[読書]クイズ化するテレビ (黄菊英,長谷正人,太田省一/著・青弓社) 感想

「なんでテレビにいちいち答えているの?」が動機。
本書は3名の共著だが、黄菊英氏の執筆した本編に限定した感想。黄氏は数年前に韓国から来日し、早稲田大学大学院で表象・メディア論を学んだそうだ。本書を書くきっかけは、来日してテレビを観ている著者に、友人が何気に問い掛けた「なんでテレビにいちいち答えているの?」の言葉。
そして著者は、「なぜ(日本の)テレビは答えを求めるのか?」と疑問を持ち、それが『クイズ化するテレビ』に繋がって行く。確かに私も情報番組のめくりフリップやバラエティ番組のランキング、あらゆる番組の山場の前に挿入されるCMが増えているのは実感している。
肝心の“クイズ化”が曖昧なのが残念…
しかし、これを一括りに「テレビのクイズ化」としてしまうのは、私には論点が強引なような気がした。“私には”と書いたのは、この類の制作側の手口は実に巧妙だから、一人一人“感じ方”が違うと思うのだ。だから著者の論点を否定するつもりはない。私なりの本書への“感じ方”を書こうと思う。
私の違和感の原因は、「クイズ化」が曖昧に書かれているからだ。「出題者が回答者に問題を出し解答を得ると言う状況を視聴者に見せる」と言う所謂「クイズ番組」と、「伝えたい側が視聴者に対して質問スタイルで問い掛けていく」と言う「クイズ番組のスタイルを用いた番組」がきちんと区別されていないのだ。
「日本のテレビは“疑問文”が多い」で終わりなの?
私は上記の二つが明確に分類化されていた方が面白かったと思う。そして、それぞれの良い部分と悪い部分を解り易く示していたら、もっと読み物としても楽しい一冊になったと思う。
例えば、情報番組のめくりフリップだが、やたら画面全体が覆われて見え無いようなものや音楽で過剰に演出するものは別にして、視聴者に対して注目させるポイントを明らかにし限られた時間の中で結論まで導く手段としては、それなりに有効だと感じる。
また、バラエティ番組のランキングも、ニュースや情報番組ならフリップ一枚で済む所を、敢えて順位を当てると言う方法でバラエティ番組をして成立させている。
そして、その流れのまま、山場CMの“続きは90秒後”まで「クイズ化」と括ってしまったから、結局、日本のテレビは「疑問文」が多いと言う、やや中途半端な結論に読めてしまったのが残念。
あとがき
読後の印象は「もやもやするなぁ」でした。言いたいことは解るのですが、読んでいて論点が面白さに欠けるのです。確かに、今の日本のテレビ番組には、「疑問文」「疑問符」が溢れています。
しかし、それはテレビに限らず、出版物のタイトルやニュースやブログの記事の見出しも同じです。それらも「クイズ化」なのか?その辺がスルーされたままで『クイズ化するテレビ』としたのが、少し物足りなかったです。
ただ、本文中に掲載されている昭和の頃からの懐かしいテレビ番組のキャプチャ写真や解説は、読み物としては面白いです。社会論やメディア論の書してよりも、日本より圧倒的にクイズ番組の少ない韓国からの留学生による、日本のテレビ番組観察考として読んだら楽しいと思います。
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