連続テレビ小説「舞いあがれ!」 (第9回・2022/10/13) 感想

NHK総合・連続テレビ小説『舞いあがれ!』
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第9回〔全?回〕/第2週『ばらもん凧(だこ)、あがれ!』の感想。
※ 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
※ また、称賛、絶賛の感想だけをご希望の方は読まない方が良いです。
舞の症状は軽くなっていた。そんな舞の近況を通して、めぐみ(永作博美)と祥子は自然に会話が出来るようになっていた。そんなある日、舞は近所に住む一太の家へジャムを届けに行く。妊娠中の一太の母が喜んで受け取ってくれるが、急に激しい陣痛に襲われる。助けを求められる舞は、無我夢中で祥子の元へ走っていく。聞きつけた祥子は、舞とともに今度は一太の父の信吾(鈴木浩介)に知らせようと、ふたり一緒に駆け出していく。
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
原作:なし
脚本:桑原亮子(過去作/心の傷を癒すということ) 第1,2週
嶋田うれ葉(過去作/朝ドラ「エール」)
佃良太(過去作/星とレモンの部屋)
演出:田中正(過去作/ウェルかめ、ひよっこ、なつぞら) 第1週
野田雄介(過去作/スカーレット、マッサン、六畳間のピアノマン) 第2週
小谷高義(過去作/スカーレット、おちょやん)
松木健祐(過去作/ひよっこ、いだてん、晴天を衝け)
音楽:富貴晴美(過去作/花嫁のれんシリーズ、西郷どん、それでも恋する)
主題歌:back number「アイラブユー」
語り:さだまさし
制作統括:熊野律時(過去作/おちょやん)
管原浩(過去作/これは経費で落ちません!、いいね光源氏くんシリーズ)
※敬称略
作品の 粗探しや重箱の隅を楊枝でほじくる こと、スタッフの人格否定や俳優の個人攻撃 が 目的ではない ことをご理解ください。
ものづくりは、"完璧"だけが"完成形"ではないってこと…
あがだ、お元気と? おいが管理人の “みっきー” です!
(皆さん、お元気ですか? 私が管理人の “みっきー” です!)
今回を見て、ちょっとホッとしました。
既に今作については “名作の予感” はすれど、やはり改善すべき点というか、私が「こうして欲しかった」は… あるのだなぁと。
私はものづくりを生業とする人間の端くれとして、よく「陽明門」の話をします。
そう、栃木県日光市の日光東照宮にある「陽明門(ひぐらしの門)」のことです。
陽明門は12本の柱から成立していますが、背面西から2本目の1本だけ屈輪文(模様、文様)が上下逆さになっており、「魔除けの逆柱」と呼ばれています。
そのように作った理由は(ここからが大事)「建物をすべて完璧に作り込んでしまうとあとは崩壊するだけ」との言い伝えがあり、意図的に一か所だけ文様を逆に作って “完璧にせず” 崩壊を防いだ… という逸話があるのです。
私が言いたいのは、基本的にものづくりは “完璧” を目指しますが、“完璧” だけが “完成形” ではないってことです。
だから、今作に対して称賛してばかりしてきたことに、ちょっとだけ不安があったのです。
今作にだって「魔除けの逆柱」的なものがないと… って。
今回の感想は、まずその辺から書いてみようと思います。
今回で「こうした方が良かったのでは?」とは思うところ
まず今回で「こうした方が良かったのでは?」とは思うところ。
それは、五島列島の医者・谷久也(前川清)をもっと登場させたら良かったかなと。
それこそ、序盤で莉子(大橋梓)が産気づいたくだりを始めとして、ドクター谷の出番を増やして、主人公の病状の変化も語らせれば、原因不明の発熱が五島での祖母との生活によって改善しつつあることが、明確になったと思うから。
