[読書]弱いロボット(シリーズ ケアをひらく) (岡田美智男/著・医学書院) 感想

「佛教情報誌」の新刊案内で知ったロボットの本
本書を知ったのは、宗派を超えた、仏教、お寺版のフリーペーパー、佛教情報誌『ムディター』の“新刊案内”で。仏教の情報誌になぜロボットの本が紹介されていたのか?
理由は、本書で紹介されている“弱いロボットたち”が精神的な障害を持った人や老人たちに寄り添って、心や人生の支えになっている点が、仏教と似ていると言う視点からのようだ。
また、詳細は後述するが、本書に書かれた医学、看護、介護そのものを、“誰かに積極的に解釈してもらう”と考えることが、ブッダの心理のことばを後世の私たちが積極的に解釈する仏教と似たような感覚があるかもしれない。
できないのなら、やってもらえばいい
本書に登場するのは、ゴミは見つけるけれど拾えない、雑談はするけれど何を言っているかわからない、そんな不思議な「引き算のロボット」だ。現在の人間が求める作業を完璧に熟す「便利ロボット」や、あれもこれも自動的に勝手に行う「足し算型ロボット」ではない。
「手足もなく、目の前のモノが取れないのなら、
誰かに取ってもらえばいいのか」
こんな捨て鉢ともいえる発想で作られたロボットは
世の中にまだないのではないか。
ポイントとなるのは「一人では動こうにも動けない」という、
自分の身体に備わる「不完全さ」を悟りつつ
他者に委ねる姿勢を持てるかどうかである。
つまり、他者へのまなざしを持てるかどうかということだろう。
※本文より引用(P.116)
また、ロボットと人間の関係を、機械工学やコミュニケーション論的な見地が主で無く、“ケア”や“介護”の視点から書かれている点が、医学書院から出版されているロボットの本と言う異色な面白さだと思う。
弱いロボットの誕生から進化を著者の自伝で語る
本書の内容は、骨子は情報・知能工学系学者の著者の15年以上前からのロボット研究の歴史を辿るスタイルで進んでいくから、流れが自伝的な要素が強くて実用書や解説書の類とは違うため、人によっては若干読みづらいと思う。
ただ、著者が作り出す「弱いロボット」たちが、どのように誕生し進化しているのかを知るには、この形態が読みやすかった。また、『「とりあえずの一歩」を踏み出すために』と題された著者と編集部のインタビューが、本書全体のまとめ的な役割も果たし、読み物として楽しい。
あとがき
私は医学の専門家でないですが、従来の医学、看護、介護では、「身体や心のマイナス面」は筋トレやリハビリやクスリでプラスし、自身を変化させると言うことであったと思うし、今でもそう言う一面はあります。
しかし、著者のアプローチは、弱い人に変化を求めずに、周りの人たちや環境を巻き込んで解決すると言うものです。
決して弱い人を甘やかすのでなく、弱い人は自らの状況や状態を知った上で他者に自然に委ねられる社会、様々な人を自然に受け入れるまなざしを常に持つ社会、これこそ一つの理想的な福祉社会と言えるかもしれません。
|
★ケータイの方は下記リンクからご購入できます。
ロボットの悲しみ コミュニケーションをめぐる人とロボットの生態学
驚きの介護民俗学 (シリーズ ケアをひらく)
セラピスト
ロボットという思想~脳と知能の謎に挑む(NHKブックス)
★本家の記事のURL → http://director.blog.shinobi.jp/Entry/6918/
★FC2ブログへトラックバックが送信できない方へ → コメント欄に、ブログ名、記事のタイトル、URLをご記入下れば、確認次第公開させて頂きます。お手数をお掛けします。
【当blog内(本家)の関連記事】
[読書]ブッダ 真理のことば / NHK「100分de名著」ブックス (佐々木閑/著・NHK出版) 感想
[読書]怒らないクスリ: 専門医が語る、心が楽になる処方せん (熊井三治/著・小学館101新書) 感想
- 関連記事
-
- [読書]アート鑑賞、超入門! 7つの視点 (藤田令伊/著・集英社) 感想 (2015/05/04)
- [読書]写真図解でわかりやすい マンネリを打破する 写真上達の教室 (河野鉄平/著・インプレス) 感想 (2015/04/26)
- [読書]弱いロボット(シリーズ ケアをひらく) (岡田美智男/著・医学書院) 感想 (2015/04/15)
- [読書]仕事も人間関係もうまくいく 「気遣い」のキホン (橋本英樹/著・祥伝社) 感想 (2015/04/04)
- [読書]千葉が最高 (千葉ベスト選出委員会/著・リンダパブリッシャーズ) 感想 (2015/03/22)