6秒間の軌跡~花火師・望月星太郎の憂鬱 (第4話・2023/2/4) 感想

テレビ朝日系・土曜ナイトドラマ『6秒間の軌跡~花火師・望月星太郎の憂鬱』
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第4話の感想。
初の個人向け花火の依頼に落ち着かない星太郎(高橋一生)。客の片山(高井佳佑)は職場にパート勤務で入った神谷(牛尾茉由)に運命を感じ、花火の下で交際を申し込みたいという。思い込みの激しい片山の告白が成功するとは思えない星太郎だが、「片山の望む花火を打ち上げることが仕事」だとひかり(本田翼)に諭され、花火作りを開始。航(橋爪功)も見守る中、当日を迎える。
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
原作:なし
脚本:橋部敦子(過去作/救命病棟24時1,2、僕シリーズ3部作、僕らは奇跡でできている)
演出:藤田明二(過去作/復讐法廷、エイジスハラスメント、やすらぎの郷) 第1~3話
竹園元(過去作/セミオトコ、モコミ、ザ・ハイスクール ヒーローズ、となりのチカラ) 第4話
松尾崇(過去作/ドラマSP「エアガール」の助監督)
音楽:森英治(過去作/モコミ~彼女ちょっとヘンだけど~)
音楽プロデュース:S.E.N.S. Company(過去作/トットちゃん!、モコミ~彼女ちょっとヘンだけど~)
主題歌:ケツメイシ「夜空を翔ける」
エグゼクティブプロデューサー:内山聖子(過去作/ドクターX 6,7、妖怪シェアハウス1,2、七人の秘書、ザ・トラベルナース)
※敬称略
映像作品として、雰囲気がかなり変わった
内容に入る前に…
まず驚いたのが、映像作品として雰囲気がかなり変わったこと。
クレジットを見たら、演出担当が藤田明二氏から竹園元氏に交代していた。
そもそも作風がかなり違うお二人だから切り替えの時をちょっと心配していたが。
全体的にワンカットの尺が短いし、キメのカットは別撮りでインサートだし、似たような画角の画が続くし、室内の色合いや明るさも微妙に違う。
それこそ、“連続ドラマ” とはいえ一人で演出するケースの方が稀だから気にすることはないのだが。
あくまでも個人的な印象は、第3話まではゆったりと時間と動きが流れる会話劇を切り取った叙情的(登場人物の心情などがじわじわとにじみ出てくる感じ=今風にいえば “エモい” か?)だったのが…
第4話から出来事(騒動など)の描写が重視された やや叙事的(現象を客観的に提示して内面は観客に委ねる感じ)な作風に感じられた。
まあ、今回は脚本的に「花火師としてのお仕事パート」と「不思議な三人同居パート」の二本立てに、「回想シーン」もあったため、少々詰め込み過ぎだったのは否めないから、サクサクと描く必要はあったと思う。
実は "言葉" ほど曖昧な意思伝達手段はないよ
さて今回は、ひかり(本田翼)の次の台詞が全編のキーワードになっていたように思う。
ひかり「まあ 言葉にしなくても
2人だけが わかり合ってる世界ってもんが
あるんでしょうね」
それのイントロダクションとして、冒頭の “シミ” の話。
冒頭の星太郎(高橋一生)の「水森さんに シミ 見つけられちゃってさ…」 で始まった航(橋爪功)とのコミカルなやり取りだ。
航「シミ?」
星太郎「あれだよ」
航「あれ?」
星太郎「それじゃねえよ。そっちだよ」
航「ああ これか」
もちろん、「座布団のシミ」という今回の重要な回想シーンへのネタ振りになっているわけだが。
その後の夕食時のひかりの「どっちの『やばい』ですか?」や「ああいう感じって?」に通じる、同じ単語でも話す人やタイミングで受け取る側の意味が変わってくる面白さや難しさが今回のベースになっているように思う。
別の言い方をすれば、「実は “言葉” ほど曖昧な意思伝達手段はないよ」ってこと。
