映画「ブタがいた教室」 テレビ観賞 感想と採点 ※ネタバレあります
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6/17に日テレ『金曜ロードショー』で放送された映画『ブタがいた教室』(公式)鑑賞。原作もドキュメンタリーも未読・未見。
採点は、限り無く0点に近い、★☆☆☆☆(5点満点で1点)。100点満点なら、ブタたちの演技力に10点。
ざっくりストーリー
「先生はこのブタを育てて、最後にはみんなで食べようと思います」。こう自分が受け持つ6年2組の生徒28人に言い放つのは、小学校に赴任したばかりの新米熱血教師の星先生(妻夫木聡)。
ブタの飼育を通し、人が食べることを考え、命を見直そうとする実践教育。約1年間、子供たちは『Pちゃん』と名づけたそのブタをクラスの一員としてかわいがり、200キロになるまで育て上げる。
しかし、卒業式を間近かに最大の問題が。それは、星が生徒にPちゃんをどうするか決めろと言う。生徒たちの議論は「食べる」「食べない」論争に…
挑戦的で実験的な話題作だが、積極的にお勧めしない!
冒頭から俳優たちの妙な台詞の言い回しに違和感を覚え、最後まで奇妙な演出と脚本に何の共感も得られなかった本作。
脚本や演出は、挑戦的で実験的だし、公開当時何かと話題になったのを記憶しているが、私は予告編で退散したが、改めて積極的にお勧めしない。その理由は…
今回も相当辛口の感想なので、出演者や監督はじめスタッフのファンの方や、最初から1点の採点に異論のある方は、読まないで下さい。また、誹謗中傷コメントにはお答えしません。
「意見には個人差があるから」と寛大なお心の方のみ、採点理由も含めて、詳細はネタバレが含まれますので、ご理解の上、“続きを読む”よりお進み下さいませ。
テーマは素晴らしいが、実験教育の餌食となった小学生…
本作で前田哲監督が観客に伝えたかったテーマは『なぜ、人間は生きているのか?』だと思う。「食べる」「食べない」はそこへ辿り着くための入口であり、テーマと並行して小さくて狭い教室の中で、食はもちろん地球環境や資源やゴミ問題などの問題提起をもしたかったのだろう。
しかし、詳細は後述するが、本作は未熟で無鉄砲な新米教師の愚かな実験教育の餌食となった小学生たちの苦悩しか描かれていない。そこが非常に残念。
「そう言うが、お前にちゃんとテーマは伝わってるじゃないか!」と言う方もいるだろう。それは違う。予告編を見れば誰でも予想できる程度のことだ。それが伝わってこないのが問題なのだ。
フィクション脚本に、ドキュメンタリーの激論と言う制作手法
Wikiによれば、本作は、「子供たちの演技でない率直な議論を撮りたい」との意向で、スタッフ・大人の俳優が使う大人用と子役が使う子供用の2種類の台本が用意され、大人用には結末までが書かれているが、子供用にはせりふも結末も何も書かれていない白紙のものしか用意されていなかったそうだ。
結果的には、フィクションなのかドキュメンタリーなのか中途半端な仕上がりになっていた。本作は実話を基にしており、ドキュメンタリー番組もあったらしい(私は未見)。素の子供たちを見せたいなら、なぜ全編ドキュメンタリーにしなかったのか?映像作品としての「答えありき」のエンディングに導くなら、きちんとフィクションとして作り上げるべきだと思うし。
そして何より子役を使いクランクイン前に1週間の合宿をして撮影されたディベートのシーンのどこが「子どもたちの生の声」なのか疑問だが…
物語として考えた際の、星先生の矛盾…
星先生の実践(実験)教育でおかしな3つのこと。
1.卒業までと言う「期限付き」であること。
2.大人社会の便宜的な「多数決」を採用したこと。
3.二択しかないこと。
命や生きることを考える時点で最も馴染まない条件だと思う。そして最もおかしいのは、当初から「食べる」を前提の授業なのに、「食べない」選択肢を残したこと。小学校6年生に名前を付けさせ、愛情を注いで飼育させて、情が沸かない筈が無い。だからこそ「食べる」意味があるのに。
ここが、未熟で無鉄砲な新米教師の愚かな実験教育の餌食となった小学生たちの苦悩しか描かれていないと考える根拠。
高評価のレビューもわからないわけでない…
高評価が多くて驚くのだが、わからないわけでない。犬がいれば「かわいい」と声をかけ、野良猫がいれば餌を与え、子どもや動物は誰もが可愛がり、愛おしく純真無垢な存在だ信じて疑わない人たちがこの世の中には存在する。
きっと、このような人たちは、健気にブタを育て、真剣に議論する子どもたちの映像を見れば、条件反射の如く涙腺が緩むのは理解できるからだ。
それが悪いことだと思わないし、人の数だけ感情も感想もあって当然だし、何より良い映画と出会えて幸せだと思う。ただ、そうは思わない。それだけ…
数年前、南房総の知合いの酪農家のお母さんに「牛を育てながら牛肉を食べることについて、子どもたちどう話しているの?」と聞いたことがあります。
すると「うちで飼ってる牛や豚たちは人間が食べるためにお父さんやお母さんたちが、お仕事で大事に育ててるの。お仕事をするからお前にだって洋服だって買えるし、遊んだりできるのよ。だから、牛や豚を食べるときは大切に残さずに食べようね」と教えてると。
「それだけ?」と聞き返すと、「あとは子どもたちが答えを出せば良い」と。事実、その家の二人の子どもは、一人は獣医、一人は酪農をやりながら自家製アイスクリーム店をやっています。生きた授業ってこう言うものだと思います。
「食」を通していろいろ考えるなら本作以外にもたくさん素晴らしい作品があります。私が気に入った作品を4つご紹介しますので、参考になれば…
















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