せっかく、酒の席に出番があっただけに、もったいないなと。
自分が主張した「14時」には間に合わなかったけど…
もう一つは前回で書きそびれたことで、それは祥子(高畑淳子)の失敗を “あそこまでの大失敗” にしなくても良かったかなと。
せめて、15時にはギリギリ間に合った… でも良かったと思う。
自分が主張した「14時」には間に合わなかったけど…
この方が、祥子の “プロの釣り船船長” としての最低限の役割は果たしたことになるから、「流石に、無責任では?」とはならない気が…
まあ、“大失敗” の方が、主人公に「失敗は 悪いことやない」と思わせるには説得力はあるが…
莉子が産気づいたことを祥子に伝えるために舞が走るシーン
では、ここからは褒めポイントや注目ポイントを。
と書いておいて、まずは演出のお勉強だ(笑)
アバンタイトルで莉子が産気づいたことを祥子に伝えるために舞(浅田芭路)が走るシーン。
急いで海辺に向かって走る舞は、画面の上手(かみて:右)から下手(しもて:左)へ走る。
主題歌明けに祥子と舞が走るのは、画面の下手(しもて:左)から上手(かみて:右)。
『[演出プチ講座] 映像の掟~画面内の人物の位置や視線(目線)の向きには意味がある~』に書いたように、「画面右 → 画面左」は “絶望・敗北” を表し、「画面左 → 画面右」は “希望・勝利” を表す。
ちゃんと、この掟に準じて演出されている。
ドローン撮影を含めた"俯瞰アングル"の映像的な効果
さて、今度は前回も書いたが、注目ポイントの “ドローン撮影” についてだ。
前回では、押し入れから祥子がばらもん凧の入った段ボール箱を出すカットの “俯瞰アングル” について触れたが、今回は幾度かドローン撮影による “俯瞰アングル” が印象的に使われえていた。
●前述の疾走シーン
●海岸を信吾(鈴木浩介)たちの所に舞が走るカット
●舞たちが防波堤釣りをするカット
また、ドローン撮影ではないが、俯瞰カットが印象的だったのが…
●夕景の波止場で、舞が飛行機を見上げるカット
●一太(野原壱太)が舞にばらもん凧を見せるカット
●お墓参りのシーン
●夕景の縁側で、祥子と頭上の舞が作った “貝殻のモビール” のカット
いずれの視点も、舞の成長を見守るご先祖様の “守護神” にも感じるし、舞や子どもたちの誕生・心・病・命を見守る “キリスト教” 的な “祈りの聖地” にもつながっているような気がする。
私は一般的な映像作品においては、ドローン撮影を1話の中に多用するのは下衆だし野暮だとの考えだが、今作のように演出意図が伝われば、実に効果的で良いと思う。
"2回"の、めぐみの電話で話すシーンについて…
もう一つ、なるほど… と感じた演出をご紹介しよう。
今回では、電話で話すめぐみ(永作博美)が “2回” 登場した。
・1つは、アバンでの祥子との電話の会話。
・2つ目は、ラストシーンでの舞との電話の会話。
この “2回” で違うのは、祥子との会話にはめぐみが画面に登場したが、舞との会話では声しか登場しなかったこと。
これ、どうせ声を録音するのだから、2つのシーンを同時に撮ることも出来たはずだ。
いや、もしかしたら撮影はしたかもしれない。
しかし、舞との会話でめぐみのカットを使わなかったのには明確な意図があると思う。
それは、めぐみの顔を見ないで電話をしている舞と視聴者を同じ環境に置いて、共感させやすくする演出だ。
1つ目の祥子とのやり取りは、単純に「舞の現状報告」だから、舞を心配しているめぐみと祥子が出てもおかしくない。
しかし、2つ目のシーンは、舞が「大好きな母親がどんな顔で自分に答えてくれるのか?」を想像して電話しているから、ここでもめぐみが顔を出しちゃうと、今度は「母子の現状報告」風になってしまう恐れがある。
だから、めぐみは電話口の音声だけにして、舞に集中させたと思う。
この辺の描き分けも見事である。
難しい描写を何とか乗り越えた部分について…