そう、ことわざ「目は口ほどに物を言う」を今回は映像化して “ドラマ” に盛り込んでいたのでは? と思う。
貴広と佐和の会話の描き分けが、実に計算されている
そう確信したのは、個人向け花火客の第1号である片山貴広(高井佳佑)が神谷佐和(牛尾茉由)に打ち上げ花火をバックに告白するシーンだ。
視聴者は、花火の音で二人の会話は聞こえないが、二人の唇の動きや表情や手ぶり身振りは見える。
それは、劇中の星太郎とひかりも同じで。
でも、私たちも星太郎もひかりも、貴広と佐和の会話の内容が手に取るように “見えた” のだ。
この辺の脚本もそうだが、特に前述した “叙事的な描写” が効果的に機能したから “見えた” わけ。
敢えて、二人の告白をドラマチックに演出する(例えば、個々の顔のアップを入れるとか)ことはせずに…
あくまでもカメラは二人の会話の内容を聞き(見)逃すまいとする “主人公(星太郎)の視点” で下から見上げるアングルでキョロキョロしている感じにすることでテレビの中と外がつながる工夫が施されていると思う。
そのことが、星太郎のメガネがひかりと目と目を合わせるカットで数ミリ下がっていることでも、「皆さんも同じでしょ?」という作り手たちの思いが見てとれると思う。
だから、その直後の片山と神谷の笑い声や会話は聞こえる(ように作っている)のだ。
だって、完全に “片山と神谷” と “星太郎とひかり” と “視聴者” が一体化したわけだから。
なかなか計算された脚本と演出だと思う。
回想シーンから現在切り替わる描写に注目
もう一つだけ、よく計算された脚本と演出について書いてみる。
もちろん、私の妄想に過ぎないわけだが(苦笑)
それは、「2019年・夏」の回想シーンから “現在” へ切り替わる描写だ。
まず、現在から「2019年の花火大会の夜の宴会シーン」なって、一度また現在に戻る。
そして改めて「宴会の翌朝の回想シーン」になるが、星太郎の次の台詞きっかけで “映像だけ現在” にオーバーラップする。
星太郎「まだ 夏は 終わってねえよ」
星太郎と航とのやり取りは “音声のみ” つながっており、例の「くだらない話」を息子と幽霊の父が同じ “騒動” を思い出して笑っているところへ着地する。
ここで「うまいなぁ」と思うのは、一瞬だけインサートカットで入るお節介な花火師・牛田悟志(不破万作)の “あの一言” だ。
牛田「理代子さん 出ていって 何十年だよ」
ここでまた「実は “言葉” ほど曖昧な意思伝達手段はないよ」が発動しているのだ。
牛田は励ますつもりの何気ない一言だったと思うが、星太郎には数十年分の父子が守ってきた生活を破壊する力を持っていたわけだから。
そして、その怨念というか恨みみたいなものが「座布団のシミ」で、「心のシミ」は座布団以上にしつこくて落とせないってこと。
で、面白いのは、「座布団のシミ」も「心のシミ」も “落とす” のではなく、ひかりという存在が捨てさせちゃう(忘れさせちゃう)ような展開が見えていることだ。
元に戻す的な “再生・修復・回復” で終わらなそうな点も期待が持てる…
あとがき
私、東京に住んでいた時は「足立の花火」の打ち上げ場所が近かったので、花火大会の翌日は車の上に大量の花火のごみがのっていて洗車がたいへんだったのを思い出しました。
特に、翌日が雨だとホント大変で…
また、荒川土手の打ち上げ場に行くと、花火師さんたちが撤去と掃除で大忙しだったのも見てましたし。
今回は、私の第二の故郷「千葉県館山市」の花火大会の動画をご紹介します。
★本家の記事のURL → http://director.blog.shinobi.jp/Entry/17644/
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