映画「ぼくのエリ 200歳の少女」DVD鑑賞 感想と採点 ※ネタバレあります
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先日、劇場鑑賞した映画『モールス』(公式)に刺激を受け、そのリメイク元であるスウェーデン映画『ぼくのエリ 200歳の少女』(公式)を、DVDにて鑑賞。なお、原作小説『MORSE』は未読。
採点は、★★★★☆(5点満点で4点)。100点満点なら75点。
ざっくりストーリー
雪に閉ざされたストックホルム。いじめられっ子のオスカーが暮らすアパートの隣室に、エリと言う美少女が越してくる。彼女は雪の上でもなぜか裸足で、自分の誕生日も知らない不思議な少女。やがて徐々に二人は惹かれあい、壁越しのモールス信号で心を通わせていく。
ある日、自分の隠れ家で絆を確かめようとするオスカーは、エリに隠された哀しくも恐ろしい秘密を知ってしまう。
一方、町では残虐な連続猟奇殺人が続いていた。事件を担当する刑事は、やっと二人の住むアパートへ辿り着く。そして全容が明らかになったその時、オスカーは究極の選択をする…。
こちらを先に観ていたら「モールス」の評価も違ったろう…
毎度の事だが、当blogは個々の作品として評価したいから、原則的に原作やリメイク元とは比較しない立場。ただ一度だけ言うなら、画コンテの半分以上は完全コピーというのは些かやり過ぎと思う。
なぜなら、(未読だが)結果的に原作の解釈がこれほど違う(詳細は後述)のだから、映像もオリジナリティを追求して欲しかった。従って、画コンテのオリジナル性に敬意を表するのと、私好みの作品のテーマや世界観に★1つ多くなった。
今回も相当辛口の感想なので、原作小説、出演者や監督はじめスタッフのファンの方や、最初から4点の採点に異論のある方は、読まないで下さい。また、誹謗中傷の類のコメントは掲載及び返事を控えさせて頂く場合があります。
それでも、「意見には個人差があるから」と寛大なお心の方のみ、採点理由も含めて、詳細はネタバレが含まれますので、ご理解の上、“続きを読む”よりお進み下さいませ。
邦題に違和感。「ぼくのエリ」で良かったのでは?
繊細で、怖ろしく、詩情豊か。時に純粋で、時に背筋の凍る童話の世界。これが私の本作の印象。そう捉えると邦題の『ぼくのエリ 200歳の少女』はあまりに安っぽい。
主人公オスカーが抱えた様々な悩みと、そして未来の象徴がエリなのだから、ここはシンプルに『ぼくのエリ』として、観客の想像力に委ねるべきだったと思うし、日本の映画ファンも配給会社の担当者ほど愚かでないと思う…
股間の“ボカシ”に、むしろモヤモヤ…
比較しないと言いつつ…
『モールス』は12歳の少年少女が互いの孤独と悩みを受け入れるラブストーリーに、少年がヴァンパイアである少女のために、硫酸を被った中年男のように生き血狩り殺人を繰り返してしていくであろうと言う含みで終わったと私は思っている。
ところが『ぼくエリ』は一瞬だが着替え中の少女の股間に“ボカシ”が入る。その前のキャンディを食べて具合が悪くなるシーンで、少女が「もし女の子じゃなくても好きだと思う?」と言う意味がこの“ボカシ”で正にボカされてしまう。
全体の流れからして、実は“ボカシ”の裏には実は“去勢をした痕跡”があるのではないかと想像するのだが、もしそうだとすると少年少女の恋愛でなく、性別を超えた愛であり、アイデンティティの問題に突入してしまう。
そうなると連続殺人を繰り返した中年男はペドフィリア(小児性愛者)であり、まだ少女の身体だったエリを強姦したことが原因で、エリが去勢してしまったのではと想像してしまう。去勢した後も中年男がエリと一緒にいるのは、エリの魅力だとすれば有り得る話。
ただ、これだと商業映画としては些かショッキングな設定になるから、中年男は大人しい設定にして、エリの魔性性や純粋性を描いたのかもしれない。
私はこの方が本作の世界観にピッタリだと思うのだが、だとしたらなぜ映倫はこのような愚かな“修正”を要求するのか。日本映画の未来の暗雲だ…
名作「キャリー」へのオマージュを感じてしまう…
知る人ぞ知る米国ホラー映画の傑作、ブライアン・デ・パルマ監督の『キャリー(1977)』に通じるものを感じた。天井に吊るされたバケツから大量の血が降り注いだキャリーと、体中から血を流し血まみれで生き血を吸うエリのビジュアル、
そして配役。オスカーを演じるコーレ・ヘーデブラントこそ、キャリーを演じたシシー・スペイセクへのオマージュさえ感じるのは考えすぎだろうか。
また、ラストの惨劇のカット割りも秀逸。水中キャメラでオスカーをフィックスの遠近をうまく使って殺りくを描き、安堵の表情のオスカーとエリのアップの切り返しで、敢えて血まみれになっているであろうエリの口元を映さず、すべてが終わったプールの俯瞰ショットへ続く滑らかな編集。「いじめ」と「特殊な能力」と言う部分でも、『キャリー』へのオマージュ、そして久々のホラー映画らしい映像美を堪能できた。
もし本作を先に観ていたら、『モールス』を「劣化コピー版」とか言っていたかもしれません。
特に映像への拘りが正に私好み。例えば、オスカーに恋愛感情が芽生えると同時に、キャメラはオスカーの真正面を捉えるようになりなったり、感情が高ぶるカットはピントの合う奥行きが狭い(視写界深度が浅い)画になり、不安や疑問がつのるカットはパンフォーカス(手前から奥までピントが合う)の画になったり。
何より本作は、観た人それぞれにエンディングを捉えられるのが良いところだと思います。原作未読ならなおさら楽しむべきです。『モールス』よりホラー度やスプラッター度は抑え目ですが、キリリとシャープな映像と、細かい画コンテによる編集も見所です。最近のヴァンパイア映画に嫌気が差していた私ですが、本作、かなりおススメです。
【当blog内関連記事】
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