エルピス―希望、あるいは災い― (第4話・2022/11/14) 感想

関西テレビ制作・フジテレビ系・新 月10ドラマ『エルピス―希望、あるいは災い―』
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第4話『視聴率と再審請求』の感想。
恵那(長澤まさみ)の画策により、被害者遺族ら事件関係者にインタビューした映像が「フライデーボンボン」で放送された。拓朗(眞栄田郷敦)すら知らなかった恵那の‘奇襲’に、村井(岡部たかし)たちスタッフはぼうぜん。恵那は名越(近藤公園)から激しい叱責(しっせき)を受けるが、特集への反響は想像以上に大きかった。次に、恵那たちは犯人逮捕の決め手にもなった証言に着目し取材を申し込むが…。
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
原作:なし
脚本:渡辺あや(過去作/火の魚、朝ドラ「カーネーション」、ロング・グッドバイ)
演出:大根仁(過去作/湯けむりスナイパー、モテキ、ハロー張りネズミ、共演NG) 第1,2,3,4話
下田彦太(過去作/農家のミカタ) 第4話
二宮孝平(過去作/共演NG)
北野隆(過去作/半径5メーtル)
音楽:大友良英(過去作/あまちゃん、いだてん、しもべえ)
主題歌:Mirage Collective「Mirage」
プロデューサー:佐野亜裕美(過去作/99.9-刑事専門弁護士-、カルテット、大豆田とわ子と三人の元夫)
※敬称略
前回のモノローグは恵那だったが、今回は拓朗が担当
前回のモノローグは恵那(長澤まさみ)だったが、今回は拓朗(眞栄田郷敦)。
で、考察ドラマ系の勘案は、いつも通り “よそ” でやってもらうとして…(苦笑)
最近のドラマでは見かけなくなったモノローグ処理が新鮮
今回も “ドラマ” として面白い部分を当ブログ風に掘り下げてみたい。
まず、冒頭で触れたモノローグについて。
私は、最近のドラマでは見かけ(聞か)なくなったモノローグ(兼 ナレーション)処理だと思う。
最近のドラマのモノローグ(兼 ナレーション)は、どんどん視聴者への説明の補助に使われることが多い。
まあ、早送り再生する視聴者が増えているせいもあるが、作り手の意図を送信しようとするとモノローグで聞かせるのが、結果的に耳でも、目でも内容が追えてもらえるから手っ取り早いのが理由だろう。
しかし見逃し配信なんてない時代のドラマでは、モノローグを使うのは脚本、演出、演技としても邪道で、本来は無くても伝わるように作るのがベストだとされていた。
恵那のモノローグのない拓朗の心理描写こそが今回の見所
そこで、今作のモノローグ(兼 ナレーション)だ。
一見すると、今回は主人公(恵那)の心情を表現するのは恵那自身であるとの判断に見える。
しかし、本編をよく見ると今回のメイン(主人公という意味でない)は拓朗だ。
やる気に満ち溢れた目力が、過去の自分を振り返って死んだ魚の目のようになる紆余曲折、七転八倒な苦悩による拓朗の心情の変化については、一切モノローグによる解説がない。
ストーリー展開による拓朗の境遇と眞栄田郷敦さんの演技によって表現されている。
恵那のモノローグは「私は何も気付いていなかった」としか語っていない。
このような、繰り返すが今作の主人公が誰であるかとは別の次元で、“連ドラ” として毎回中心になるキャラクターに合わせて、視聴者に訴求するべき部分に最も最適なキャラがモノローグを務めるという脚本は、相当に熟考した結果であり、これは称賛に価すると思う。
事件よりも拓朗を描くことで、連ドラとしての面白味が増す
更に “連ドラ” として興味深いのは、劇中でも被害者遺族ら事件関係者にインタビューした映像が「フライデーボンボン」で放送され、特集への世間の反応が予想以上に高い… と描いているのに、本編では寧ろ “事件” の続きを描かずに、拓郎の描写に尺を割いたこと。
これと前述の “恵那のモノローグ” で進行する展開を考え合わせると、今作が一体なにを描こうとしているのか、また分からなくなってしまった。
勿論それは混迷しているというわけではなく、社会派エンターテインメントとして益々謎が深まって、面白味が増したことと同義。
やはり、ちゃんと “連ドラ” としての見せ方、魅せ方、楽しませ方が分かっている作り手だからこその見事な作風だと思う。
カクテル「モヒート」の名前の由来と今作を深読みしてみる
さて、第2話でお寺での法要シーンで何気に映っていた「阿弥陀如来像」と「エルピス」の関連性について深読みをやったのを覚えていらっしゃるだろうか?
今回も、偶然か意図的か分からないが、拓郎の母・岸本陸子(筒井真理子)のシーンに気になる描写があったから、勝手に深掘りしてみたい。
それは、拓郎が帰宅した時に陸子が拓朗にいう次の台詞だ。
陸子「上がったらモヒート飲も 一緒に」
カクテル大好きオジサンが簡単に解説すると…
「モヒート」とは、夏によく飲まれるカクテルで、ホワイトラムをベースにミントやライム、ガムシロップを入れ、クラッシュドアイスを満たしたグラスにソーダを注ぐ爽快なロングカクテルだ。
カクテルの言葉は「心の渇きを癒して」となるわけだが。
この「モヒート」の名前の由来には諸説あるが、大きく二つに分けられる。
一つは王道の説で、スペイン語の「mojar(濡らす)」が由来になっている説。
もう一つが、前述のスペイン語の「mojar(濡らす)」の語源が、アフリカ地域でのブードゥー教の呪術では ‘魔法をかける’、‘麻薬’、‘魔力のあるお守り’を意味する「mojo」から来ているとの説。
どちらを信じるかはあなた次第だが、まず注目したいのは、今作において “濡らす” が印象的なシーンに多用されている点だ。
山中での遺体の置かれ方にしても “雨” が印象的だし、恵那の心情描写に不可欠な “濡れ場” にしても、幾度も登場する “トイレ” や、手のひらに鉛筆の芯がいっぱい刺さっている “傷からの血液” 、そして各登場人物の思い思いの “涙” も… だ。
そして、魔法をかける’、‘麻薬’、‘魔力のあるお守り’という点では言わずもがな、多くの登場人物たちが何かに取り憑(つ)かれたように行動変容していく様子を表しているような。
そう考えると、今作の全編に漂う “高い湿度感” が、夜の情報番組「フライデーボンボン」の “軽薄感” と相対照的で悲喜劇に見えて来やしないだろうか…
あとがき
今作を「冤罪事件を追う社会派ドラマ」だと思っている人も多いようですが…
今作って、何が正しくて何が正しくないのかは人それぞれで違っており、だから自分の価値観で正論だと主張したところで相手次第で暴論にもなる… という現代社会の危うさやリスクを描きつつ、でも主張すべきは主張しないと事態は変わらないという矛盾の中で、もがき苦しみつつも生きていく人たちを描いた人間ドラマになっていると思います。
視聴率は芳しくないですが、目先の視聴率稼ぎより作り手の矜持を貫いてほしいです…
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