【書評】表現の技術―グッとくる映像にはルールがある:高崎卓馬(著) (電通)
【私的評価】★★★★☆
【私的評価基準】(書籍用)
★★★★★ 傑作!是非とも本棚に並べたい一冊。
★★★★☆ 秀作!私が太鼓判を押せる一冊。
★★★☆☆ まぁまぁ。お小遣いに余裕があれば買っても良い。
★★☆☆☆ 好き嫌いの分岐点。図書館で十分。
★☆☆☆☆ 他の時間とお金の有意義な使い方を模索すべし。
そもそも論が肯定的に書かれているのがイイ!
私は、ホテルでの企業さまのセミナーや懇親会などの演出をしている。その際、企業体や組織やプロジェクト(本書では“ミッション”と呼ぶ)が大きくなればなるほど、“焦点ボケ”が起こり、“ミッション”を達成することが目的化してしまうことが意外と多い。
そんな時は敢えて「そもそもこのイベントは…」と俗に言う“そもそも論”を展開して、本来の目的への舵取りをするのだが、案外と“そもそも論”はと嫌われる。時を戻すような感覚なのだろう。本書では、実際のコマーシャルの制作例を挙げて、解り易く有用性を唱えているのが良い。
プロットに戻すことで、脚本を構造から見るのが面白い!
「つくり方をつくる」の章が実にものづくり、特に映画やテレビドラマのつくり方を実に興味深く書いてある。中でも映画『ダイハード』を例に、通常の映像制作の逆の順番で作品を捉えることで、脚本の“技”の基本が学べる。
簡単に言うと、普通の脚本(映画)づくりを「テーマ→あらすじ(大まかなプロット)→物語を進行する出来事→台詞や動き」とすると、作品を観ながら逆に、「出来事を書き出す→プロットに戻す」と言う作業をする。その出来たプロットの骨格をいじらず設定を変えれば、要は“設定違いの似たような話”が幾らでも作れるのだ。
これを実際にやってみると、ヒット作を連発する脚本家とそうでない脚本家の差も見えてくるし、この作業を作品を観ながら頭の中で出来るようになると、その作品が無駄に引き延ばされている原因や、丁寧に描写している理由が自然に見えてくると思う。
つくり手としての客観性の保ち方が解り易い!
「つくり手は、客観的で俯瞰な第三者の目線が重要だ」と書いてある。それを意識的に行う幾つかの方法として、「誰よりも自分を徹底的に疑う」「違和感を利用する」「難しいほうを選ぶ」とある。これは実に実践的で有効だと思う。
つくり手で怖いのは“慣れ”だ。成功体験があればあるほど、“慣れ”を“個性”と置き換えてしまうことが多いと思う。その解決策が「発想脳をつくる」の章に詳しく書かれている。
常に新鮮で客観的な思考回路こそ、表現をするときに重要であることが、企画段階やプレゼンの過程を通じて、解り易く説明されている。経験的に知っていたりやっていることもあるが、文字で読むと一層の理解が出来ると思う。
広告マンの書籍なので少々眉唾で本書を手に取りましたが、感動させるにはルールや技術が使われていると言う論点が面白かったです。実は余程のことが無い限り、偶然に感動なんか生まれないんですよね。
脚本を学んでる人、ドラマや映画の脚本や演出の仕掛けを知りたい人にもおススメします。読んだ後は、きっとメモを片手に作品を観ていると思います。いつもの私のように…
|
★本家の記事のURL → http://director.blog.shinobi.jp/Entry/4732/
★FC2ブログへトラックバックが送信できない方へ → 記事のコメント欄に、貴方のブログ名、ブログ記事のタイトル名とそのURLをご記入下さい。こちらで確認して公開させて頂きます。お手数をお掛けします。
- 関連記事