[読書] 清張映画にかけた男たち - 『張込み』から『砂の器』へ (西村 雄一郎/著・新潮社) 感想

黒澤明監督の影響力の大きさを目の当たりにできる
本書は、タイトル通りに “松本清張の映画化に挑んだ昭和の映画人の熱い日々” が克明に記されている。採り上げられている映画作品は、野村芳太郎監督作品が多いが、実は黒澤明監督に関する記述がかなり多い。いや、清張映画に携わった当時の映画関係者たちが、黒澤監督から多大な影響を受けている証拠なのだ。
そして、ご存じの通り黒澤監督自身は松本清張作品の映画化は1本もしていない。しかし、黒澤監督好きな読者なら、清張映画のに多大な影響を与えた様子(人間関係や作風や画づくりなど)を事細かに知ることが出来る。黒澤映画のファンなら是非一読をお勧めする。
映画『張込み』の製作現場が手に取るように見える
さて、肝心の清張映画についてだが、こちらは本書の半分を要する映画『張込み』の記述が面白い。中でもクランクインに辿り着くまでの、松本清張氏自身のことや、スタッフたちとのやり取りが実に詳細に書かれており、映画製作の過程を覗き見ているようなドキュメンタリータッチで進んでいく。
また、出演した俳優人たちの背景についても詳細が書かれている。スクリーンからは到底想像できないような個人的な事情なども書かれており、特に高峰秀子さんが参加した理由や、『張込み』に出演していない久我美子さんの裏話も面白い。
あとがき
私が知っていた事実と数か所違う記載がありましたが、どちらが真実なのかはちょっとわかりません。しかし、昭和の時代の熱き映画人たちの生き様が、清張映画を通してリアルに伝わってくる一冊です。
松本清張さんのファンや清張映画のファン、そして黒澤明監督ファンにもお勧めです。
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