映画「ヒューゴの不思議な発明(3D・字幕版)」 感想と採点 ※ネタバレあります
映画『ヒューゴの不思議な発明(3D・字幕版)』(公式)を先週平日のレイトショーで劇場鑑賞。キャパ221名に8名ほど。公開から一週間以内の割に少ないかも?
採点は、★★★☆☆(5点満点で3点)。100点満点なら50点にします。
ざっくりストーリー
会話は英語なのに設定は1930年代のパリ。駅の時計台に隠れ住む孤児の少年・ヒューゴ(エイサ・バターフィールド)の唯一の遊び相手は、金属むき出しの不思議な機械仕掛けの人形だった。
その壊れた人形の秘密を探っていると、不思議な少女・イザベル(クロエ・グレース・モレッツ)と紳士・ジョルジュ(ベン・キングズレー)に出会う。やがて、その人形に秘密のメッセージが隠させている事を知り…
1時間10分の睡魔との戦いを越えれば、光が見えてくる…
私の頭が悪いのが原因だが、可愛い少年と少女の二人の主人公のアクションだけが次々と連続して物語は進んでは行く。しかし、それらを受ける(リアクションする)登場人物が連携していないから、物語が散漫で最後までテーマがぼやけたまま。
前半の1時間10分は正に睡魔との戦い。でも、それを過ぎると途端にスコセッシ監督の「映画愛」が爆発する。私が学生の頃学んだ「映画創世記」が3Dと鮮やかな色彩で動く様は感動的だ。
と言う訳で、前半はゆるーいファンタジー、後半は動く映画史、で全編は薄っぺらな登場人物たちとストンと落ちない物語と何とも評価し難い作品だ。
「意見には個人差があるから」と寛大なお心の方のみ、採点理由も含めて、詳細はネタバレが含まれますので、ご理解の上、“続きを読む”よりお進み下さいませ。
“新しい絵の具”を手に入れた映画少年スコセッシがやり放題!
本作は、“3D”と言う新しい表現方法を手に入れた70歳近いスコセッシ監督が、最新の映像技術を思うままに使った映画愛が詰まった作品だ。
最新のデジタル技術で、まるで全編が、映画創世記のサイレント映画に用いられた「人工のカラー映画」と「飛び出す絵本」のような作風で描かれている。ホント映像美が素晴らしい。
サイレント映画の“カラー化”へのオマージュ!
サイレント映画時代のカラー映画は、所謂モノクロフィルムで撮影した作品に「着色」と「染色」を施した物だ。
「着色」は現像・編集されたフィルムに、筆でフィルム一コマ一コマに衣装や一部に色を塗った。「染色」はフィルム自体を染めてしまう技法で、例えば夜のシーンは青色、屋内はモノクロで屋外は橙色とか。今のようなカラー映画は「総天然色」と言って、これらとは異なる。
本作の色彩が全編に亘って、リアル感重視よりも若干人工的に鮮やかだったりするのは、そう言う“サイレント映画のカラー”への監督のオマージュだと思う。ノスタルジックな作品なのに淡い色合いでないのはそのためだろう。
サイレント映画時代の“舞台記録”へのオマージュ
創世記の映画の多くは舞台中継、いや舞台演劇を記録し多くの人たちに公開する興業として存在した。今の映画美術の原点も、西洋でルネサンス時代から用いられていた舞台芸術における遠近感の表現に使われる書き割り(周囲の風景や空を表す背景画)やパネル等の大道具美術が原点だ。
そう言う近景・中景・遠景と言う3つの遠近感で奥行きを表現すると言う技法を、“3D”と言う最新技術で「意図的に、効果的に」表現していると思う。少々わざとらしく感じる遠近感も舞台中継映画へのオマージュだと思う。
とにかく職業映画監督、商業映画の創世記が楽しめる作品なのは間違いない。
ストーリーが残念過ぎる…
なぜもっとストレートに映画創世記を描かなかったのだろうと思う。ストーリーについて詳細は書かないが、主人公ヒューゴとヒロイン・イザベルの各アクション(能動的な行動)が腑に落ちない。
リュミエール兄弟の『ラ・シオタ駅への列車の到着』へのオマージュとは言え、駅の時計台と言う隠れ場所や鉄道公安官との追いかけっこも必要だかどうだか。
イザベルが本屋から図書館そして冒険、、謎の鍵、パパ・ジョルジュ(ベン・キングズレー)へと誘導し話は進んでいくが、行き着く所は後半の「映画創世記へのオマージュ」。もう少しストーリーのまとまり感が欲しかった。
本作の良し悪しの前に、ポスターや予告編の詐欺だと思います。なぜ邦題もファンタジー系映画を期待させるようなものにしたんでしょう。
もっとスコセッシ監督の映画愛の作品である事を前面に出せば、3Dや色彩を楽しめるのに。とは言え、脚本がイマイチなので、微妙な作品ではありますが…
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