ザ・トラベルナース (第4話・2022/11/10) 感想

テレビ朝日系・木曜ドラマ『ザ・トラベルナース』
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第4話『馬鹿ドクターVS手術したがる患者』の感想。
患者のプライベートに首を突っ込む静(中井貴一)を、歩(岡田将生)は米国なら訴えられると非難。そんな中、歩は院内で大量の洋菓子を配り歩く入院患者の和子(岸本加世子)が、末期の大腸がんだと知る。折しも、院長の天乃(松平健)が、病床の回転率を上げるよう指示。真都(菜々緒)は和子の担当医・古谷(吉田ウーロン太)から、緩和ケアに特化した病院への転院を促すよう言われるが…。
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
原作:なし
原案:中園ミホ(過去作/ドクターX 1,2,3,4,6,7)
脚本:中園ミホ(過去作/ドクターX 1,2,3,4,6,7) 第1,2,3話
:香坂隆史(過去作/七人の秘書、ドクターX 7、インジビジブル) 第4話
演出:金井紘(過去作/ラジエーションハウス1,2、信長協奏曲) 第1,2話
片山修(過去作/相棒シリーズ、家政夫のミタゾノ4、ドクターX 7) 第3話
山田勇人(過去作/ドクターX 3,6,7) 第4話
音楽:沢田完(過去作/ドクターX 1,2,3,4,5,6,7)
主題歌:DISH//「五明後日」
ナレーター:遠藤憲一
エグゼクティブ・プロデューサー:内山聖子(過去作/ドクターX大門未知子6,7、妖シェアハウス1,2、七人の秘書)
※敬称略
私が見たい医療ドラマとして、ほぼパーフェクト!
最初に書いてしまうが、今回の仕上がりについては、私が見たい医療ドラマとして “ほぼパーフェクト” だった。
というわけで、ひねくれ者の私がこれだけ褒めたのだから、もう書くことはないのだが(苦笑)
更に一段 "ドラマ" として面白くなった
真都(菜々緒)が歩(岡田将生)に言い放った次の台詞で「ドクター VS ナース」のバトルが開幕し…
真都「ナースのくせに外科医に意見しないで!」
そして、静(中井貴一)からの歩への華麗なる言い返しで締めた…
静「偽(にせ)啓介くん。嘘つき」
前回は、脇役の看護師・麻美(恒松祐里)に焦点を当てすぎたために、やや歩と静が麻美の陰に隠れてしまって残念だったが。
まず今回で評価できるのは、前回同様に脇役である外科医・郡司真都に焦点を当ててはいるが、冒頭に書いたように序盤で「ドクター VS ナース」を強調して、しっかり歩を真都と “対” として絡めて描いているため、前回のようなナースステーションのお話にとどまっていないこと。
そして、歩と真都を “俯瞰で見る立場” として静を配置したおかげで、特に歩と静については個々の描き分けもさることながら、“ドラマ” の中で、文字通りに歩は “物語を歩ませる係” で、静は “物語を静かに収める係” として、しっかりと機能していた。
この二つによって、二人のナースが “よき相棒” であり “よきライバル” であることがしっかりと描かれて、更に一段 “ドラマ” として面白くなったと思う。
「どこで働くか?」よりも「どう働くか?」が大切
とにかく、連ドラとしても十分に面白い。
若い女性外科医が男性社会で切磋琢磨しながら成長する物語を描きつつ、医療ドラマらしく “(転職を繰り返す)ジブシー” や “QOL(Quality of Life=人生の質)”、更に “外科と緩和ケア” を絡めて。
例えば、静が真都に言った台詞…
静「どこに行っても同じなのは あなた自身ではないですか?」
これは、資格もプライドもやりたいこともある医療従事者の “あるある” に「ジプシー・ドクター」や「ジプシー・ナース」というのがあって。
要するに、自分が生かせる職場を「移動型民族」を表す “ジプシー” になぞらえて転々と職場を変える医療従事者のことを指す。
これで、夢の職場に出会えればよいが、一般的にはむしろ新天地側で “ジプシー” は「また転職するかも?」と嫌われる傾向がある。
結局は、静が言ったように「どこで働くか?」よりも「どう働くか?」が大切ってこと。
この辺の描写をさり気なく入れるのは、これから医療従事者を目指そうとしている人にとっても良いことだと思う。
和子が配るのが"マドレーヌ"でなく"フィナンシェ"の意味
そして、以前わたしが「フィナンシェ好き」なのは、何かで書いたことがあるが…
今回の院内で大量の洋菓子を配り歩く入院患者の和子(岸本加世子)が配ったのが、焼き菓子の二大巨頭である「マドレーヌ」でなく「フィナンシェ」だったことについて一言。
まず、「フィナンシェ」の形について。
一般的にフィナンシェは「フィナンシェ型」と呼ばれる金型で作るが、あの色と形は「金塊」に似ており、フランス語で「フィナンシェ」は “お金持ち” の意味がある。
そこで私が好きな深読みをすると、脚本家は「フィナンシェ」によって和子の息子・四方田啓介(元之介)がパティシェとして “成功” したことの象徴として利用したのではないかと思うのだ。
もう一つの深読みは、「フィナンシェ」という名称。
17世紀ごろにフランスで病人や貧しい家庭への訪問を目的として活動していた「聖母訪問教会(仏語:L'ordre des Visitandines)」の修道女たちが作った焼き菓子の総称が「フィナンシェ(仏語:financier)」。
従って、和子が「フィナンシェ」を配る行為そのものが “聖母” に通じるのではないかと思うのだ。
そのことは、更に想像の域になるが、終盤での「和子が話す相手が啓介から歩に切り替わるくだり」が、ただの和子の妄想や幻視ではなく、“和子の啓介への途絶えぬ愛” と “歩の亡き母への慈しみ” を重ねた映像表現だと思うことにもつながる。
だから、クリミア戦争で負傷兵たちへ施した医療衛生改革をしたナイチンゲール誓詞を描く今作なら、絶対に「マドレーヌ」でなく「フィナンシェ」なのだ。
緩急も喜怒哀楽もあって、考えさせられる部分もある…
話を戻そう。
きっと、前回が例外だったのだろう。
やはり、第1、2話と今回のような行動力があり自己顕示欲の強い歩と、したたかに且つ知能的に物事を解決していく静の描き分けをしつつ…
医療ドラマらしい “生と死” も含みつつ、重すぎないように “人情話” としての感動も盛り込む。
更に、序盤で静の “嘘による患者の説得” を振っておいて、最後に静の歩への「嘘つき」で落とす。
緩急があって、喜怒哀楽もあって、考えさせられる部分もある。
やはり、私が医療ドラマに求めるものが、ほぼ詰まっていて完成度が高い。
1時間でここまで描き切れば、グッジョブ! としか言えない。
もちろん、業務時間中に私物の携帯で話したり、オンコールなのに飲み会に出席したりと、小さな部分で気になることはなくも無いが、全体の完成度の高さを考えれば、無視できるレベル。
別に違和感もないし、不快でもないし、むしろ “粗探し” になるかも? 本当に、満足な1時間だった。
あとがき
ラストで、静と病院長・天乃隆之介(松平健)の過去のネタ振りがありましたね。
今後、どんな感じでメインの話に絡めてくるのか楽しみです。
それと、今回のクレジットから中園ミホさんが「原案」になり、脚本担当が香坂隆史さんになりました。
意外と脚本家の交代によって、原案の要素が強く意識された可能性もあると思います。
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