映画「救いたい」 感想と採点 ※ネタバレなし


ざっくりストーリー
仙台医療センターで麻酔科医局長として勤務する川島隆子(鈴木京香)と、仙台市街に川島医院を開く夫・貞一(三浦友和)は夫婦二人三脚で暮らしていた。しかし、2011年3月11日に東日本大震災が発生。貞一は地域医療に携わるため、自宅を出て被災地で川島診療所を作り、地域の人々や患者たちから信頼されていく。
一方の隆子は、震災で唯一の肉親である父親を亡くしたトラウマから抜け出せずにいる部下の麻酔科医・鷹峰純子(貫地谷しほり)を心配していた。そんな純子は、父親の捜索に当たった自衛隊員・三崎大樹(渡辺大)から好意を寄せられていたが、大樹を見ると亡き父を思い出してしまうため、大樹の気持ちを受け入れられずに悩んでいた。
また、川島診療所の唯一の看護師・吉田美菜(中越典子)も日頃は明るいものの実は最愛の夫を津波で亡くした深い悲しみを背負う。そして美菜と同居する義母・ふみ江(藤村志保)も嫁に言えない悩みを抱えている。このように被災地の多くの人が辛い悲しみや厳しい現実を受け入れ乗り越えようとしていた時、貞一の友人・岸義行(津川雅彦)が伝統の秋祭りを復活させようと立ち上がる…
3・11から3年経った被災地の現状を映し出す!
2011年3月11日から3年余り経過した被災地の現状を映し出した作品だ。特に、忍耐強いとされる東北の人たちの、笑顔の裏側に隠している悲しみや苦しみや涙が、3年経ってもまだまだ癒されず、本当の意味での震災からの復興は道半ばであることを教えてくれる。
私にとっては“映画館で観て良かった”と思える作品!
特に『映画館で被災しました』『忘れられない映画館になった…』で書いたように、あの日、千葉県の映画館内で震度5強に遭い、今でも映画館で地震を感じると身体が強張る私としては、劇場であの津波や被災地の映像を観るのは少し勇気が必要だったが、今は観て良かったと思う。やはり現実から目をそむけてばかりではいけないのだ。
商業映画として捉えると、設定は悪くない!
ただ、商業映画、エンターテインメント映画として捉えると、少々厳しい感想になる。震災以前に2つの大きな心と身体に傷を持ちつ主人公・隆子(鈴木京香)が、麻酔科医として上司として、患者や部下たちを「救いたい」と言う気持ちで今もずっと働いている。そこまでの設定は悪くない。
“麻酔科医の重要性”のくだりが少々邪魔かも?
しかし、本作は「主人公=麻酔科医」と言う面を不自然に度々クローズアップする。確かに麻酔科医をモチーフにした映画は少ないと思うが、麻酔科医の重要性を描くことが、麻酔科医と開業医の夫婦の物語や被災地の現状を描くこととほぼ同等に描かれるから、「救いたい」と言うテーマが焦点ボケになってしまった。これでは本末転倒だ。
夫を中心に、夫を支える妻と地域の人々を描けば…
むしろ視点を変え、自分の病院を無期閉院にし被災地に診療所を構えて日々懸命に生きる夫・貞一(三浦友和)を中心に、夫を支える妻・隆子(鈴木京香)として、今もなお被災地で逞しく生きる心優しい人々との交流を描いた方が良かったと思う。
あとがき
「医師であり、妻である前に、人間として生きたいと思った」
「男であり、夫である前に、医師として生きることを選んだ」
これが本作のキャッチフレーズですが、本作では隆子も貞一も医師としての本分を全うすることが人間として生きることであると描かれています。従って、立場は違えど医療従事者同士の夫婦ならではの幸福感や苦悩や葛藤はそれなりに描かれて共感できます。
しかし1本の映画としての仕上りは、脚本のテーマの咀嚼不足と詰め込み過ぎが否めません。
でも、俳優さんたちの演技は素晴らしいです。スクリーンに映し出された仙台の夜景も美しかった。被災した人々の生き様も熱かった。そして、3・11を忘れないよう、このような作品で被災地、被災された人々の一部分であっても、記録し遺すことは意義があると思います。是非、1人でも多くの方に観て欲しい作品です。
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