初恋、ざらり (第12話/最終回・2023/9/22) 感想

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第12話/最終回『アナタがいると、ワタシが幸せ』の感想。
なお、なお、原作の漫画・ざくざくろ「初恋、ざらり」は、全話を既読。
岡村(風間俊介)と別れて数カ月後。有紗(小野花梨)は新たな職場で働き始め、男性社員から好意を寄せられる。ところが、思い出せばあふれてくる岡村と過ごした日々を忘れることができない。一方、事業所を異動し、営業の仕事に携わる岡村は、有紗への罪悪感をずっと心に抱え続けていた。そして、再会した2人は、‘普通’の垣根を超えて、互いの秘めた思いを語る。
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
原作:漫画・ざくざくろ「初恋、ざらり」
脚本:坪田文(過去作/コウノドリ1,2、おじさんはカワイイものがお好き。) 第1,2,6,最終話
矢島弘一(過去作/ハルカの光、警視庁・捜査一課長3) 第7~10話
池田千尋(過去作/プリンセスメゾン、大豆田とわ子と三人の元夫) 第3,8話
紡麦しゃち(過去作/) 第4,5話
藤沢桜(過去作/福岡恋愛白書17 おはようマドンナ) 第5話
上野詩織(過去作/夫婦が壊れるとき) 第11話
演出:池田千尋(過去作/プリンセスメゾン、大豆田とわ子と三人の元夫) 第1~3,6,8,10,最終話
七字幸久(過去作/私と夫と夫の彼氏) 第7,9,11話
倉橋龍介(過去作/リブスタ-Top of Artists!-、警部補ダイマジン) 第4,5話
音楽:元倉宏、小山絵里奈
オープニングテーマ:a子「あたしの全部を愛せない」
エンディングテーマ:ヒグチアイ「恋の色」
タイトルロゴ:黒木香(BayBridgeStudio)
チーフプロデューサー:祖父江里奈(過去作品/しろめし修行僧、シジュウカラ)
※敬称略
最終回の最大のポイントは…
いろいろ書く必要はないと思うが。
予想どおり、期待どおり、至極当然のハッピーエンドだ。
これ以外の着地点があるなら、むしろそっちを見てみたいくらだ。
とにかく、最終回の最大のポイントは。
今回の恋愛が…
有紗(小野花梨)にとっては、本当の “初恋” であり。
岡村(風間俊介)にとっては、人間関係の "ざらり" を身に沁(し)みて感じた… ということだ。
そこを脚本も演出も俳優も徹底的に表現してきた
演出の池田千尋氏がこだわったと想像するのが "後ろ姿"
当ブログらしく演出の観点から見てみよう。
タイトルの “初恋” と "ざらり" を表現するために、演出の池田千尋氏がこだわったと想像するのが “後ろ姿” だ。
例えば、有紗がひとりで階段を歩いている時に、妄想の桜が降ってくる。
その直後に、岡村の「有紗ちゃん!」と呼び止める声に振り返る有紗が "後ろ姿" だ。
その直後の川辺で語らう場面では、ふたりとも “後ろ姿”。
橋の上で岡村が有紗を抱きしめる時も “後ろ姿”。
ラスト、部屋でイチャイチャするふたりも “後ろ姿”。
一般的には “見せ場” みたいな場面では、ヒロインの表情を視聴者に見せるものだ。
そのほうが、ヒロインの気持ちが分かりやすいし、ヒロインに感情移入しやすいからだ。
しかし、ヒロインを “後ろ姿” にすると、表情が見えなくなる。
"後ろ姿"だからこそ、見えない部分を想像させる効果がある
掟破りな演出ではあるが。
今作は、有紗(岡村も)が表で見せる表情と、内面に潜めている感情が違ことをず~っと描いてきた。
だから、敢えて最終回は、視聴者に表情を見せないことで、有紗の心情を想像させると同時に。
有紗の表情まで想像させる作戦をとったと思う。
これによって、視聴者一人ひとりが、有紗の立場、岡村の立ち一に自分を置いて、我がことのように “ドラマ” に没入させる効果があったと思う。
もちろん、最終回まで、小野花梨さんが繊細な芝居で “有紗” を演じてきたから、「見せない演出」が可能だったことは言うまでもない。
有紗の自分を必要としている人のそばにいたいという優しさ
自分の居場所を、自分を必要としている人のそばにいること… と思い込んで暮らしてきた有紗。
だから有紗は、必要とされると頑張っちゃう。
でも、頑張ったところで、いろいろ失敗してしまう。
そういう中で、ある意味で自分という "個" の思いや存在を消して暮らすことを選択する。
しかし、やはり、有紗の中には、自分を必要としている人のそばにいたい… という優しさがあり、安心感を求める気持ちがどんどん膨らんでいく。
結果的に、岡村は “ずるい” やり方で、有紗とよりを戻すが。
ふたりの新生活は、お互いに相手を必要とする世界となった。
なかなか、深い結末だ、
当事者の気持ちに寄り添い尊重することの大切さ
当初は、軽度知的障害のある女性による純粋な恋を描いたラブストーリーとして始まった今作。
しかし、回が進むにつれ、更に最終回では、何かと心が “ざらり” としがちな今を生きる人たちの、ちょっと不器用だけどキュートな “ヒューマン・ラブ・ストーリー” になった。
私が、原作もこのドラマも好きなのは…
軽度知的障害のあるという状況は、当然無視できることではないが。
生まれ育った環境や性格や性質の違いによって、有紗と岡村の自己肯定感の低さ、恋愛に向き合う姿勢のもどかしさに、共感したからだ。
最終回で “ずるい” やり方で、二人は復縁するが。
(例えば見た目で)障害者にも健常者にもなれない(見られない)立場の人間ドラマ、恋愛ドラマとしては、とてもいい感じの締め括りだと思う。
障害者をかわいそうな人とか、逆に心がきれいな人などと描く "ドラマ" が多いが、ひと言で「障害者」と括ることが、そもそも現実とはかけ離れているということも描いた。
やはり、障害の有無にかかわらず、その人、当事者の気持ちに寄り添い尊重することが、いろんなことの第一歩になると思う。
※公式サイトの「障害」「障害者」との表記に準じています。
あとがき
障がい者を扱うドラマなので、もっと社会派寄りになるかと思いましたが、違いました。
逆に、昨今ありがちな簡単な美談、シンデレラストーリーで終わらせなかったのも、良かったです。
原作の漫画は、一味も二味も違うので、興味があったら読んでいただきたいです。
今期の "連ドラ" では、余裕でトップ3に入る秀作でした。
★本家の記事のURL → https://director.blog.shinobi.jp/Entry/18235/
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