エルピス―希望、あるいは災い― (第2話・2022/10/31) 感想

関西テレビ制作・フジテレビ系・新 月10ドラマ『エルピス―希望、あるいは災い―』
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第2話『女子アナと死刑囚』の感想。
女子中学生が12年前の連続殺人事件と同じ手口で殺された。死刑囚・松本(片岡正二郎)の冤罪を訴える拓朗(眞栄田郷敦)の言葉に可能性を見た恵那(長澤まさみ)は事件を調べ直すことに。当時、松本宅で保護されたチェリーことさくら(三浦透子)が書きためた裁判記録を基に松本の足取りを確認し、検察側のある主張に違和感を抱く。そんな中、恵那に松本本人から手紙が届く。
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
原作:なし
脚本:渡辺あや(過去作/火の魚、朝ドラ「カーネーション」、ロング・グッドバイ)
演出:大根仁(過去作/湯けむりスナイパー、モテキ、ハロー張りネズミ、共演NG)) 第1,2話
下田彦太(過去作/農家のミカタ)
二宮孝平(過去作/共演NG)
北野隆(過去作/半径5メーtル)
音楽:大友良英(過去作/あまちゃん、いだてん、しもべえ)
主題歌:Mirage Collective「Mirage」
プロデューサー:佐野亜裕美(過去作/99.9-刑事専門弁護士-、カルテット、大豆田とわ子と三人の元夫)
※敬称略
前回のまとめが秀逸な連ドラは名作の可能性が高い
冒頭、秀逸な約1分半の前回の冒頭の振り返りで始まった第2話。
第1話という情報過多が当然の内容を、見事に短くまとめてきた。
これを見るだけで、如何に脚本家と演出家が今後の展開に必要な要素が何であるか明確に分かっているから “断捨離” ができると思う。
まあ、私の経験と勘がハズレなければ、前回のまとめが秀逸な連ドラは名作の可能性が高いから今後への期待が高まった。
恵那が事件を再現するシーンの映像処理が良かった
また、映像的に気に入ったのは、主人公・恵那(長澤まさみ)が事件を自ら再現(体現)するシーン。
ちょっとミステリアスな雰囲気を漂わせつつ、しっかりと現実味と恐怖感を兼ね備えた映像処理が施されており、最近の民放ドラマでは見かけていない本編のトーンを壊さない的確な映像になっていた。
拓朗の法要シーンでの「阿弥陀如来像」に注目
もう一つ気に入ったというよりも、注目したシーンが、拓朗(眞栄田郷敦)の亡父の法要シーン。
ここで突然、みっきーの仏教うんちくコーナー。
拓朗たちが拝んでいたのが、浄土教系の仏教で唱えるお念仏「南無阿弥陀仏」の象徴的な存在が「阿弥陀如来像」である。
「阿弥陀」には、二つの意味がある。
一つは、“光明無量” の意味の「アミターバ (阿弥陀婆)」が転じた意味で、「光明」とは仏様のお力のことで、光明が届かないところはないという意味から「空間に限りはない」ということ。
二つ目は、“寿命無量” の意味の「アミターユス (阿弥陀?斯)」が転じた意味で、阿弥陀仏の寿命は限りがないことから「時間は無限」を表す。
要するに「阿弥陀」とは、空間も時間も無限である… ということ。
そして、そのことは今生きている人にとって平等に与えられた “本当の幸せ” にたどり着くための “真理” であるわけだ。
そのことを考えると、この法要シーンの直後に拓朗が恵那に協力して “真理” にたどり着こうとする展開が「阿弥陀」にシンクロしてくるし…
更に死刑囚・松本良夫(片岡正二郎)にとって “空間も時間も無限である” との教えが、空虚で刹那に聞こえるのも、今作が描こうとしている “冤罪” に強く結びついていると考えるのは、やりすぎだろうか?
因みに、今作のタイトルの『エルピス (Elpis)』は、古代ギリシャ神話に登場する「パンドラの箱=この世に様々な災いが解き放たれた箱」に残されたもので、古代ギリシャ語で「希望」の意味であり、ギリシャ神話では “希望の女神” のこと。
やはり、エルピスと阿弥陀如来には、何らかの縁や意図を感じざるを得ない…
現時点で「続編が見たい」と思うような作品は久しぶり
とにかく、第2話なのに相当の情報量である。
おかげで、倍速再生などできずに、じっくり見入ってしまった。
というのも、今作の情報の要素は、あらゆる方面や角度で関係性を持っているように描かれているため、一つ残らずインプットしておかないと全体像が掴みにくい。
表面的なテーマが幾つも存在するからだ。
しかし、今回、特に全編に採用されていた恵那のモノローグと、第2話のサブタイトル『女子アナと死刑囚』から察すると、全体的には「冤罪事件を追う主人公の変化」を描くのが主軸のようだ。
そして、今回に登場した断捨離しまくった恵那の部屋や、ちょこっと描かれた恵那と斎藤(鈴木亮平)の関係性から、「破壊と再生~スクラップ・アンド・ビルト」も大きなテーマになる予感がする。
保身のためになかなか壊せない壁を壊した先に一筋の光明が差す… というやつだ。
とにかく、第2話を見終えても、まだまだ「先が読めない連ドラ」であり、「先が見たくなる連ドラ」であるのは嬉しいことだし、現時点で「続編が見たい」と思うような作品は久しぶりである。
あとがき
ぶっちゃけ、ここ最近の民放ドラマって、人気シリーズの続編、お涙頂戴の医療ドラマ、奇を衒った設定の恋バナ、ジャ○ーズ頼みな作品が多くて、作り手一人ひとりに「生活のためならしょうがないけど、本気で作りたいドラマなの?」と聞きたいと、ずっと思っていました。
しかし、今作を見て前回の感想でも書きましたが、「関テレドラマの本気の復活」もありますが、やはりキャストを含めた作り手たちの “本気” を感じます。
今作の佐野亜裕美プロデューサーは、ドラマ『渡る世間は鬼ばかり』(TBS/1990-2011)の助監督を担当し、名プロデューサー・石井ふく子氏の影響を強く受けたとされています。
石井ふく子氏と言えば、生涯「家族」をテーマに作品を世に送り続けた筋金入りのテーマ主義者。
それを佐野Pが今作にも受け継いでいるなら、『カルテット』(TBS/2017)や『大豆田とわ子と三人の元夫』(関テレ/2021)、『17才の帝国』(NHK/2022)に脈々と流れる「破壊と再生」がテーマにあるかもしれません…
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【これまでの感想】
第1話
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