夜ドラ「あなたのブツが、ここに」〔全24回〕 (第24回/最終回・2022/9/29) 感想

NHK総合・夜ドラ『あなたのブツが、ここに シングルマザーのキャバ嬢、宅配ドライバーになる』
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第24回/最終回〔全24回〕の感想。
2022年5月。コロナ禍は続いているが、亜子(仁村紗和)はマルカ運輸で宅配ドライバーを続けている。亜子は、マルカ運輸にやってきた新人の教育係を任されることになる。美里(キムラ緑子)と中学生になった咲妃(毎田暖乃)は、マルカ運輸の前で出張お好み焼き屋を開いている。そして、亜子に想いを寄せている峯田(佐野晶哉)との恋の行方は?コロナ禍の尼崎を舞台に宅配の世界を描いた人間ドラマ、最終回。
---上記のあらすじは[公式サイト]より引用---
原作:なし
脚本:櫻井剛(過去作/表参道高校合唱部!、4分間のマリーゴールド)
演出:盆子原誠(過去作/カーネーション、とと姉ちゃん、おちょやん) 第1,5,最終週
梛川義郎(過去作/純と愛、べっぴんさん、おちょやん) 第2,4週
佐原裕貴(過去作/おちょやん) 第3週
音楽:森優太(過去作/ホリミヤ)
制作統括:櫻井壮一(過去作/西郷どん、おちょやん、阿佐ヶ谷姉妹の~)
※敬称略
見終えた後に感じたのは、「まさに、秀逸なエピローグ!」
最終回を見ながら感じたのは、「これは、いい感じの予感しかない…」で。
見終えた後に感じたのは、「まさに、秀逸なエピローグ!」だった。
これ以上の感想は必要ないし、あれこれ解説するのも野暮ではあるが、ここで終わると当ブログの存在意義がなくなるから、今回の “みっきー視点” で気がついたことを書いてみる。
顧客の種田について、ちょっと掘り下げてみる…
まず、冒頭の初回配達時にはパンツ姿で玄関に現れて、主人公を驚かせた種田(徳井優)について。
本作が始まってから、亜子(仁村紗和)と宅配先の顧客との関係性の変化を綴るシークエンス(シーンがいくつか集まって一つのエピソードをつくる一区分)の一人目にふさわしい人物の登場だ。
何せ、変化が見た目でわかりやすい(笑)
いや、これも演出なのだ。
当ブログではこれまで幾度か書いて来た “衣装の色の意味” からしても間違いないはずだ。
ちなみに、その昔に美術スタッフの仕事をしていた頃にカラーセラピストやインテリアコーディネーターの勉強をしたことがあって、それから何となく興味を持っている私…(その職業には就かなかったが)
最終回で種田が全身にまとっていたのが “紫色”。
紫色を好きな人、紫色を着る人は、カラーセラピーの観点では、「感情が豊か」、「人と同じでいたくない」、「感情豊か」、「繊細」、「内面を見せたくない」、「刺激を求める」などの特徴がある。
要するに、社交的だがミステリアスでちょっと近づきにくいが、距離感を保てば心を開いてくれる人なのだ。
だから、まさに種田さん… ってことだ。
このように、今作の美術スタッフさんは各登場人物の衣装の色で “キャラ分け” をしている。
先日も触れた峯田(佐野晶哉)のTシャツの色でミネケンの心情を描き分けるのと同じだ。
最終回は、種田や峯田以外にも衣装の色で内面を演出しているキャラがいたので、各自で見つけると面白いと思う。
コロナによる"特別な日常"が気づけば"普通の日常"になって
さて、先ほど書いた亜子と宅配先の顧客との関係性の変化を綴るシークエンス(複数のシーンで構成される集合体)で印象的に描かれたのが、亜子と顧客の “今の日常” だ。
そう、今回の最終回の全編、いや「全24回」で徹底的に描かれたのが “コロナ禍の日常” だ。
ここが、今作が多くの人に指示された大きな理由だと思う。
なぜなら、私たち視聴者にとってもコロナ前は “三密を避ける” ような生活は当初 “特別な日常” だったのに、今や “普通の日常” なのだ。
この “特別な日常” が “普通の日常” になって、戸惑い、悩み、苦労して、それでも “慣れるしかない” ことの中から喜びや楽しみや幸せを見つけてきたのは、亜子たちも私たちも同じなのだ。
だから、多くの人が亜子たちに “共感” したのだと思う。
亜子の「毎日やんねん」にすべてが集約されている
今作が評価された理由はほかにもある。
例えば、フィクションの “ドラマ” だとしても、一定の “リアル感を追求した” こと。
確かに、シングルマザーがキャバ嬢から宅配ドライバーに転身したというのは、ちょっとセンセーショナルだ。
しかし、それはあくまでも設定上のことであって、展開そのものは “騒動” というほどの “作り物” はない。
むしろ、仕事、親子、夫婦、コロナが原因で起こる突発的な “出来事” ばかりであり、そこから広げただけ。
だから、最終回だって、「主人公が一人前の宅配ドライバーになりました、めでたしめでたし!」的なサクセスストーリーで終わっておらず、むしろ、終盤で亜子が笑顔で言った次の台詞に集約されるのではないだろうか?
