アルジャーノンに花束を (第8話・5/29) 感想

TBS系『アルジャーノンに花束を』(公式)
第8話『最終章!儚い夢の終焉と最後の希望!』の感想。
なお、原作小説:ダニエル キイス『アルジャーノンに花束を』は確か読んだはず。過去の映画やテレビドラマも数本鑑賞済み。
咲人(山下智久)は、遥香(栗山千明)と一緒に暮らし始める。一方、梨央(谷村美月)は病の進行により、1日の内で数時間しか起きていられない状態に陥っていた。遥香は、母親に愛されたいという咲人の願いを果たそうと、再び窓花(草刈民代)の家を訪ねる。そんな中、アルジャーノンに異変が。全ての数値が低下し、脳細胞が著しく減少し始めたのだ。研究所に戻った咲人は、蜂須賀(石丸幹二)らと薬の改良に取り掛かる。
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
まえがき
今回は、最終章突入編だからこそ、いつものベタ誉めの前に少し厳しいことを書こうと思います。そして、今回も記事は長文です。
咲人の変化の描き方に、丁寧さが足りない
実は前々から気になることが2つある。1つは、咲人(山下智久)の変化が急過ぎること。別の言い方をすれば、 咲人の変化の描き方に丁寧さが足りない。そのために、視聴者に脳内補完と前向き解釈で、「きっと咲人の場合のALGの急速な効果が描きにくいんだ。だからしょうがない」と思わせてしまう。
しかし、ここは本来は「咲ちゃん」から「ロボ咲人」への変化と同じように、「新生天才咲人」への変化ももっと丁寧に描くべきだと思う。原因が脚本か全体のシリーズ構成の企画か解らないが、ここまで良かっただけに実に勿体なかった。
咲人と遥香の関係の変化を省略し過ぎ、関係性も稚拙
もう1つは、咲人と遥香(栗山千明)の関係性の流れが省略過ぎで、且つ表現が稚拙なこと。本来なら、現状の相思相愛になることが、もっと自然に見えるように、シリーズ序盤から2人の出会いから匂わせるべきだった。それをせずに一気に「僕たちラブラブ。同棲サイコー!」みたいになったり、遥香が「咲人」と呼び捨てになるには違和感がある。
なぜなら、咲人は頭脳明晰で冷静沈着な男になったのに、恋愛要素だけ辻褄が合わなくなってしまったから。もう少し脚本も演出も、無邪気な男女の恋から大人の男女の愛への変化として丁寧に描いたら、もっと咲人を喜べたし、遥香にもエールを送れたのに、こちらも実に勿体なかった。
咲人と母の関係に、遥香が介入し過ぎるのもちょっとと思うが、それはここまでにしておく。
咲人と母の再々会のシーンも、とても印象的
さて、ここからはいつものベタ褒めコーナー。まず、番組中盤で、咲人が母親の窓花(草刈民代)に会いに行くシーン。息子と母の緊張感漂うやり取りが素晴らしかった。
私としては遥香に連れられてでなく、咲人自身が自発的に訪問した方が、咲人の中の葛藤に自身で決着を着けたいと言う強い意志が表現できただろうし、「僕には家族がいない」と言う悲しみもより強く描けたと思うが。
とは言え、「お利口になったんですってね」と大きく手を広げて抱擁しようとする窓花の胸に飛び込むことが出来ず、「そう言うところはまだ子どもなのね」と追い打ちをかけられ、母の手を跳ね除けて去る時の咲人の何とも言えぬ複雑な表情はとても印象的。そして今週は “俳優・山下智久” の表情に身を詰まらせることになる…
軽トラでの、柳川と咲人の男の友情にグッときた
咲人「柳川君、顔が見れて嬉しかった」
柳川「俺の?」
咲人「うん。僕のこと、まだ友だちだと思ってくれてる?」
柳川「親友じゃん、対等の」
咲人「ありがとう」
社長の伝書鳩を頼まれた柳川(窪田正孝)が咲人に会いに来、軽トラ車中で話すシーンも素敵だった。あの狭い空間の中で、柳川の優しくてストレートな性格と、大混乱真っ只中の咲人の2人の距離感の変化が、窪田さんと山下さんの胸から上だけの演技だけで見事に描かれた。
そしてシーンの最後、この密接な距離感を意図的に離すために、咲人を車外に出しドア1枚を隔ててのからの上に紹介した会話にグッときた。特に、柳川との会話で大混乱から少し平穏を取り戻したかのように、瞳を少し滲ませた咲人の後ろ姿を見送る柳川の複雑な気持ち。男同士の友情にこれほどピュアなものを感じたのは久し振りだ。
竹部社長は、緊迫感ある物語に人の温もりを添えた
竹部「母親の資格が無いって言いましたけど、
それを決めるのは、子どもの方じゃないんですか」」
既出の咲人と母の再々会を受けての、竹部社長(萩原聖人)の窓花への台詞。咲人と窓花の仲に入り上手く仲立ちをしようと懸命の竹部の立場がよく解かる。今回の竹部社長は、序盤の花屋での花を愛する人柄を始め、彼の優しさと面倒見の良さを全編に散りばめ、緊迫感あるストーリーに人の温もりを添えた。
咲人の友だちを追い返した遥香の気持ち
遥香「友だちなどいなかったって、1人も」
咲人を心配して駆け付けた咲人の友だちを「友だちはいない」と追い返した遥香。友だちに要らね心配をかけたくないからのか? 自分が咲人を助けると言うねじれた意思表示なのか? そして、咲人を研究へ集中させたいからなのか?
私が、「ここから時間との戦いである」と言う最後の咲人のナレーションを聞く限りでは、残り少ないであろう「新生天才咲人」に悔いの無い研究をさせてあげたい「恋人」、いや今や「家族」に最も近い立場としての切望からの言葉だと想像したい。
遥香を描くなら、きちんと描いて欲しい
遥香は、咲人が「私」と言うべき時に「僕」とつい言ってしまう退行(咲ちゃんに戻りつつあること)し始めていることを、最も客観的に感じている人間だ。そして、退行は最初に出会った咲ちゃんに戻る地点で停止するのか? 更に進んで自分の存在すら忘れてしまわないか? そんな底知れぬ恐怖と闘っている女性でもある。
だから、遥香をきちんと描いて欲しい。遥香は咲人を大切な存在と思って毎週観ている視聴者の代表者でもあるのだから。遥香をおざなりに描くことは、視聴者無視と似たようなこと。だから最後にもう一度、ここまで来て遥香を中途半端に咲人の恋バナの相手みたいに描くのはだけは止めて欲しい。
あとがき
やっと感想の記事を掲載することが出来ました。朝4時過ぎです。昨夜遅く帰宅して泥のように眠ったのですが、この記事が気になって目が覚めてしまい、今書き終えたところです。
第6話、第7話の記事に読者の皆さまからたくさんのWeb拍手やコメントを頂戴しました。この場を借りてお礼を申し上げます。しかし、今回は絶賛の嵐だけの記事になりませんでした。やはり、言うべきは言わずに褒めるだけでは、当blogの存在意義が無いと考えたからです。少し期待を裏切ってごめんなさい。
さて、予告編を観ると、残酷な時間の流れは止まるのでしょうか。予告編のラストカットで、檜山(工藤阿須加)と抱き合う咲人の小さく微笑む表情とその眼差しに、少しだけ咲ちゃんの温もりを感じました(山下さんの演技力に感服です)。次回、「天才咲人」はどんな道を選択するのか気になります。
最後まで長い駄文を読んで下さり、ありがとうございました。
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【これまでの感想】
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