すきすきワンワン! (第6話・2023/2/27) 感想

日本テレビ系・シンドラ『すきすきワンワン!』
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第6話『元ネコ vs 元イヌ』、EPG欄『犬と猫 狭間で揺れるダメ男』の感想。
てん(浮所飛貴)に対し、元飼い犬としての想いだけに止まらない、“愛”を感じ始めた炬太郎(岸優太)。ある日、炬太郎の元に突然現れたのは、高校生の時に知人から一時的に預かったセレブ猫・エリザベスの記憶を持つ女・エリー(松本まりか)!好き勝手なエリーに敵対心と嫉妬心を抱くてん。元イヌ、元ネコとの三角関係にたじろぐ炬太郎は、エリーから「私の会社で働かない?」と誘いを受ける...。
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
原作:なし
脚本:水橋文美江(過去作/朝ドラ「スカーレット」、死にたい夜にかぎって、古見さんは、コミュ症です。)
演出:中島悟(過去作/デカワンコ、世界一難しい恋、俺の話は長い、新・信長公記) 第1,2,5,6話
丸谷俊平(過去作/もみ消して冬、俺の話は長い、#リモラブ、ハコヅメ) 第3,4話
音楽:青木沙也果(過去作/この初恋はフィクションです、ユニコーンに乗って)
主題歌:King & Prince「We are young」
制作協力:オフィスクレッシェンド(過去作/世界一難しい恋、もみ消して冬、俺の話は長い、ジャパニーズスタイル)
※敬称略
演出における「編集とカメラアングルの妙」について
今回も、演出を中心に脚本やその他のことを綴っていこうと思う。
最初から、メッチャ細かいことで恐縮だが。
演出における「編集とカメラアングルの妙」について書いてみる。
冒頭で、天(浮所飛貴)が炬太郎(岸優太)に和菓子屋の話をして、炬太郎が自転車に乗って帰るシーンの2カットに注目。
まず、ちょっとした違和感に気づいただろうか?
下記の2つのカットの編集だ。

©日本テレビ

©日本テレビ
1つ目は、前のカットのカメラ位置は「いつもと同じくらい」の低い位置で固定されてるのに、次のカットは「地面ギリギリ」まで下げた位置で手持ちカメラになっていること。
2つ目は、炬太郎の動作がカットでつながっていないこと。
前のカットの炬太郎は、やっとサドルに座って一漕(こ)ぎ目をするかしないかまでで終わり。
しかし次のカットの炬太郎は、サドルからお尻を上げて立ち漕ぎしている。
これ、普通に撮影しようと思えば、岸優太さんに同じ動作をやってもらうだけだから簡単なことだ。
だとすると、<あえて>作っている違和感ってことになる。
カメラが「誰の視点であるか?」を変化させるための工夫
では、なぜ、そんなことするの?
それは、前のカットまでのカメラは「視聴者目線」だけど、次のカットは「視聴者目線でない」ことを印象付けるためだ。
そう、この続きを見れば、目線の持ち主が炬太郎が高校生の時に知人から一時的に預かったセレブ猫 “エリザベスさま” だと分かる。
でも、この時点での作り手の立場は「視聴者とも、犬のてんとも違う」と思わせて、先の展開へ興味を引きたいから、あえて違和感を作ったのだと思う。
こういう、わざと違和感を作る演出はよくある手法だが、やり過ぎると監督や俳優たちの「ミス」に見えちゃうから意外と繊細な配慮が必要なのだ。
もちろん、今回は成功している。
いつもの夜とは違った雰囲気を創出する目的で青い影を強調
当ブログの感想を読んでくださっている人なら、下図のシーンにはとっくに注目したのでは?

