満洲事変に触れたのも良かったです。
日本への空襲攻撃の際にB-29の護衛部隊にいた、元P-51戦闘機パイロットのジェリー・イエリンさんの「(戦争中)日本人は人間じゃなかった」「戦争とは…壮大な規模の人殺し…それが戦争だ」の言葉が戦争の恐ろしさを表しているように思います。
人殺しはいけないことは解かってるけれど、敵は人間じゃないと教わる。だから何の感情も無く殺せる。それが大規模に行わるのが戦争。4時間超は流石に長かったですが、見応えのある番組でした。
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