[読書]ストーカー病―歪んだ妄想の暴走は止まらない― (福井裕輝/著・光文社) 感想

ストーカーを病人として、適切な治療を行う!
揺るぎなき被害者感情、激しい思い込み、愛情の入り交じった執拗さ、飛躍した衝動性……。(中略)本書は、ストーカー加害者の共通点を「ストーカー病」と呼び、ストーカー被害者をなくすためには加害者をなくすしかなく、そのための著者自身がこれまで行った1,000人以上の加害者治療を例に、その病の症状・原因から治療・予防法までが書かれている。
私はそれに、「ストーカー病」と言う名称を付けた。
(「まえがき」より抜粋)
「ストーカー病」を知りたければ、第2章までで十分。
「ストーカーは病気だ」と言う論点は、被害者の行動分析論として読むとなかなか興味深いし、第1章『繰り返される悲劇』では加害者治療こそ被害者を減らす近道では?と思えてくる。
しかし、第2章『ストーカー病とは』に入ると、専門用語がずらりと並ぶ割に、この類のことに興味を持っている人なら知っているような一般論を遠回しに難しく表現しただけで少々退屈。ただ、「ストーカーとは何ぞや?」と言う読み物としては、体系的に書かれているから、第2章までで十分だと思う。
第4章以降は、誰に向けての書なのか解り難い。
また、第2章後半の「被害者になりやすいタイプ(P.68)」から始まる僅か10数頁だけ書かれている被害者への注意喚起的な部分は、“被害者にも原因がある”ような印象でやや中途半端。
更に第4章『活動の原点』以降は、著者の経歴紹介が長々と続き、第7章『司法と医療の連携』で、水と油状態の司法と医療が今後上手く連携しないと、ストーカー犯罪は減らないと結ばれる。
何と言いたいかと言うと、本書が誰に向けた書なのかがわからないのだ。被害者の立場で読めば、「ストーカーは病気」と言われたら身も蓋もない。加害者が自己分析のために読むはずはない。とすれば、まだ日本には少ないストーカーの専門家の増員と、加害者分析の推進のための法整備や制度の充実の訴えか。
あとがき
最近、精神科では次々と新たな病名が作り出され、症状ごとに病名や治療方法をカテゴリー化し細分化することで、統合失調症や双極性障害、パーソナリティ障害の治療に効果を発揮しているのは知っていますので、この「ストーカー病」にも当てはまるのか、今後に期待したいと思います。
また、まだ日本では研究の浅い分野ですし、あくまでも一般書ですから、一つのストーカー加害者の思考や行動パターンを知る意味では、実際の事件や患者例を挙げて解り易く書いてあるので、今や老若男女誰もがストーカー事件の当事者となりうる時代ですから、知識として読んでおくのは良いと思います。
ただ、当然ですが既にストーカー被害で悩んでいる人が読む本ではないです。直ちに警察や専門家に相談すべきです。そして、もしあなたが予防や対策上の知識を知りたいなら、下に紹介した本の方が良いです。
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