[読書] スーパーパティシエ物語―ケーキ職人・辻口博啓の生き方 (輔老 心/著・岩崎書店) 感想

世界一のパティシェの成功までを描いた児童書
ブッ○オフの児童書コーナーで、ふと目に入った『スーパーパティシエ』のタイトルに衝動買いした一冊。現在放送中の連続テレビ小説『まれ』で製菓指導をされている辻口博啓氏の小学3年生から39歳までの “夢を見つけて叶えるまで” を小学生向けに書いた本だ。児童書だから文字が大きいから老眼にも優しい。
辻口氏の自分を信じて突き進むエネルギーが伝わる
辻口氏よりも年上の私が読んでも、「もう一踏ん張りしてみるか!」って気にさせてくれるパワーをくれるから、小中学生が読んだらさぞやる気が芽生えるだろう。それは、辻口氏が自分で描いたストーリーから一度も降りることなく、自分を信じて突き進むエネルギーの強さが、読者にも憑依するからではないだろうか。
辻口氏の「逆算作戦」の発想が面白い
彼の発想で面白いのが『逆算作戦』だ。「世界一のパティシェになる」と言う大きな目的を達するには、その少し前の段階を考えてまずそこを達成しようと考えること。大きな成功体験を得るためには、その直前のちょっと小さい成功体験を目指し、更にそのためのもっと小さい成功体験を探す。
そして、小さい「やった!」と言う気持ちをバネに、少し大きな「やった!」を目指す。成功体験だけがどんどん積み重なって行くのだから、イケイケ気分になるのは当然だ。もちろん、その裏には「人の3倍の速さで成功するには、3倍苦労する」と言うトンデモない枷(かて)を自身にかけているのだが。
テレビの再現ドラマを観ているようなハラハラドキドキ
とにかく、輔老心氏の文体が楽しい。テレビの再現ドラマを観ているようなハラハラドキドキの構成と、書籍ならではの読み手の時間間隔の制御など、読者を飽きさせない工夫が面白い。小中学生なら楽しみながら読んで学べるし、大人もがんばる気にさせて貰えます。
あとがき
最近は、ちょっと仕事で滅入った時に本書を読むようになりました。ホント、読み物としても良く出来てますし、内容も面白い。小中学生だけでなく大人にも読んで欲しい一冊です。ただ、一か所だけ間違いがあります。P.204の「フレンチの鉄人・神戸勝彦さん」ですが、正しくは「イタリアンの鉄人」です。
児童書でなく、大人向けの自伝も出版されているので、そちらもお薦めです。
さて、当blogの読者さまならば、朝ドラ『まれ』と本書の関係性に興味があると思うので、少しだけ触れます。辻口さんの生まれが石川県の能登であることや、父親との境遇や、その他いろいろ朝ドラ『まれ』の主人公・希と似ていることから、脚本家・篠﨑絵里子さんが辻口さんをモデルにしているとの噂があります。
私も本書の中に「3年間」「ノート」等々、辻口さんの自伝から間違いなく拝借してエピソードを構築したなと感じるエピソードが多いです。
ただ、『まれ』の紺谷希と辻口博啓さんには決定的な違いがあります。それは、辻口さんはとても意志が強く努力家で、数学的に物事を捉えることが出来る、創造力と想像力を兼ね備えた前向きな人物です。一方の紺谷希は、他人への依存度が高く練習嫌い、思い付きで行動しては失敗を繰り返し、持って生まれた才能と強運だけで何とか生きている人物です。
きっと脚本家はここまで人物設定を変えれば何とかなると思ったと思います。しかし、辻口さんのエピソードをちょっと手直しして時間軸も動かして、全く性格の違う主人公に当てはめたから破綻するのです。ただ、それだけのことだと思います。『まれ』を観て辻口さんの印象が悪くなった人は、是非本書を読むことをお勧めします。
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