[読書]「外食の裏側」を見抜くプロの全スキル、教えます。 (河岸宏和/著・東洋経済新報社) 感想

確かに「外食」の裏側は見抜き易くなると思う!
私の子供の頃は、「外食」は庶民の数少ない娯楽であり贅沢であり家族の思い出だった。しかし、ファミレスやファストフード店が出来てチェーン展開していく中で、「外食の裏側」は利益や効率第一主義になり、食の安全や品質や楽しさまでも軽視されているのが現状。例えば、ファミレスのハンバーグの裏側が書いてある。
肉の増量のために「リン酸塩」を加え肉に多くの水分を蓄えさせ、「植物性タンパク」で増量すれば、肉の味が薄まった色白のハンバーグ素材が出来る。そこで、味は「調味料(アミノ酸等)」や「肉エキス」を加え、色は「着色料」で色づけ。当然に肉の味も薄まるから、ソースを濃い味にして誤魔化すために「グルタミン酸ソーダ」を多量に入れて人工的な旨味をプラス。
様々なジャンルの外食店の私たちに馴染みのある料理が、実はどんな“裏側”を経由してテーブルに乗るのかが詳しく解り易く書かれてある。本書を読めば、ファミレスやチェーン店居酒屋のよく目にするメニューの“裏レシピ”的なものが容易に想像できるようになる。その意味で、「外食」の裏側は見抜き易くなると思う。
外食店にはJAS法等の法律が適用されない!
本書の中心は、コストを下げるために本物に様々な“混ぜもの”を入れて本物のように売っている「代替食品」と、輸入食材や冷凍食材に含まれる“食品添加物”や原産地不明の「偽装食品」のつくり方を「外食の裏側」と言い、それを見抜くスキルが紹介されている訳だが…
ここで一つ引っ掛かることがある。それがJAS法などの法律の適用についてだ。食品をスーパー等で販売する際は、JAS法などの法律によって、原材料(使用した添加物も含む)、賞味期限、消費期限を表示する必要がある。
しかし、外食店で厨房で作って提供する際は、それら法律が適用されない。外食店は「食中毒を出さなければOK」程度のもの法律しか適用されないのだ。だから上記のような“裏レシピ”がまかり通る。ここまでは私も著者に共感する。
「外食店はズルい。コンビニは正直」って論点が稚拙…
一方で「コンビニ食品には厳しい表示基準が適用されているから安心だ」と言う論点には違和感を覚える。情報提供されていれば確かに「安心度」は高まるが、「安全度」が高まるのとは違うはず。
著者が現在コンビニ業界に務めているからだろうか、この「コンビニ擁護と外食敵視」と言う二つの論点が馴染まない違和感。それが払拭されたら、更に説得力が増すと思う。
いい店、おいしい店を見抜くスキル!
第5章『外食の達人が奥義を伝授!いい店、おいしい店を見抜くスキル』には共感できる項目が幾つもあった。最後に私も実行していることを挙げてみる…
・汚いのれんで客を迎える店に、おもてなしの心無し。
・店内が汚い店にうまいものなし。
・トイレは男女別で音が店内に聞こえないこと。清潔なのは当然。
・厨房の中の段ボールを覗き込めば、店が隠したいものが見える。
・匂いに注意。トイレ臭や下水臭は当然。特に油が酸化した匂いは絶対にNG。
・生ビールが美味い店は毎日の清掃が行き届いている証拠。
・刺身が美味い店は毎日きちんと仕入れをしている証拠。
あとがき
全体的に「見抜くスキル」と言う部分では利用価値が高いと思います。ただ、所々に見られる文章の稚拙さが、本書の説得力を削いでいるのが残念です。
上でも採り上げましたが、例えば、本書のP.119の2~7行目あたりが顕著。中食(スーパーやコンビニ)側に立つ著者が、「外食業界は法律が緩くて羨ましいよ、こっちは正直に表示して添加物まみれみたいに思われるのに、そっちは誤魔化し自由でいいなあ」みたいな本音がポロリ。
まあ、これが執筆の原動力であり著者の真の心の叫びなのでしょうから、その辺の作者の本音を上手く差し引きして読めば、本書のデータを基により冷静に楽しく美味しい店を見極められると思います。
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