2夜連続スペシャルドラマ「キッチン革命」 (第1夜・2023/3/25) 感想

テレビ朝日系・2夜連続スペシャルドラマ「キッチン革命」
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美味しい食事を、明るいキッチンで…!【食の革命】で日本を変えた女性の物語を2夜連続で放送!第1夜は、料理を数字で表そう?【レシピ】を生んだ女性医師の物語!、第2夜は、女性建築家とチームが一丸となり、ステンレスの流し台を備えたダイニングキッチンを発明する!の感想。
第1夜
綾子(葵わかな)は、母・房枝(石田ひかり)を病気で失った経験から、父・茂雄(杉本哲太)の反対を押し切り、医者になる。
花園教授(渡部篤郎)がいる医院に入局後、先輩医師・昇一(林遣都)と共に胚芽米の研究を始める。
当時、脚気は有効な治療法が確立されていなかったが、ビタミンB1が多く含まれる胚芽米に注目。綾子は、叔母・フネ(筒井真理子)に胚芽米を炊いてもらい、おいしく炊くための条件を数値化していくが…。
第2夜
昭和30年、公団住宅をつくるにあたり、設計課長・本郷義彦(成田凌)は日本初の女性一級建築士・浜崎マホ(伊藤沙莉)にアドバイザーを依頼。
マホは、それまで北側にあった寒い台所を南側に置き、快適なものにしたいと話す。
さらに、“狭さに挑戦する”ことを決意。妻・栄子(中村アン)のためにも素敵な台所をつくりたいという本郷と共に、住宅公団副総裁・鈴木仙吉(北村一輝)の反対にあいながらも理想の台所づくりのため奔走するが…
---上記のあらすじは[公式サイト]より引用---
原作:なし
脚本:羽原大介(過去作/マッサン、ちんどんどん)
脚本協力:新井静流(過去作/羽原大介・作「ちんどんどん」脚本協力)
演出:豊島圭介(過去作/妖怪シェアハウス、新・信長公記~クラスメイトは戦国武将~)
音楽:梶浦由記(過去作/花子とアン、作詞・作曲「炎」(LiSA))
寺田志保(過去作/宮部みゆきミステリー パーファクト・ブルー)
※敬称略
2夜連続スペシャルドラマ「キッチン革命」の企画について
この放送枠は過去に、戦後初のCA(キャビンアテンダント)の挑戦と奮闘を描いた『エアガール』(テレ朝/2021)、女子教育の先駆者の青春を綴った『津田梅子~お札になった留学生~』(テレ朝/2022)を放送してきた。
そして2023年は、戦前から戦後にかけての時代に “食に関わる革命” で日本を変えた “実在した女性2人がモデルの女性たち” を2夜連続で描く本作。
第1夜は、まだ家庭料理の作り方が明文化されていなかった時代に、誰でも美味しく作れるレシピ作りに奮闘し、栄養学の普及に尽力、香川栄養学園(現在「女子栄養大学」も経営)の創始者で医師の‘香川綾’がモデル)(1899年3月28日 - 1997年4月2日)のフィクション。
第2夜は、公団住宅に採用されたステンレス製の流しを使用した “システムキッチン” を始め、狭い日本の住宅に食事と台所の両方に椅子式文化を採用した “ダイニングキッチン” を発明した日本初の女性建築家‘浜口ミホ’がモデル(1915年3月1日 - 1988年4月12日)のフィクション。
モデルとなった‘香川綾’さんと‘浜口ミホ’さんについて
‘香川綾’さんの功績で私たちの身近なのは「四群点数法」。
「四群点数法」とは、食品を栄養素の特徴別に4つのグループ(食品群)に分け、各グループの食品をどのくらい食べたらよいかという食事のルールを分かりやすく示したもの。
また、「四群点数法」でよりバランスよく食べるためには定量化(正しく軽量する)必要で、独自に「計量カップと計量スプーン」を開発し一般家庭への普及に尽力した。
‘浜口ミホ’さんは、「ダイニングキッチンの生みの親」といわれている。
提唱していたのが、どんな世帯でも女中さんがいなくても快適なリビング(居間)を作ろうという「メイド・レス・リビング」の考え方で、女性(妻・主婦)が女中のような扱いが当然だった当時の日本の封建制の打破に立ち向かった。
その「メイド・レス・リビング」が発展し、まだまだ裏方的存在だったキッチン(台所)をダイニングスペース(食事をする場所)とくっつけることで表舞台に昇格させたのが “ダイニングキッチン” で、日本の住まいや家族や家事のあり方に大きな影響を与えた。
なぜ、この二人を一緒にドラマ化したの?
