エルピス―希望、あるいは災い― (第10話/最終回・2022/12/26) 感想

関西テレビ制作・フジテレビ系・新 月10ドラマ『エルピス―希望、あるいは災い―』
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第10話/最終回『希望あるいは災い』の感想。
大門亨が死んだ。大門雄二副総理(山路和弘)の娘である妻と離婚し、事務所も退職し身ひとつになった亨が、命を懸けて大門に対するレイプ事件“もみ消し”疑惑を告発しようとしていたことを知る岸本拓朗(眞栄田郷敦)は、その死の意味を理解し、言葉を失う。
一方の村井喬一(岡部たかし)は、亨の正義を踏みにじり、自らの保身のため、身内の死をもってすべてに終止符を打とうとする大門のやり方、さらに、権力という名の悪から目をそらし、平然と報道を続けるマスコミのあり方に怒りを爆発させる。
『ニュース8』のスタジオに殴り込んできた村井のただならぬ様子を見た浅川恵那(長澤まさみ)は、その真意を知りたいと、拓朗の元を訪ねる。しかし、亨を死に追いやったことに責任を感じ、かつての村井の忠告の意味を嫌というほど思い知らされた拓朗は、恵那の言葉に虚無感といら立ちを覚え、今度こそ、この一件から手を引くと宣言する。深い失意と恐怖に襲われる拓朗の言葉に、恵那が出した答えは…!?
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
原作:なし
脚本:渡辺あや(過去作/火の魚、朝ドラ「カーネーション」、ロング・グッドバイ)
演出:大根仁(過去作/湯けむりスナイパー、モテキ、ハロー張りネズミ、共演NG) 第1~6,9,最終話
下田彦太(過去作/農家のミカタ) 第4,5話
二宮孝平(過去作/共演NG)) 第7話
北野隆(過去作/半径5メートル) 第8話
音楽:大友良英(過去作/あまちゃん、いだてん、しもべえ)
主題歌:Mirage Collective「Mirage」
プロデューサー:佐野亜裕美(過去作/99.9-刑事専門弁護士-、カルテット、大豆田とわ子と三人の元夫)
※敬称略
最終回も面白かった
この感想を書いている時点で、最終回のネット記事も他の人の感想も全く目にしていない。
しかし、恐らく第1話から見続てきた人たちの評価は高いと思う。
もちろん、私も「最終回は面白かった」の一人だ。
いや、「最終回も面白かった」が正確な表現だと思うが。
人生には、突然天から降ってくる危うさがあるという現実
ということで、今回の感想はもっと大枠で今作を “ドラマ”、“連ドラ” として見ていきたい。
やはり、今作が伝えたかったことは、次の大きな3つかなと…
●正しいと思ってやっていることも、実は正しいことばかりとは限らないってこと。
●誰かのために良かれと思ってやったことも、どこかで誰かを傷つけている可能性だってあるってこと。
●正しいことと正しくないことは、善と悪のような対立軸ではなく、見方、捉え方次第だってこと。
そして、これらの上で、人生や社会には、希望も災いも、ある日突然に天から降ってくるようにやってくる危うさがあるという現実を突きつけた。
"連ドラ"としての"最重要人物"は村井だったと思う
その意味では、今作の本当の主人公とまではいわないが、“ドラマ”、“連ドラ” としての最重要人物が村井(岡部たかし)だったと思う。
恵那(長澤まさみ)、拓朗(眞栄田郷敦)、斎藤(鈴木亮平)のメインの3人は確かに大切なキャラクターだが、今作の肝であり、唯一といってよい “生き方が決まっているキャラ” として、大門雄二副総理(山路和弘)と真っ向から戦えるのは村井だけなのだ。
従って、過去の感想にも書いた通り、特に大根仁監督を始め村井の描写には可愛らしさと狂気が入り混じった巧みな演出が施されており、たいへん見応えがあった。
前回での村井の描写が、今作を難しくしてしまったかも?
しかし、このことが逆に今作を難しい作品にしてしまったともいえるのだ。
それは、前回で村井の過去が描かれ、村井のジャーナリストとしての矜持が明瞭になり、村井の行動原理がすべて明らかになったことで、繰り返すが “生き方が決まっていないキャラ” として恵那と拓朗が目立ってしまったのだ。
「一体、何を言いたいの?」と思っている読者様もいると思うが、もう少しお付き合いいただきたい。
要するに、今作がメインに描いてきた冤罪事件であるが、基本的にかかわらざるを得ない動機はあるにしても、本質的には事件とは無関係、それが恵那と拓朗だ。
従って、事件に無関係な恵那と拓朗で最終回まで視聴者を引っ張ること自体が相当無理なことなのだ。
だから、過去にも幾度か書いたように、今作がサスペンスなのか、ヒューマンドラマなのか、マスコミを逆説的に嘲笑するドラマなのか、今一つハッキリしなかったと思う。
全話の構成が違っていたら、世間の評価も変わったかも?
一部の報道で、今作の演出依頼を脚本の渡辺あや氏が大根仁監督に演出の依頼をした際には、既に全話分の初稿は完成していたそうだ。
だとすると、最初から「村井が今作のキーパーソン」であることは最初から決まっていたわけで、だったら、もっと村井を前面に出して、恵那と拓朗を後退させて描き、終盤に向かって「村井さんの敵を取る!」的に出て来た方が良かったかもしれない。
ただ、ドラマの営業戦略としては、やはり長澤まさみさん、眞栄田郷敦さん、鈴木亮平さんで推したかったのだろう。
だったら、最終回の構成のように、当初から恵那と拓朗を冤罪事件にかかわらせて苦悩させ、そこに村井が介入して… の構成のほうが良かったかもしれない。
まあ、この部分を含めて「メディアの闇」と考えれば、裏設定的に面白味も感じるが。
今作の独特な世界観が創出できた理由
あれこれ書いたが、今作が今期の連ドラでは断トツに面白かったし、毎週が楽しみだったのは間違いない。
普通なら WOWWOWでやりそうな企画を、カンテレ制作で地上波に乗せたことも大いに評価したいし。
更に、タブーとされているメディアの闇についても突っ込んで描いたのも評価したい。
そして何より、今作は私が大好きで大切に思っている「民放の地上波ドラマ」であったことが最も意味も価値もあると思う。
無料で老若男女問わず楽しめる(最近のドラマはちょっと変わりつつあるが)分かりやすい王道路線のドラマが基本の「民放の地上波ドラマ」に…
それに似つかわしくない渡辺あや氏の尖った脚本を(失礼)、おじさんを魅力的に描くのが得意な大根仁監督が選んだ映像が…
最近の社会派ドラマなんかに見られる「彩度の低い映画風映像」でなく、韓国ドラマ風の「ちょっと彩度の高いラグジュアリーな映像」で。
更に撮影監督が、CMやMVを数多く手掛ける重森豊太郎氏だったことも、今作がCMっぽい映像で飽きさせない理由だとも思う。
とにかく、尖った脚本を派手めで贅沢感のある映像で描いたから、今作の独特な世界観が創出できたのは間違いない。
あとがき
いやぁ、総括的にあれこれ書きましたけど…
本当に面白い作品で満足です。
「続き」が見てみたいです。
最後に、私の「推し」で見たくださった皆様、ありがとうございました。
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