©日本テレビ
今回の演出はメイン監督の中島悟氏だから、例の枝が障子窓の外に映っていた。
で、注目すべきは光の色だ。
今回は、青色を強調した照明で枝の影を映している。
恐らく、猫には何となく怪しい雰囲気があって、猫には幽霊みたいな動作の特徴があるともいわれているから、やはり怪しい夜の雰囲気と言えば、ハロウィーンのイメージにも通じる「青」や「紫系の青」の夜。
今回も、いつもの夜とは違った雰囲気を創出する目的で、青い影を強調したと思う。
詩人≪萩原朔太郎≫の詩集『青猫』をご存じだろうか?
で、ここから妄想(笑)
実は、昭和のころに活躍した詩人に≪萩原朔太郎≫と言う人がいる。
既に「朔太郎(さくたろう)」と「炬太郎」に何やら縁を感じるわけだが。
その朔太郎の有名な詩集のタイトルが『月に吠(ほ)える』と『青猫』の2編。
どちらも、人生における平穏、長閑、怠惰、不安定さ、倦怠などの情や情けをうたっているのだ。
もしかすると、脚本の水橋文美江氏のヒントになっていたのかもしれない(妄想ですが)
効果音による2か所の"ミスリード"が効果を発揮している
今度は、以前にも書いた効果音のお話。
今回は、雪井家に湊エリー(松本まりか)がやってくるシーンで、2つほど。
1つ目は、エリーは登場しないが、エリーと思われるキャラが雪井家の表札を見ているカット。

©日本テレビ
ここ、よく見ると、カメラを画面の右から左へ影が横切る、と同時に撮りの羽が羽ばたく音が重なる。
当然、前段のハロウィーンのイメージにも通じる「コウモリが飛ぶ怖い夜」を連想させている。
もう1つが…

©日本テレビ
最初の吊り橋(ロケ地は、東京都あきる野市にある「はるか橋」 ※Googleマップ)から玄関先までのカットではわずかに風は吹いているがマイクでは録音されないレベルで、実際に現場での小鳥のさえずりなどが聞こえる。
しかし、エリーが玄関前に立って中を覗き見るカットでは、後ろの木々が一切揺れていないのに “風の音” がする。
当然、演出上の効果音として後付けされているものだが。
これが、怪しげな劇伴と相まって、この時点では騒動の火付け役的な危険なキャラクターであると、ミスリードしている。
ちなみに、「ミスリード」は「視聴者や読者を意図的に違う方向に導くこと」。
ミスリードをうまく使うと、最初に「いかにも…」って感じの印象を植え付けて、後半で「そうだったの!」と驚きを与えることができる。
しかし、簡単なようで実際に使うのは難しく、最も失敗しやすいのは「そうだったの?」と予想や期待を裏切らない展開しか見せられない時だ。
普遍的なテーマを扱った今作らしい素敵な台詞
今回は、次回(第7話)次第ではあるが…
エリーは単純に “二人の仲を引き裂く悪役” ではなく…
例えば、今だけを見て判断しないとか、自分だけの判断基準になる物差しを心に持っているとか、心底から真面目な性格だとか、今まで見せてこなかった主人公の本質的なもの事や将来への考え方を視聴者に提示する役割があったと思う。
そして、このことを証明したと思うのが、次のエリーの台詞だ。
エリー「過去が 今を救うことだってある」
炬太郎が一所懸命に書いた卒論を過去として描かれた台詞だが、更に高校時代に3か月間だが可愛がってくれた “炬太郎への恩” のこともさしているわけだ。
過去が現在、そして未来につながっており、影響を与え続けるという普遍的なテーマを扱った今作らしい素敵な台詞だと思う。
台詞、イントロ、台詞がごちゃごちゃしないような編集
最後に「なるほどね」と思った部分。
それは、エンディングの主題歌とスタッフ・クレジットのこと。
いつものことっていえば、いつものことだが。
主題歌・King & Prince「We are young」が入るタイミングがいい。
下記の、てんが「ヤダ!」を連呼する時に「雪井炬太郎」のクレジットが入って…

©日本テレビ
「てん お前 好きな人 いるんだろ?」の炬太郎の台詞終わりで半拍だけ間を空けて主題歌が入ってくる。
「We are young」はイントロがピアノのワンタッチしかないから、ピアノの分の間を空けて、てんの「何? 急に…」を続けてる。
ちゃんと、台詞、イントロ、台詞がごちゃごちゃしないように編集されている。
この後は、岸優太さんの畳み掛ける台詞と芝居、それを受ける浮所飛貴さんの演技と言葉少なめに心情の変化をする天(てん)を見せていくわけで。
微妙にクレジットのタイミングも工夫されている
更にここで「なるほどね」って思ったのは、「演出 中島 悟」のクレジットが、岸さんと浮所さんのアップに掛かっていないこと。
厳密にいうと、てんの「ばか~!」に僅かに引っ掛かっているが、ここは主演、主役との差別化の意味もあるから悪くない。