なぜ、今作の “モデル” に言及するのかというと、私が「なぜ、この二人を一緒にドラマ化したの?」と思ったからに他ならない。
だって、確かに大きな括りでいえば、二人とも「日本の台所を変えた女性」ではあるが、‘香川綾’さんは “日本人の健康意識を変えた人” であり、‘浜口ミホ’さんは “日本人の生活様式を変えた人” で、「日本の台所を変えた女性」ではあっても微妙に違うからだ。
料理記者‘岸朝子’を加えてほしかった…
だから、私が「日本の台所を変えた女性」として選ぶなら、‘香川綾’さんでなく… 料理記者‘岸朝子’だ。
‘岸朝子’ さんといえば、多くの人は90年代に大人気番組『料理の鉄人』(フジテレビ系)のレギュラー審査員で、「料理記者歴40年」の肩書きで有名になり、試食の際の「おいしゅうございます」の評価が一大ブームになったことでご存知だと思う。
実は、‘岸朝子’ さんの “料理の師” が‘香川綾’さんなのだ。
そして、‘岸朝子’ さんの功績は、師である‘香川綾’さんが考案した料理レシピで使用される「大さじ・小さじなどの分量に規定」の普及に尽力したこと。
簡単にいえば、香川先生が考案した専門的な料理レシピを、一般家庭に普及させたのが岸朝子さん。
その岸さんは、香川先生がその後に創設にかかわった女子栄養大学の出版社に入社し、1968~78年に『栄養と料理』の編集長を務めた。
だから、香川先生を描くなら香川先生と岸朝子さんを描いたほうがよかったと思う。
まあ今作は「夫婦の物語」を描きたかったようだから、ボツになった可能性はあるが。
因みに、ドラマ『ヒロイン誕生!朝ドラな女たち』(NHK/2022年11月14日)に『料理記者 岸朝子×森迫永依』として放送されている。
脚本が羽原大介氏の"食を扱うドラマ"に粗探しは意味がない
さて、前口上が長くなったので、短めに今作(第1夜)の感想を書いてみる。
大前提として、『キッチン革命』というタイトルのドラマを、脚本家・羽原大介氏が書いている時点で、そもそも今作において特に “食” や “食文化” に関する粗探しや重箱の隅を楊枝でほじくる行為は無駄なのだ。
ドラマ好きの人なら、そして当ブログの常連様ならご存知かもしれないが。
羽原氏は「#ちむどんどん反省会」がブームになった朝ドラ『ちむどんどん』(NHK/2022年度前期)の脚本担当だ。
因みに今作の脚本協力である新井静流氏も『ちむどんどん』では羽原氏の脚本協力をしている。
そして、羽原氏は、NHKドラマ・ガイド『ちむどんどん Part1』(NHK出版)に収録されている、主演の黒島結菜さん、脚本家の羽原大介氏、制作統括の小林大児氏、チーフ演出の木村隆文氏による座談会の中で、羽原氏が次のように語っているのだ。
ここで白状しますと、僕たちおじさん3人は料理の知識が全くないんです
材料も調理法も分からないので、脚本に「××を××する」などと書いておいて、あとでご指導いただくんです(笑)
羽原氏は「ヒロインがコックさんになる朝ドラ」を書くのに、当初から “食を冒涜して” 作品制作に臨んでいたのだ(怒)
そして想像の域ではあるが、『ちむどんどん』と今作の脚本は同時進行していた時期があると思う。
だから、脚本協力が必要だったとも思う。
従って、食に関する無用で無駄な粗探しの類はやらない。
『ちむどんどん』と同じで、一切の過程が描かれない…
で、今作を頑張って見終えた率直な感想は…
やはり『ちむどんどん』と同じで「一切の過程が描かれない」に尽きると思う。
「○○を始めました」の次は「○○になりました」が連続するだけ。
「起承転結」の「承と転」が欠落している、ただの箇条書きの羅列で、簡単に言っちゃえば「ほぼ年表」(苦笑)
序盤の「母との思い出、母からの教え」はサクッと終わっちゃうし、中盤の「栄養学の恩人とのやり取り」もサクサクっと箇条書き、それ以降の「脚気治療で深めた夫婦愛のくだり」は取って付けたよう。
で、無理やりに主人公‘香美綾子’役を葵わかなさんから薬師丸ひろ子さんに切り替えたところで、ほぼ統一性を感じない。
いろいろな “大人の事情” があるにしても、もう少し “俳優” 以外で魅(見)せてほしかった。
あとがき
にわか野球、にわか WBCファンの私ですが、決勝戦は放送丸々 Blu-rayディスクに保存したくらい感動しました。
決勝戦を締めくくった大谷 VS トラウトの “38秒” に世界のファンが「野球の神様しか、あの名場面の脚本は書けない!」と言わしめましたよね。
そんな<歴史に残る名作ドラマ>を見て感動が冷めやらぬ土曜日の夜に “これ” を放送されても… って、感じでした。
子役の古川凛さん(『カムカムエヴリバディ』(NHK/2021年度後期)で、幼少期の‘るい’役も)を含めて、朝ドラ出演者オールスターズって感じでしたね。
まあ、「時代を切りひらいたドラマチックな女性の生きざまを描く」の “朝ドラ” なので、テレ朝でも朝ドラ風を作りたいってことなんでしょう。
おっと、描写が箇条書きで表面的なのも、敢えての “最近の朝ドラのリスペクト” かも(失笑)
個人的にはモデル自身のキャラも人生も功績も、「第2夜」のほうが今作のテーマに合致していると思うので、朝ドラ『虎に翼』(NHK/2024年度前期)のヒロイン役に決定している伊藤沙莉さんの “プレヒロイン役” に注目しようと思います。
★本家の記事のURL → https://director.blog.shinobi.jp/Entry/17791/
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