[読書] わたしは13歳、学校に行けずに花嫁になる。: 未来をうばわれる2億人の女の子たち (久保田 恭代,奈良崎 文乃,寺田 聡子,プラン・ジャパン/著・合同出版) 感想

「女の子は負債」「女の子に教育は不要」と言う社会
先日参加した『第14回 日本ウーマンズヘルス学会 学術集会』(現地レポの記事)で、世界中にいる望まない妊娠・出産をせざるを得ない環境の女性や、危険な人工妊娠中絶や性感染症、妊産婦や新生児の死亡などの多くの問題を抱える環境に生きる女性のことを知り、最近この類の本を漁るように読んでいる内の1冊がこれ。
報道や講演会で知っていたこともあるが、「女の子は負債」「女の子に教育は不要」と言う社会の決め付けの中で苦しみながら生きる困難な状況と、世界中の女の子と男の子が途上国の子どもたちと共に地域開発を進める国際NGOプラン・ジャパンと協力し進める「プラン(支援)」の実例が書かれている本だ。
煙草製造で皮膚からニコチン被害や女性性器切除の実態
序盤は衝撃的な事実が並ぶ。例えば、インドの貧しい女の子たちは「巻きタバコ」を作って生活しているそうだが、タバコの葉を摘む段階から皮膚を通してニコチン被害に晒されるそうだ。
また、アフリカでは「女性性器切除」の慣習が2000年以上前からあると言う。2014年のユニセフの報告によると、女性性器切除を受けた女の子は、アフリカ中心に29か国で1憶3千万人以上とされ、その内半数が5歳未満。不衛生な環境下で雑な施術によって感染症や後遺症、一生の心と体に傷を負うのだ。
ナイジェリア警察が妊娠中の少女17人を「赤ちゃん工場」で保護
Nigeria Police Free 17 Pregnant Teenage Girls in ‘Baby-Factory’ Raid
※この写真は、本書とは関係ありません。
読み書き出来る母親が、次世代の未来を明るくする
すべては貧困と教養の無さが原因。まず貧困から脱却するには女性の収入を上げることが大切。超が付くような男性社会で差別される女性たちが、自らの発想で仕事が出来るような支援をする。また、男性が都市や海外に出稼ぎに出なければいけない地域の女性が起業できるような支援もするそうだ。
そこで必要になるのが読み書き。読み書きが出来るようになれば、これまでよりは高収入が得られる仕事に就けるし、何より保健衛生の知識が高まり家族の健康を守れる。従って、女の子だけでなく母親に教育をすることで、子どもが学校に行くようになるそうだ。日本では到底考えられないが…
男の子も大変な目にあっている
実は、世界では男の子も大変な目に遭っていると言う。「女の子は稼げない」「女の子は教養が無い」「女の子は男の子より価値が無い」の逆説は、「男の子は強くあるべき」「男の子はリーダーになるべき」「男の子は稼いで家族を養うべき」と言う訳だ。こんな「伝統的な男らしさ」が男の子自身を追い詰めるそうだ。
しかし、教育が行き届いていないために「伝統的な男らしさ」を変えようとする男性たちの行動は世間から笑われたり、同じ男性や「伝統的な男らしさ」を信じる女性から非難されると言う。やはり、教育の大切さがここでも重要になる。
あとがき
本書には、まだまだ残酷な環境に置かれたままの女の子や男の子が書かれています。でも本書を読んで解かったのは、女の子への差別や偏見は、同時に男の子をも追いつめていること、そして女性と上手に人間関係を築ける男性ほど幸せになること、男性の協力がなければ女性が直面している問題は解決できないことです。
私も本書で世界の現実の僅かな一部分ですが知ることが出来ました。となると、次は小さなアクションを起こさなければなりません。まず、手始めにこの場を借りて本書を皆さんにお勧めします。男性こそ読んだ方が良いと思います。
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わたしはマララ: 教育のために立ち上がり、タリバンに撃たれた少女
Because I am a Girl――わたしは女の子だから
女の子の幸福論 もっと輝く、明日からの生き方
世界女の子白書
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