アルジャーノンに花束を (第10話 最終回・6/12) 感想

TBS系『アルジャーノンに花束を』(公式)
第10話/最終回『奇跡のラスト~私から僕への遺言』の感想。
なお、原作小説:ダニエル キイス『アルジャーノンに花束を』は確か読んだはず。過去の映画やテレビドラマも数本鑑賞済み。
咲人(山下智久)は、自分が開発した薬を梨央(谷村美月)に注入する手術を医師に提案する。遥香(栗山千明)は、自分のことを後回しにして梨央の治療に全ての時間を捧げる咲人の行動を受け入れることができない。そんな中、窓花(草刈民代)が咲人を訪ねてきた。一方、蜂須賀(石丸幹二)は、研究資金を流用した詐欺罪で河口(中原丈雄)に告訴される。手術が迫る中、咲人は自分が元に戻った後のことを考えて、準備を進める。
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
母・窓花の自縛からの解放
窓花「一番愛してる人を一番大切に考えるのは
当たり前のことでしょ。そんなことも解からないの?
ああ、馬鹿みたい。
…笑ってごまかすのは止めなさい。あの人みたいに」
お利口にはなったが人間としての心を失いつつある息子への母・窓花(草刈民代)からの “最後の躾” であり、“最後の母子関係の修復のチャンス”での窓花の言葉。亡き夫・久人(いしだ壱成)と息子・咲人(山下智久)への悔恨の念でもあり、長年自分自身を責めてきたことからの心の解放を上手く表現した。
竹部社長の男気と優しさが全開
竹部「お前は、そう言う奴らの警戒心を解くんだ。
尖った棘をいつの間にか抜いちまう。
だから、お前は十分偉い奴なんだって」
ずっと竹部社長(萩原聖人)を誤解していたことを謝罪に来た咲人に、なぜ「馬鹿のままでいい」と言い続け、警戒心の強い新人を咲人と同室にした理由を明かす竹部。すべてが吹っ切れたように明るく咲人を諭す竹部の父親のような包容力に、咲人も素直に涙を流して竹部を受け入れる。
この竹部との関係修復はとてもストレートな表現で好感が持てた。そして、毎回心にグッとくるし、物語のターニングポイントを生み出す竹部の言葉が本当に良い。今回も梨央(谷村美月)の治療に専念するよう咲人の背中をそっと押す優しさ。うーん、いい。
「脳と心」のバランスが壊れた男の愛の形
咲人「そうなったら会わないで欲しい。
退行が始まったら
君のことを覚えてすらいないかもしれない。
君だけじゃなく他のすべての人も。
そして、その時の僕は君の感情の動きや
君の言葉の半分すら理解できないかもしれない。
そんな僕を君に見られたくないんだ」
多分、この咲人の言葉が、今回のエンディングへの直結した台詞だと思う。退行がどの時点まで進んで戻ってしまうのか解からない咲人の本当の不安は、副作用が最大限になった時のおバカな自分のプライドや自尊心を感じなくことではないだろうか。
だから、今の「知の巨人」状態のお利口の頂点にいる自分だけを、愛する遥香(栗山千明)の心に刻んでおいて欲しいと言う願い。遥香にとっては、どんな状態の咲人でも愛することが出来るはずだがその「覚悟」がない。
それを重々承知で実質的な「別れ」を告げる咲人の最後のプライド。この「脳と心」のバランスが壊れた男の愛の形が、あのエンディングに向って突き進んで行く。
今の思いを残そうと必死な咲人と咲人を愛する人々
咲人の部屋で柳川(窪田正孝)から檜山(工藤阿須加)がALGの副作用を初めて聞くシーンで、咲ちゃんのジャケットなめ(越し)のカット割りで柳川と檜山が男同士の友情を語る。どんな咲人でも受け入れるまでに変化した男2人のやり取りが良かった。
そして、そのあとの咲人が、下手な平仮名で咲ちゃん宛にメッセージを書き残すシーンもジーンときた。スーパー咲人がしてきた数々の過ちを悔いるように、一文字一文字綴る今の咲人の心を察すると辛過ぎる。
更に、「誰もが愛に包まれた世界なら、世界は穏やかになる」との結論を導き出した咲人と蜂須賀(石丸幹二)のホテルでの一室のシーン。2人の天才が導き出した究極の愛の力の理論を信じ、帰路に着くタクシーの中で涙ぐむ “もう1人の父” 蜂須賀、「神様」と祈る遥香の2カットこそ、違った角度からではあるが咲人を愛する2人がキッチリと描かれた。
