エルピス―希望、あるいは災い― (第9話・2022/12/19) 感想

関西テレビ制作・フジテレビ系・新 月10ドラマ『エルピス―希望、あるいは災い―』
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第9話『善玉と悪玉』の感想。
DNA鑑定の結果をもってしても、彰(永山瑛太)が真犯人である事実は公にすることが許されず、行き場のない憤りを抱えた拓朗(眞栄田郷敦)は、さらに、刑事の平川(安井順平)を脅迫した疑いで会社を解雇されてしまう。この一件で、背後に真実を闇に葬ろうとする巨大な力を感じた恵那(長澤まさみ)は、無力な自分になすすべもなく、再び心身のバランスを崩していく。一方、大門(山路和弘)の娘婿で秘書の亨(迫田孝也)に接触を図った村井(岡部たかし)は、拓朗にジャーナリストを名乗らせ、亨と引き合わせる。
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
原作:なし
脚本:渡辺あや(過去作/火の魚、朝ドラ「カーネーション」、ロング・グッドバイ)
演出:大根仁(過去作/湯けむりスナイパー、モテキ、ハロー張りネズミ、共演NG) 第1~6,9話
下田彦太(過去作/農家のミカタ) 第4,5話
二宮孝平(過去作/共演NG)) 第7話
北野隆(過去作/半径5メートル) 第8話
音楽:大友良英(過去作/あまちゃん、いだてん、しもべえ)
主題歌:Mirage Collective「Mirage」
プロデューサー:佐野亜裕美(過去作/99.9-刑事専門弁護士-、カルテット、大豆田とわ子と三人の元夫)
※敬称略
最終話直前回として、核心に迫る前の助走段階といった感じ
今回も、恵那(長澤まさみ)と拓朗(眞栄田郷敦)のモノローグで進行された。
前回から、ナレーションという説明よりも、心情描写の一環としてのモノローグに近い状態。
そのために、いよいよ切羽詰まってきた二人が外界からの圧力と内面からの湧き出るものとの葛藤に苦しみ始めたことが強調された。
正に、最終話直前回として、核心に迫る前の助走段階といった感じだ。
善玉菌20%、悪玉菌10%、そして70%を占める日和見菌
今回の演出… というか脚本というか… そう、サブタイトル『善玉と悪玉』について。
健康に興味を持ってる人や保健医療にちょっと詳しい人なら気づいたと思う。 それはサブタイトルの中には「菌」とも「コレステロール」とも書いてないこと。
わたし、先日受けた人間ドックの結果が昨夜届いて「LDL(悪玉コレステロール)とHDL(善玉コレステロール)も問題なし」で良かったのが。
そういう話じゃなくて…(笑)
劇中では、美容院で恵那読んでいた雑誌の特集も店内の会話も「善玉菌」と「悪玉菌」のことだった。
ただ、劇中の客の会話の内容にあった美容師の台詞「どっちが悪玉菌で どっちが善玉菌かとか ほんとは ないんですって」とか「大事なのはバランスが取れてることがなんですって」は、「血液中のコレステロール値」のことを示すことが多い(看護師の妻談)。
一方の「善玉菌と悪玉菌」は血中ではなく腸内細菌のことで、腸内には「善玉菌20%と悪玉菌10%があり、ここで注目すべきが残りの70%を占める日和見菌。
日和見菌は良い働きも悪い働きもする菌種で、“日和見” の言葉どおりに「数的に優位なほうに味方する」のだ。
日和見な世間によって、事実が変わってしまう怖さ
私が何を言いたいのか?
1つは、世間のよもやま話を鵜呑みにしませんように… ってこと。
それと同時に今作としては、「こうやって誤解を招く情報が世間に流布されていく怖さ」を表現しているともいえる。
まあ、このまま放送しっぱなしなのもどうかと思うが、それこそ “ドラマ” だし、気づく人は気づくだろうから大きな問題ではないが。
もう1つは、やはり「菌」とも「コレステロール」とも記載がないサブタイトル『善玉と悪玉』の妙だ。
要するに、これを「菌」でなく「コレステロール値」のことだと解釈した視聴者は、報道の善悪、事実か嘘か、その判断を「日和見菌=広く一般人のこと」が自ら判断したように何者かによって “印象操作” している可能性があるという恐怖を示していると思うのだ。
社会構造を腸内環境に置き換えてみると…
最後に3つめは「赤ちゃんの腸内は無菌」だってこと。
そして、その後の生活によって細菌感染し、幼児期に腸内細菌バランスはほぼ決まるという。
でも、食生活と生活習慣で全体の2割を善玉菌と悪玉菌のどっちが占めるのかで “健康” が決まる。
しかし、60歳前後から善玉菌が減っていくのが老化の一歩。
もうお分かりだろう。
今回の脚本と演出を要らぬお世話で深読みすれば…
無菌で生まれた拓朗の腸内細菌のバランスは、あの母親の育児によって幼少期にほぼ決まった。
しかし、その後の、特に大学時代の悲惨な出来事を契機にバランスが崩壊し始め、冤罪事件にかかわるようになってから、善悪のバランスが崩壊、反転したのが今の拓朗であり…
年齢的に悪玉菌が増殖しているはずの村井(岡部たかし)は自らそれに気づいて言動を変えた…
斎藤(鈴木亮平)はこのまま悪玉菌に腸内を独占させるのかの瀬戸際で…
恵那自身は腸内で善玉菌と悪玉菌が戦っている現状を “生(生きてる証)” と無理やりに咀嚼し飲み込んで吐き出す寸前のような…
社会構造を腸内環境に置き換えてみたわけだが、あながち論点違いだと思ってはいない。
だって、今作はこれまでも “分かりにくい比喩” をたくさん盛り込んできたわけだから…
恵那と拓朗の無力感と、村井の怒りと放棄、斎藤の混迷
さて、“連ドラ” の最終話直前回として見てみると。
主人公は、ほぼ村井(笑)
普通の連ドラなら、恵那を中心にあれこれ騒動を描くと思うが、むしろ恵那だけでなく拓朗まで “ほぼ思考停止状態” で、その分で村井を動かした感じだ。
そのため、これまで以上に恵那と拓朗の無力感と、村井の怒りと放棄、斎藤の混迷が際立って描かれた。
これによって、謎解きドラマよりも、ヒューマンドラマや社会派ドラマの色が強くなり、益々結末が分からなくなった。
もちろん、先が見える連ドラなんて面白くないし、結末で納得できればいいなんて連ドラはもっと嫌だ。
その意味でも、最後の最後まで世の中の危うさを描きつつ、少しの希望の光が見えれば… と思う。
あとがき
先が読めない連ドラって本当に楽しいです。
今作の醍醐味って、そこに尽きるかなぁって。
恵那、拓朗、斎藤は、それぞれ自分の最後の手段というか、切り札を持ってますよね。
それを最終回で使うのか、使うならどの時にどう使うのか?
やはり、何事もタイミングとバランスが大事なので、そこに注目しようと思います。
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