[読書] 本当の仏教を学ぶ一日講座 ゴータマは、いかにしてブッダとなったのか (佐々木 閑/著・NHK出版) 感想

先生が生徒に講義するスタイルが解かり易い
本書は、福井県にある浄土真宗の寺の僧侶であり、禅宗妙心寺派の花園大学でお釈迦様時代の仏教の研究家が書いた仏教の入門書だ。全体の構成を6時限の講義に見立てて、先生が生徒に語り掛けるスタイルで進んで行く。
従って、少々濃い内容ではあるが、章立てなどが丁寧なため、自分自身が楽しみながら理解が進んで行くのが解かる。
釈迦の生き様を通して、原始仏教を学ぶ
本書の面白さは、単純に原始仏教の解説書でなく、お釈迦様が生まれる以前のインドの情勢分析に始まり、ゴータマ・シッダッタ(=お釈迦様)の実在した人間としての生涯を辿りながら、釈迦の考え方(四諦八正道)、釈迦の最大の功績でもある組織(サンガ)作り、個性豊かな弟子たちの話へ、ドキュメンタリータッチで進むところ。
後半では、釈迦の入滅後に、部派仏教から大乗仏教が誕生する過程が、推理小説でも読むような楽しさで解かり易く説明されている。そして最後は、今に生きる釈迦の言葉を挙げながら、こう結ばれる。
人間どうしの差別もなく、競争もなく、あるのはただ自分だけ。
自分をしっかりと見つめ、自分なりの人生の幸福を見出し、生きることの苦悩に打ち勝っていけとお釈迦様は教えになりました。
あとがき
実は本書の内容には、書名の「いかにして」と言うドラマチックさはありません。正確に言うと、一人の人間・釈迦牟尼(ガウタマ・シッダールタ)が当時のどんな社会構造のインドに生まれ、どんな考えで出家し、独特の組織を作りながら原始仏教の開祖になったのか、その経緯がとても整理され簡潔にまとめられているだけです。
しかし、釈迦を「開祖様」「神格化」「ヒーロー」的な最上段から描くのでない著者の思いが、人間の身の丈で物事を解決していこうと考えた釈迦の思想を見事に解かり易く描いてくれました。一人の人間の生き様のストーリーとして読んでも面白いです。お釈迦様のことを知りたい人は、まず読んでみるのをお勧めします。
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仏典はどう漢訳されたのか――スートラが経典になるとき
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ブッダの言葉
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