王様に捧ぐ薬指 (第8話・2023/6/6) 感想

TBS系・火曜ドラマ『王様に捧ぐ薬指』
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第8話『今宵は織姫と彦星!!知られざる母の過去』の感想。
なお、原作の漫画、わたなべ志穂『王様に捧ぐ薬指』は未読。
綾華(橋本環奈)は、神山(坂東龍汰)の考えを知ろうとメッセージを送るが、返事はない。一方、智宏(利重剛)は系列ホテルの支配人・桜庭(北村匠海)を東郷(山田涼介)と対面させた。それから程なく、新田ホールディングスの会合が開催され、東郷と綾華、静(松嶋菜々子)らが出席するが…。
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
原作:漫画・わたなべ志穂『王様に捧ぐ薬指』
脚本:倉光泰子(過去作/ラヴソング、純愛レゾナンス、PICU) 第1,2,5,8話
関久代(過去作/パンドラの果実~科学犯罪捜査ファイル~) 第3,4,6,7,8話
演出:坪井敏雄(過去作/凪のお暇、カルテット、わたナギ、妻、小学生になる。) 第1,2,5,8話
泉正英(過去作/病室で念仏、TOKYO MER、ユニコーンに乗って) 第3話
宮崎萌加(過去作/差出人は、誰ですか?) 第4,7話
大内舞子(過去作/TOKYO MER、アトムの童) 第6話
音楽:G.B.'s Band(Prod. by GeG)(過去作/差出人は、誰ですか?)
主題歌:Hey! Say! JUMP「DEAR MY LOVER」
挿入歌:Awesome City Club「アイオライト」
ウエディング監修:ワタベウエディング
プロデュース:橋本梓(過去作/毒島ゆり子のせきらら日記、差出人は、誰ですか?)
勝野逸未(過去作/俺の家の話)
※敬称略
東郷と綾華のイチャイヤ&ラブラブを見たいのは分かるが…
きっと、今作の視聴者の多くが見たいのは “東郷と綾華のイチャイヤ&ラブラブ” なのだろう。
でも、そういうのを見たいなら、チャンネルはフジに合わせるか嘆願書でも書いたほうが良いと思う。
流石に、視聴率の基準が変わって(詳しいことは触れないが)最近は胸キュン&ラブコメが大量生産されて、人気俳優&タレントも10代から20代半ば以上になっているから、そう簡単に類似作品と差別化できないし、そもそも似たような作品が並んだら視聴者を取り合うばかりで建設的じゃない。
だから、TBSはじめ気づいている放送局は既にいろんな局が新機軸を模索しているわけで。
「ほかで当たったなら うちでも」なんてのは、この多チャンネル時代にはもう古いと思うが。
と、今作の感想とは関係ないコトを書いてしまった…
うまい具合にイチャイチャを盛り込んで "だらけ" にしない
と言っても、個人的には “ラブコメ” なんだから、もう少しイチャイチャシーンはあっても罰は当たらないと思うが(笑)
ただ、これまで以上には印象に残るシーンとしてはイチャイチャが効果的に使われていた今回。
従って、更に “ラブコメ” として楽しめてはいる。
というか、うまい具合にイチャイチャを盛り込んで “だらけ” にしないから、視聴者が焦らさせているわけで。
その辺も、作り込みとしてうまい。
金太郎と東郷のやり取りの見せ方がうまい!
いや、本当にうまいのは、エピソードの詰め込み方だ。
一見闇雲に盛り込んでいるように見えるが、高級おせち料理の重箱のようによ~く考えられて詰め込まれている。
例えば、金太郎(塚地武雅)が東郷(山田涼介)に本心を聞き出すシーン。
いつも書いているように、基本的に “回想シーン” は “物語” ではなく単なる “説明” に過ぎない。
だから、賢い脚本家なら入れない選択をすべきだが、今回は金太郎のセリフを2回に分けて、東郷の本音を強調するスタイルが採用された。
そもそも、東郷と金太郎のツーショット自体が珍しいから注目度は上がるわけで、そこで分割して、前段のやり取りを繰り返して編集し…
金太郎「娘への気持ちは ないんですか?
まったく なかったんですか?」
東郷「最初は ありませんでした
でも… 今の気持ちは本物です
私には 綾華さんしか いません」
とすることで、東郷の気持ちが強調される。
で、ここの脚本と演出が更にうまいと思うのは、このふたりのやり取りの同時間帯で何かをやっているはずの綾華(橋本環奈)や、回想の綾華をインサート(挿入)しなかったこと。
ここで挿入しちゃうと、主人公が東郷になってしまうから、綾華を抜きで描くのは得策だ。
更に、綾華を抜きにして、このシーンの直後を金太郎の背中に寄り添う桃子(りょう)にするから、今度は桃子と綾華が重なって感じ取れる、更に更に金太郎の「東郷さんとなら」のセリフも綾華の言葉に聞こえる… という二重構造の作戦も。
これ、誰でもやれそうだが、意外とできない作り込みだと思う。
今回の脚本は倉光泰子氏と関久代氏の二人体制
「意外とできない」と書いたのには、別の理由もある。
それは今回の脚本担当が、これまでは別々でリレーしていた倉光泰子氏と関久代氏の二人体制だからだ。
ふたり同時に書くときは、なかなか切り貼り状態になることが多い。
もちろん今回は、最終章直前回だから、一気にエピソードを盛り込んで、物語を膨らませる必要があるから二人体制で臨んだのだろう。
金太郎と桃子をふたりの結婚に絡めただけでも結構意外なのに、(退場するとは思っていなかったが)桜庭(北村匠海)と東郷の母・静(松嶋菜々子)の関係、更に巨大企業「新田ホールディングス」の未来まで匂わせてきた。
しかし繰り返しになるが、奇を衒うことなく手堅く “ラブコメ” のさじ加減をブレさせないから、あれこれと盛り込んでも、ラストのイチャイチャキスシーンくらいでバランスが合うのだ。
脚本も演出も、全体の均衡を考えて、方向性を明確にしているからこそできるのだと思う。
静の描き方だけは、今一つ解せないまま…
ただ、褒めるばかりではない。
今一つ解せないのが、静の扱い方、描き方だ。
原因は簡単、分かっている。
それは、静の本音がほぼ描かれていないから。
終始 “なんとなく” 陰で暗躍している “風” に見せているだけで、心が描かれない。
やはり、何らかの “邪心” による “企て” なら、もう少し見せるべき。
それこそ、時代劇のような勧善懲悪モノなら、悪代官の悪意が明確に見えた方が楽しいわけだから。
恐らく残りの数話を盛り上げるために “隠して” いるのだろうが、最終章でそれが功を奏するのかお手並み拝見としよう。
あとがき
静の描写に疑問があるので、どの辺かは分かりませんが、作り手たちは “今作のコンセプト” が明瞭にあって、それを信じて突き進んでいるんだとは思います。
それがなんなのか、視聴率云々は別にして、他と違う “ドラマ” を作りたいという気持ちを汲(く)みたいです
★本家の記事のURL → https://director.blog.shinobi.jp/Entry/17967/
【これまでの感想】
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