さて、いろいろ書いたが、今回で、難しい描写を何とか乗り越えた部分について書いてみる。
それは、舞が五島にやって来てからの “約4か月間” の時間経過。
舞が五島に転校して来たのが「1994年4月の中旬以降」(才津家のカレンダーより)で、出産の場面がその1か月後で、防波堤釣り以降は「8月」だ。
「5月」の妊娠騒動の時は走っても発熱はなかったが、それから約3か月後には、思い悩むことがあると発熱してしまう… という微妙な病状、症状の変化を次の台詞で表現した。
舞「慶太ちゃんのな 大事な凧やから」
やはり、一太の凧を壊してしまったことが後を引いているのだ。
そして、祥子もめぐみとの仲たがいを今でも後を引いている。
舞「失敗したらあかんし… 怖いねん。
うまいことでけへんかって
みんなを がっかりさせんのが怖い」
祥子「ばあちゃんも た~くさん失敗したとよ。
めぐみんことだって そうたい。
失敗ばしたせいで めぐみにも舞にも
ず~っと会えんあったとさ。
舞は 人ん気持ちば考えらるっ子たい。
じゃばってん 自分の気持ちも大事にせんば」
そして、10月7日放送の第5回で祥子はめぐみに「めぐみ 帰ってくれんね。帰らんね」と大阪に帰るように言う。
再会できた嬉しさもあるだろうが、今は孫の舞のことを第一に考えた “自分の気持ち” を大事にしたのだ。
だから、そのやり取りをそばで聞いていて、「私と一緒にいてたら お母ちゃん しんどそうやから」とまでわかっている舞が、母親の意見を聞きたい気持ちは良くわかる。
「みんなを がっかりさせんのが怖い」けど、“人ん気持ちば考えらるっ子” として、一太の自分を誘う気持ちも分かるわけだから…
とにかく、舞の気持ち、祥子の気持ち、めぐみの気持ち、太一たちの気持ちが丁寧に描かれて、気持ちがよい。
冒頭の数分間で “約4か月間” もの時間経過をしてしまったのが残念である。
もっともっと、五島での子ども時代を見てみたい… から。
今回の出産エピソードについて、助産師の妻に聞いてみた
今回の出産エピソードについても、釣り船遅刻エピソードのように異論反論あると思う。
そこで、これまで数百人の赤ちゃんを取り上げた現役助産師の妻に聞いてみた。
まず、既に2人出産した経産婦が突然に産気づいて、あんなにパニックになるか?
妻曰く…
たまに報道で「電車の中で産んじゃいました」的なニュースがあるように、予期せぬ時に産気づくことは稀にあること。
で、特に多いのが初産婦でなくて経産婦が突然産気づいたと思ったら出産しちゃうケース。
要するに、突然産気づいても初産婦はすぐに産まれない。
でも、経産婦は過去の経験があるから「そんなにすぐには産まれない」と思っているからパニックになることはよくあること。
だから、3人目だから… と余裕を持っていただけに「誰か呼んできて」となるのは分かる。
でも、自分の経験値から言うと、2人の経産婦なら祥子がやってきた時点で相当ヤバイ状態のはず。
産科のある病院の島まで船で行って、家族が到着してから産まれるってのは、流石に “ドラマ” かな? と。
せめて、島で助産師や町医者が見て「慌てることはないですよ」の一言があれば良かったと思う。
そういうこと…
個人的には、次のやり取りのためのエピソードだから粗探しの対象外だと思う。
祥子「舞 熱は出とらんとね?」
舞「あ…。多分 出てへん。あんなに走ったのに」
祥子「舞が走ったけん 赤ちゃんや 莉子さんや みんなが助かったとよ。
頑張ったね」
あとがき
舞が、少しずつですが、失敗を恐れずに挑戦しては成長していくのが心地よいです。
もう一度書きますが、ものづくりは “完璧” を目指しますが、“完璧” だけが “完成形” ではないってことです。
最後に。
今回はオンライン学会に出席するため休暇の妻と一緒に見て感想を書いたので、投稿が遅れてすみません…
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