[読書] ローマ法王に米を食べさせた男 過疎の村を救ったスーパー公務員は何をしたか? (高野 誠鮮/著・講談社) 感想

本書は、2015年7月19日から放送予定のTBS日曜劇場『ナポレオンの村』(毎週日曜の午後9時から)の原案本です。
消滅寸前の限界集落を蘇らせたスーパー公務員の実話
本書は、消滅寸前の限界集落を蘇らせた “スーパー公務員” の実話だ。どこが “スーパー” なのかと言うと石川県羽咋市職員・高野誠鮮氏の発想力と行動力と人の心を揺さぶるセンスの良さ。正に企画屋や脚本家や演出家レベルか、それ以上の “スーパー” っぷりが全編に漲っているような本だ。
高野氏の発想の面白さや説得力の強さが素晴らしい
まず、高野氏の発想の面白さや説得力の強さが素晴らしい。神子原(みこはら)地区の米をブランド化しようと考えて、まず「神子原」の「神子(みこ)」は「皇子(みこ)」だから天皇皇后両陛下に食べて貰い「御用達」の冠を頂こうって作戦。
普通なら「神子」なら「巫女(みこ)」だから可愛い巫女さんの格好をした女の子包装紙とイベントギャルでPRでもするかってなるのが普通の発想。残念ながら、これは失敗するが、次の手がこれまた斬新。
「神子」は「神の子」だから「イエス・キリスト」。ここまでは凡人でも思い付くレベル。でも高野氏は、キリスト教の最大の影響力があるローマ法王に食べて貰い「ローマ法王御用達米」にしようってトンデモ発想。キリスト教に縁も所縁もない米なのに、あれこれ上手く行ってこちらは大成功。
恋の駆け引きに似た高野氏の一連の言動が作戦勝ち
高野氏の一連の言動は、恋の駆け引きに似たところがある。自分に全く興味関心の無い相手に「好きだ、好きだ」と猛アタックして、いざ相手が自分に興味関心を惹いたのがわかると、今度は一定の距離を置いて他の女性にも猛アタック。あちこちで火種が点いた頃を見計らって、絶妙なタイミングで最初の相手が諦めた頃に最後のアタックを仕掛けて落とす。
ある程度人気が高まった「神子原米」の価値を更に上げる作戦も同じ。東京の高級住宅街からの個別の注文をあえて断る。そして断る際に「有名百貨店に問合せてみて下さい」と添える。すると、百貨店に「神子原米はありますか?」の問い合わせが殺到する。すると百貨店から「当店に売って貰えませんか」と受注が入るって流れ。とにかくこのパターンの連続技で何事も推し進めていく。
誰よりも強い郷土愛と公務員としての心構えが生んだ
しかし、高野氏の本当の素晴らしさは、上で書いたような小手先の営業テクニックでない。誰よりも強い郷土愛があるからこそ、「神子」に徹底的に拘り抜けるし、何よりも地元の人たち最優先になれること。また、自分は景気や売り上げや成果で給料の変動の無い公務員だからと、景気や売り上げや成果で給料の変動の多い一般市民のために全力で手助けをすること。
信念に基づいた後ろを顧みない確固たる姿勢が良い
そして何より信念に基づいた後ろを顧みない確固たる姿勢が、諦めていた過疎の村民たちの心の支えになっただろうし、日本中いや世界中の人たちの興味関心を集めたのだろう。とにかく、暗い暗いといくら愚痴っても、誰かが梯子をかけて電球を取り換えないとその場は明るくならないと言う高野氏。正にその通りの男である。
あとがき
全5章から成りますが、第1~3章は上で紹介した高野氏の「ミラクル作戦」の連発で読み物として大変面白いです。第4~5章はライターがインタビューをまとめたスタイルになった自叙伝風で少しトーンダウンするのが残念。でも、全体の約半分を占める高野氏のパワフルさやミラクル加減は圧倒されます。
何となく先が行き詰ってる人、今一つやる気が出ない人、何をどうやっていいのか迷ってる人、そんな人には元気のサプリメント的な効果があるはずです。また、本書は2015年7月19日から放送予定のTBS日曜劇場『ナポレオンの村』(毎週日曜の午後9時から)の原案にもなっています。高野氏役は唐沢寿明さんです。本書が原作ならドラマも期待できそうです。
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