その人が誠実なら、
本当はもう一つあるのかもしれない…
窓花「多分、覚悟がいるの。
母親になるのも、ずっと好きな人を愛し続けるのも」
遥香「覚悟…」
「会わないで欲しい」と言われた遥香が、窓花に公園で相談するシーン。咲人を忘れることは出来ないけれど、忘れて欲しいと言う愛する人の願いをどう受け入れるか。この時の窓花の「その人が誠実なら、本当はもう一つあるのかもしれない」との言葉が、のちの遥香の態度を決定づける。さて、その答えとは…
“俳優・山下智久” の演技が心に染みわたる
梨央の手術が終わり、急速に退行が促進する咲人は、今も「はるかに あわないで あいしてるから」とメモを書こうとするが手が震えて思うように筆が進まない。そこで亡き夫・久人が現れて咲人の手を優しく支える。涙と震えの表情から、放心や浄化したような表情へ変化する “俳優・山下智久” の演技が心に染みわたる。
自分を認識できない咲人に再開した遥香の心情
梨央の手術が成功し、河口(中原丈雄)から貰った金額未記入の小切手で鼻をかむ咲人にドキッとした。ついにその時が来てしまった。外に出る咲人は偶然に遥香と擦れ違うが、もう遥香だとは認識できない。それを目の当たりにする遥香の悲しみはどんなだったろう。
号泣の遥かに咲人が笑顔と共にそっと差し出すキラキラ光るものに、咲ちゃんを感じた遥香がこの時「もう一つの答え」を見出したのだろう。
自然界には存在しない青いバラ。
そのバラには棘が無い…
小久保「咲ちゃんの対等の友だちはいませんか?」
小久保(菊池風磨)のこの熱意に心を動かされ、自分たちの本当の進むべき道を見つけた柳川と檜山が動き出すのも感動的。咲人が2人の尖った棘をいつの間にか抜いてしまったのだ。
そして、海辺で「あいきょでしょバーガー屋」を営んでいる対等の友だち3人と心の中のアルジャーノン。そして咲人が残したあの種から育ったのは、自然界には存在しない青いバラ。そのバラには、そう棘が無い…
あとがき
ついに最終回が終わりました。一晩明けて、あのエンディングには既に賛否両論あるようですが、私は素直に良かったと思います。そう思う理由は本作は「大人のためのファンタジー」だと思って観ていたからです。原作にあるようなカタルシスを求めるような作品でもなければ、原作と比較するのも意味は無いかなと。
ただ、『アルジャーノンに花束を』の冠を付けたのなら、もう少し原作寄りでも良かったかも。でも、これはタイトルの問題で内容とは関係ないと思います。しかし、少し厳しく言えば、このラストならもっと友情を全面に出すべきでしたね。でないと、檜山が梨央から身を引く理由がぼやけてしまいます。
もちろん友情は描かれていました。でも、友情を描くことで、咲人と遥香、咲人と窓花、咲人と梨央と言い3人の女性との関係性の描写が少なくなってしまいました。咲人と蜂須賀も同様です。やはり登場人物が多過ぎました。もっとシンプルに咲人の変化を描いて魅せれば、もっともっと素晴らしい作品に仕上がったと思います。
そして、本作の俳優さんたちはみんな素晴らしかった。特に、“俳優・山下智久” の存在感と演技力に魅せられました。咲ちゃんからロボ咲人、ロボ咲人からスーパー咲人、そして咲ちゃんに帰ってきた白鳥咲人を見事に演じたと思います。
最後に、読者の皆さんへ。3か月の間、たくさんのWeb拍手やコメントで当blogを応援して下さりありがとうございました。また、毎回の長い駄文にお付き合い下さり、心から感謝を申し上げます。そして、本作で当blogを知った方も多いと思います。これからも独自目線で感想を書いていきますので、良かったらブックマークして、またお越し頂ければ幸いです。
最後の最後に。この作品に出会えてよかったです。あー、気がついたら記事を書くのに3時間もかかってしまいました。それ位に素敵なドラマだったと言うことですね。
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