映画「ローン・サバイバー」 感想と採点 ※ネタバレあります


リアルな銃撃戦を楽しむ戦争アクションと観るも良し!
アメリカ海軍の特殊部隊ネイビーシールズ史上最悪の惨事“レッドウィング作戦”の全貌の戦場アクションで、原作は実際に作戦に参加し唯一生還した兵士の回顧録。正に極限状況下の銃撃戦をリアルに描いた作品。この解説で間違いないと思うし、そう言うエンターテインメント作品として観ても十分楽しめる。
「あらすじ」こそが物語の核心となる恐れがあるから…
しかし、書いている自分がどうも腑に落ちない。なぜなら、本作はこんな単純な話で無いのだ。ある部隊のある決断によって多数の仲間が死に、また国や民族を超えた“ある関係”が生まれる。そう言う戦争の矛盾や繰り返される悲劇が描かれている。そこで今回は“あらすじ”もネタバレに含ませようと思う。
ネタバレが含まれます。物語の核心にも触れますので、ご理解の上、“続きを読む”よりお進み下さいませ。
ざっくり改めじっくりストーリー
2005年6月、タリバン政権の指導者の暗殺のためアフガニスタンで偵察の目的を達し、通常のミッションのように順調に撤退するだけだった米海軍特殊部隊シールズの4人は、偶然民間のアフガン人3人の山羊飼い遭遇する。内1人は無線機を持っている。
部隊は議論の末に「交戦規程」に基づき彼らを開放する道を選ぶ。しかし、山羊飼いの連絡を受けやってきた200名ものタリバン兵に囲まれ、4人で激しい銃撃戦に反撃するが壊滅的になってしまう。
近郊のパシュトゥーン族の村に辿り着いたマーカス二等兵曹(マーク・ウォールバーグ)は、よそ者の米軍兵ではタリバンと一般民衆の区別がつかない恐怖の中、パシュトゥーン人の「助けを求めてきた客人は、どんな犠牲を払っても守り抜く」の掟によって、命を救われる。
そして、今でも実際のマーカス氏とパシュトゥーン族の村民たちの交流は続いていると言う…
「あの決断に後悔は無い」
それが本作が描く戦争の現実であり矛盾だ!
実話の小説の原作者であり、たった一人の生存者であるマーカス・ラトレル氏のインタビュー記事(記事のリンク)で、「僕はあの決断をしたことで、後悔にさいなまれたり、不眠になったりはしていません」と語っている。
決断を最後まで全うした仲間たちと、そのために銃を持ちブーツを履いて仲間の隣で戦いながら死んで行った戦士の誇りある死。その価値観が戦争の現実であり矛盾なんだと思う。
皮肉なパシュトゥーンの掟…
今作を単なる骨太戦争映画で終わらせていないのが、「パシュトゥーンワーリ」(パシュトゥーンの掟)。実はこのパシュトゥーンの掟が皮肉にもアフガニスタンの戦争のきっかけでもあった。
同時多発テロを受けたブッシュ政権が、タリバン政権にビンラディンの引き渡しを求めたが、パシュトゥーン人が多いタリバン政権は掟を守ったのだ。そこでブッシュ政権は「テロリストを匿う者はテロリストの一味だ」とタリバン政権を攻撃し、アフガニスタン戦争に繋がる。
“何が崇高なのか”がぼやけたのが、星3つにした理由。
やがてタリバン政権は崩壊し、今度はブッシュはイラクを攻撃、その間にタリバンが復活したため、アメリカは再びイラクからアフガニスタンへ兵を増強。それが今作の作戦に繋がり、今度は“掟”によって一人の米軍兵が助かると言うわけだ。
この崇高な“掟”によって戦争と言う悲劇が繰り返される現実。そして、それ以上にアメリカ人が観たら“掟”よりも崇高な自己犠牲で成り立つ正義が描かれているのだろうが、湾岸戦争でも自らの正義を確立できず、アフガニスタンへの出兵も上手くいかず。
結局、この映画が何を描きたいのか、そこが日本人の私には、もやもやとぼやけて見えたから所々で白けてしまう。そう、銃撃戦のリアルさに対して、パシュトゥーンの掟のくだりが取って付けたようにドラマチックでクライマックス化させた、作り物っぽい展開が星3つの理由だ。
あとがき
激しい銃撃戦の臨場感と戦場で若い男たちが命を落とす物語だけでは伝わらなかった“何か”を、パシュトゥーンの掟が本作の鍵となって観客に語りかけてきます。それは間違っていません。
ですから、まずは「自分だったら?」と作品の中に身を投じてみるのが、本作の一つの楽しみ方だと思います。あとはあなたならどう選択肢どう行動し感じるかは自分次第ってことだと思います。
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