罠の戦争 (第5話・2023/2/13) 感想

関西テレビ制作・フジテレビ系・新 月10ドラマ『罠の戦争』
公式リンク:Website、Twitter、Instagram、YouTube
第5話『総選挙が開幕!下剋上で真相を暴く』、ラテ欄『弱き者の下剋上!総選挙スタート!暗躍する総理の狙いは!』の感想。
総選挙に立候補する亨(草なぎ剛)の対立候補として、背後に首相の竜崎(高橋克典)がいるジャーナリストの保奈美が出馬することになった。亨は竜崎が自分を永田町から排除しようとしているのではないかと考える。公示を前に可南子(井川遥)も選挙事務所に顔を出すようになり、眞人(杉野遥亮)らも準備に追われる中、亨は保奈美の陣営から嫌がらせともいえる仕打ちを受ける。
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
原作:なし
脚本:後藤法子(過去作/銭の戦争、嘘の戦争、都市伝説の女)
演出:宝来忠昭(過去作/嘘の戦争、姉ちゃんの恋人、家政夫のミタゾノシリーズ) 第4,5話
三宅喜重(過去作/銭の戦争、嘘の戦争、10の秘密、姉ちゃんの恋人) 第1~3話
音楽:菅野祐悟(過去作/半分、青い。、テセウスの船、危険なビーナス、日本沈没-希望のひと-)
主題歌:香取慎吾×SEVENTEEN「BETTING」
ナレーション:柳沢三千代(過去作/アニメ「それいけ!アンパンマン シリーズ」カレーパンマン声優)
プロデューサー:河西秀幸(過去作/銭の戦争、嘘の戦争、GTOシリーズ)
三宅喜重(過去作/銭の戦争、嘘の戦争、10の秘密)
※敬称略
"フィクション" だから… だと思うが
恐らく世間では、「あっという間の1時間!」とか「草彅さんの演説が心に刺さった!」とか。
逆に、「選挙が軽すぎる!」とか「おしゃべり好きの選挙スタッフが最後にもいた?」とか。
高評価はともかく、設定や展開をリアルと比較したところで、所詮 “フィクション” だから… だと思うが。
"スパイ"で「戦争」のスケール感を創出してきたか!
個人的に「なるほどね」と思ったのは…
主人公が選挙に当選するのは既定路線だろうから、“連ドラ” としては一つの通過点に過ぎない「選挙」に、どのように “罠の戦争” を組み込んで魅せてくれるか? の一点だったのだが。
主人公の正々堂々と戦う姿勢を描きつつ、裏で暗躍するラスボスを感じさせつつ、選挙の現場では “スパイ” を “罠の戦争” の武器として描いてくるとは!
「なるほどね」と思ったのは、“スパイ” の存在を具体的に見せない上に、対立候補の有馬保奈美(真田麻好美)を主人公に絡めずに両者とも “所詮は民政党の数多な議員の一人に過ぎない” ことを強調して、闇の大きさを感じさせたこと。
やはり、タイトルに「戦争」が含まれているのだから、スケール感の創出は重要なことだと思う。
宝来氏のカメラワークで魅せるグッとくる描写… 3選!
さて、他のブログでは書かないようなことを今回も書こうと思う。
今回の演出担当は前回に続いて宝来忠昭氏。
今作のプロデューサー兼メイン監督の三宅喜重氏の演出とは微妙に異なる。
そこで、私が宝来氏の演出で好きな、ちょっとしたカメラワークで魅せるグッとくる描写を、今回は3つに絞り込んでサクッとご紹介したい。
病床の息子・泰生の"ピンボケ"のカットの使い方
1つ目は、序盤で息子・泰生(白鳥晴都)の見舞いに来ていた鷲津亨(草彅剛)が病室を後にした「病室に一人いる泰生の引きのカット」だ。
亨が「早く起きろよ 泰生」と告げて退室して “このカット” になり、直後に泰生の指がピクっと動くカットがつながるわけだが。

©関西テレビ・フジテレビ
よく見ると、カット頭は亨にピントが合っているから泰生はフォーカスがぼけていて、亨が退室すると泰生にス~っとピントが合い、カットが切り替わって指のアップ)になる。
多くの人は、この “ス~っとピントが合う” によって「泰生に何かが起こりそう…」という予感がしたと思うのだが、これがよいのだ
蛯沢が写真を取り付ける時の「アクションつなぎ」
2つ目は、中盤で「鷲津亨選挙事務所」を設置するシーンで、蛯沢眞人(杉野遥亮)が壁に何やら取り付けているカット。

©関西テレビ・フジテレビ
取り付けているのは、のちに亨と総理の竜崎始(高橋克典)とのツーショット写真だが、蛯沢の背中で一度隠して「アクションつなぎ」という撮影・編集手法で、蛯沢がどくと写真が引きで見える… との構成だ。
ここ、なんでよいのか?
普通にやるなら、蛯沢がどいた直後に写真のアップをつなげばいいだけのこと。
しかし、演出意図は亨が写真を見た時の心情描写だから、亨の目線で写真のアップを入れたい。
だから、その前に写真のアップは入れなくない。
でも、視聴者には写真の存在を印象付けておく必要があるから「アクションつなぎ」をやったのだ。
「アクションつなぎ」とは、前と次のカットで “同じ動作(アクション)” を若干ダブらせて編集する技法のこと。
普通は、アクション映画なので “そのアクション” を強調させるときに使用する手法だが、今回はのちの展開のために「蛯沢に怪しさを持たせる」効果のために利用しているのだ。
そう、蛯沢は総理陣営のスパイかも? と…
選挙演説中の亨の"たすき"のピン送り
3つ目は、終盤で選挙カーの上で選挙演説をする亨のカット。
ここでの注目は、亨の “襷(たすき)” のピン送り。

©関西テレビ・フジテレビ
最初、亨が演説の言葉が出てこない危うさなどを “文字のピンボケ” で表現し、効果音で緊張感を煽って、文字にピントが合った瞬間に「私は」となって、カットが亨のバストショットになって「ずるい大人でした」のどんでん返し。
「キーン」という効果音とピン送り(ピントが自在に合わせること)を効果的に演出している。
もう少し解説すると、実はカット頭は「聴衆にピントが合って」おり、次第に「たすきにピントが合う」のだ。
これによって、聴衆の心が「私は」と「ずるい大人でした」の “間” で立候補者・鷲津亨に興味を持つことが演出できるのだ。
まあ、上記の3つの他にも、素敵な演出はあったが今回は3つだけ。
興味をもったら、見逃し配信で確認して、撮影現場の思いを感じていただければと思う。
あとがき
もう少し選挙の当選までで盛り上げてもよかったかもしれませんね。
でも、盛り上げるのは簡単ですが、あまり盛り上げてしまうと “連ドラ” として「先が見たくなる」がむしろ弱まる可能性もありますね。
だって、人は刺激に慣れますから(苦笑)
じわじわ、じりじり… が、ちょうどいいと思います。
お粗末な感想でした…
★本家の記事のURL → https://director.blog.shinobi.jp/Entry/17673/
- 関連記事