[読書]かないくん(ほぼにちの絵本) (谷川俊太郎/著,松本大洋/イラスト,糸井重里/監修・東京糸井重里事務所) 感想

死ぬって何なんだろう?
きっと、大人でも子どもでも、本書を読んだら、「死ぬって何だろう?」と自問自答してしまうだろうし、そばにいる誰かに聞きたくなるだろうし、まだ知らない誰かに一緒に考えて欲しいと願うだろう。そして本書は、“早世”と“長寿”と言う反意の言葉の意味を考えさせられる大人向けの絵本でもある…
48頁に60年の歳月と未来が詰まってる!
ある少年の何気ない学校での出来事から物語は始まる。そして、少年は“死”を身近に経験しながら、大人になり、やがて老人になり“死”を意識するようになる。なのに最初の物語は終わらない。そして、物語は次の世代へ託されていく。60年と言う歳月がわずか48頁に凝縮され、更に未来にまで繋がる壮大な“命”の物語なのだ。
“特殊6色印刷”による新たな色空間!
まず、絵が素晴らしく美しい。本邦初の“特殊6色印刷”によって、これまでの“4色印刷”では難しかった超細部の表現やグラデーションの豊かさによって、新しい色の空間がそこにある。例えるなら、ブラウン管テレビでアナログ放送を見ていたのが、ハイビジョン放送を液晶テレビで見るような、そんな違いがある。特に“白色”の表現力の幅の広さと奥行き感を是非感じて頂きたい。
映像が流れて行くような錯覚…
技術的なことだけでない。見開きの文字の配置と挿絵のバランスの良さや、文章のあるページと絵だけのページの順序や数の絶妙さも素晴らしい。自分好みのページをめくる速度で読み進めているのに、絶妙に編集された映像作品を見ているような錯覚さえしてしまう。
あとがき
実は私は、本書を手にするまで「大人向けの絵本」と言う漠然とした括りの書籍については、懐疑的な立場でした。何となく本から漂う大人の事情や商売っ気が嫌いだったのかもしれません。
しかし、本書を読んで考え方が変わりました。日々時間に追われて忙しい大人にとって、小さな文字の長文を読む煩わしさは、読書好きの私でも時に億劫になります。でも、絵本は違います。読んで理解すると言うより、見て感じる媒体。だから例えば、病んだ心の傷に即効性があるでしょうし、ストンと心に収まり易い。
“即効性の高い心の薬”“害の少ないサプリメント”と言えるかも知れません。ですから、たまには文字を読むのでなく本から直接何かを感じたい、そんな方にはお薦めできる「大人向け絵本」だと思います。もちろんお子さんは子供なりの解釈で読めると思います。
【本書関連のサイト情報】
かないくん - ほぼ日刊イトイ新聞
http://www.1101.com/books/kanaikun/index.html
かないくんができるまで - ほぼ日刊イトイ新聞
http://www.1101.com/kanaikun_making/
「かないくん展」開催(2014年5月16日~6月2日,渋谷パルコミュージアム)
http://www.1101.com/kanaikunten/
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子どもたちの遺言/谷川 俊太郎
ずーっと ずっと だいすきだよ (児童図書館・絵本の部屋)
だいじょうぶ だいじょうぶ (ちいさな絵童話りとる)
生きる わたしたちの思い/谷川 俊太郎 with friends
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