©日本テレビ
今作は毎回 CMと予告編をカットすると本編が「23分10秒間」で、演出のクレジットは「22分45秒~23分00秒」までに入るから、内容、演技を壊さない、分断しないように、微妙にクレジットのタイミングも工夫されていると思う。
もちろん、今作に限った編集ではないが、30分という短い放送尺のドラマだと、1秒ズレただけで印象が大きく変わることへの配慮だと思う。
櫨山裕子Pの"岸優太の芝居は「ビビッド」"に共感!
第3話の感想に書いた、『岸優太さんや監督がおっしゃる「生感」を考えてみる』を覚えていらっしゃるだろうか?
その時には私は「生感」を、“本能的、感覚的、動物的に感じるもの” と解釈してみた。
そしたら、今朝に次のネット記事を見つけた…
『すきすきワンワン!』櫨山裕子P、岸優太の芝居は「ビビッド」主人公に起用で設定にも変化【インタビュー】 | ORICON NEWS
「芝居は、周りの人の気持ちや感情をどう受け止めるかというところが一番大事だと思っていて、岸さんは、ものすごく相手のセリフをよく聞く人だなという印象です。割とポンポンとセリフが飛び交うドラマなのですが、岸さんは予想以上に、ものすごく一回前の人のセリフを飲み込んでからセリフを言う。ちょっと驚いたというか、いい意味で炬太郎のキャラクターが、予想より真面目な人になっていました。
「現場では、生活感とかリアリティーを大事にしていたので岸くんは“座長感”というよりは、なんかこっちの空気にセリフを入れて飛び込んでくるみたいなイメージです。
これを読んで、ハッとした。
「ビビッド(vivid) 」とは、いきいきしたさまや、真に迫っているさまのことを指す。
そう、これこそ、“本能的、感覚的、動物的に感じるもの” であり、「生感」ではないかと。
そして、「炬太郎のキャラクターが、予想より真面目な人になっていました」についても、撮影現場において 岸さんの存在が “架空の炬太郎” に影響と与えているってことなのだ。
この辺は、冒頭のてんとの電話を切って、背中を丸めて自転車をこぐ炬太郎からにじみ出る “真面目さ” からも容易に分かると思う。
あとがき
ドラマや映画で、「B級ブサメン」や「天然のゆるキャラ」を、イケメンが演じることってありますよね。
もちろん、「あの人がB級やるの?」とか、「あの人がダメ男を?」とか。
演者さんのルックス要素を逆手に利用した配役で、まあありがちだし、ベタなのでまあまあ成功します(笑)
でも、一方で「全然、B級男に見えない!」とか、「イケメンの私がブサイクを演じてますが、何か!?」的に鼻につく人もいますよね。
でも、岸さんって、今作のクズ男の炬太郎を始め、『お兄ちゃん、ガチャ』(日テレ/2015)のガチでカッコいいトイ / 御手洗明彦 役もできちゃうし、『ナイト・ドクター』(フジ/2021)の 深澤新 役みたいなフツーの人もこなしちゃう。
<俳優・岸優太>の魅力って、全く「キンプリのリーダーでバリバリのアイドルの岸ですけど… 感」は無いけど、「岸優太じゃないとできない… 感」はあるって感じ… ここなんですよね。
誰が演じても似たような感じになるのは面白くないんです。
でも、岸さんの演技には、いい意味で私の意表を突くものが多くて、それが演じるキャラクターの個性になる。
例えば下記の「そこの番犬!」って言われたのは天なのに、炬太郎がビビっちゃってる。

©日本テレビ
両手を股間の前で合わせて、一歩下がってクッションの上にあがって、ビビりあがっている感じを醸し出しているのです。
こういうお芝居が、さらっとできちゃうし、自然に見えちゃうのが<俳優・岸優太>の魅力なんですよね。
これ以上書くと更に長くなるので、今回はこの辺で…
SNSで当ブログのことを紹介してくださる皆様へ
ガッツリと転記転載しない範囲でしたら、紹介してくださって構いません。
一言、非公開コメントで書き込んでくださると、もっと嬉しいです!
こんな投稿もあります!
拍手コメント返信(2023/2/28):「すきすきワンワン!(第6話)」
拍手コメント返信(2023/2/28)その2:「すきすきワンワン!特集」 ※オッサンが岸優太さんを熱く語ります!
★本家の記事のURL → https://director.blog.shinobi.jp/Entry/17716/
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