[読書]「おもしろい」映画と「つまらない」映画の見分け方 (沼田やすひろ/著・キネマ旬報社) 感想
★★★★★ 傑作!是非とも本棚に並べたい一冊。
★★★★☆ 秀作!私が太鼓判を押せる一冊。
★★★☆☆ まぁまぁ。お小遣いに余裕があれば買っても良い。
★★☆☆☆ 好き嫌いの分岐点。図書館で十分。
★☆☆☆☆ 他の時間とお金の有意義な使い方を模索すべし。
肝心の「前評判にダマされない秘訣」が
論理的でないのが残念…
本書はどんな理由で手にするかによって価値が変わってくると思う。私は、“映画を観る前に「つまらない」映画を見分ける方法を知りたい”と思って本書を読んだ。しかし、残念なことにその部分にはこう記されている。
「自分の目で確かめるんじゃ、お金のムダだ」とおっしゃるならば、少しだけ前評判にダマされない秘訣をお教えしましょう。ただ、これはKNセオリーではなく筆者の経験知ですので、間違うこともありますのでご容赦ください。
と、具体的な12項目が列記されているが、ここで挙げる程の内容ではない。なぜなら根拠が曖昧だからである。なお、引用文中の“KNセオリー”とは、本書の理論の根底になっている概念のこと(後述する)。そして、結論はこう括られる。
なによりも大切なのは、リマインダーの好き嫌いでなく、そこで、ハズレを掴まされないためには、自分と似たような価値観の評価者を見つけようと言うことになる。では、どうすれば良いのか?本書にはそのための知恵が書かれているのだ。
ストーリーの良し悪しで語れる評価者を見つけることです。
「おもしろい」脚本の構造を知って、
ストーリーの良し悪しが解るようになろう!
本書の基本姿勢は、作品の好き嫌いとストーリーの良し悪しは違うと言うことを知るべきとある。
ストーリーの良し悪しは、KNセオリーでは物語展開の黄金則「13フェイズ構造」と呼ばれ、所謂「起承転結」の細分化版だと思えば良い。読んでみると実に理にかなった解り易い分類だ。自分が「おもしろい」と思った作品に当てはめると、見事に整合すると思う。
また、作品の好き嫌いを決める大きな要素を、KNセオリーでは「リマインダー」と呼び、ざっくり言うとストーリーを面白く楽しく魅せるための「売り」だ。“SF”“コメディ”“ミュージカル”など、所謂「○○仕立て」みたいなもの。
要は、作風への好みと作品の質を分けて評価できるようになろう、もしくは、評価できる人やブログや書籍を探そうと言うこと。その判断基準が「13フェイズ構造」であり、「リマインダー」と言う訳だ。
連ドラ好きなら、よりドラマを楽しめるようになる!
私は1クールに15~20本近くの連ドラを観て感想を書いている。私の感想が上記の、作風への好みと作品の質を分けて評価できているかは置いといて…
もし貴方が連続ドラマを観るのが好きならば、例えば全10話と想定して、今日は「13フェイズ構造の第6フェイズの成長・工夫かな?」とか、「おい、第8フェイズの試練が弱過ぎやしないか!」等と、これまでと違った視点でドラマを観ることが出来ると思う。
これが出来るようになれば、「残り2話に幾つのフェイズを突っ込むんだよ!」とか、「第2フェイズの事件がこんなしょぼさじゃ先が知れるな」と判るようになると思う。私も今期はそのように観ようと試みたが、果たして感想の記事にそれが反映されたかどうかは、読者さまに聞くしかないが…
あとがき
実は本書で紹介されている「KNセオリー」はそんなに斬新なものではないです。ハリウッドを中心に昔からある脚本論を、今風に且つ解り易くアレンジしたものです。でも、翻訳本より読み易いですから、脚本構造を学ぶなら気軽な入門書としてお薦めできます。
また、好き嫌いと良し悪しを分けて考えると言う部分はとても参考になります。もちろん普通に映画やドラマを観る上では必要ないですが、少し突っ込んでみたい人には、ストーリーとテリング(ストーリーの語り口)の違いや関係を学ぶのにちょうど良いと思います。
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【これまでの類似本の書評(本家)】
【書評】表現の技術―グッとくる映像にはルールがある:高崎卓馬(著) (電通)
【書評】映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと シド・フィールドの脚本術(フィルムアート社) シド・フィールド(著)
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