亜子「毎日やんねん。そう とにかく毎日」
この台詞こそが今作のテーマの一つであろう “普通の日常” を言い当てている。
従って、そこらの “ドラマ” 特に “某朝ドラ” で見かけるような、ご都合主義的な騒動はないし、うわべだけの台詞もないし、これ見よがしに恋バナもない。
しかし、それが、最近の “ドラマ” にちょっと飽きてきた視聴者、もちろん私も… の、心をつかんだと思う。
「こんな連ドラ、こんな朝ドラが見たかったんだよ」と。
最終回も"当たりくじ付きの空色のアイス"の使い方が秀逸!
そして、“連ドラ” の最終回として、私が好きなパターンの “回収” があった。
まあ、これを “回収” と呼ぶべきかは微妙なところだが、敢えて “回収” としておく。
それは、今作の当初から登場していた “当たりくじ付きの空色のアイス” の使い方だ。
娘が母の初仕事を応援する時や、母が娘が学校でいじめを受けていると知って寄り添う時、前回では峯田が心の闇から抜け出した先輩として、心の矢意をさまよっている亜子の背中を押すという “見えない当たりくじ” が描かれ、最終回では亜子の夢を見届ける役を認めてもらうために “見える当たりくじ” が描かれた。
今作には “騒動” はないと書いたが、“当たりくじ付きの空色のアイス” を用いた “励まし” や “希望” や “感謝” がある。
それには、劇中に度々登場した “飴ちゃん” や、宅配ドライバーと顧客との「ありがとう」、「ありがとうございます」にも通じるものがあるような気がする。
「空色」には、「青い空」のイメージから、開放的になりたいとき、希望を感じるとき、自然体でいたいときなどの感情を表すとされているから、きっと “飴ちゃん” よりも、より爽やかで特別感あり、更に季節感を醸し出せる “当たりくじ付きの空色のアイス” を映像に利用したのだろう。
“連ドラ” として一つのアイテムに共通の意味を持たせて複数回使うのは、難しいことだが見事に成功したと思う。
そして、「空色」から広がって、作品は終わっても、同じ「青空」の下で亜子や咲妃(毎田暖乃)たちも “普通の日常” で頑張っていると思えば、自分も頑張らないと… と、思わせてくれた作品だ。
あとがき(その1)
ネットニュースなどを見ても、今作が予想以上に評判が良かったようです。
NHKの番宣の量も、出演者も “朝ドラ” とは比較になりませんが、それでも評価が高かったのは、内容が良かったからだと思います。
やはり、「まるで、どこかでリアルに起こっているような普通の日常」を描くのに徹底的にこだわったのが、成功のカギかなと。
結局、作り物、張りぼてみたいな “ドラマ” に、人を惹きつけるものはないのですよ。
あとがき(その2)
きっちりとした結末は描かれていませんし、各登場人物の掘り下げもほぼやっていませんから、ぜひとも続編やスペシャルドラマを期待したいです。
あとがき(その3)
最後に、演出部と美術スタッフの仕事っぷりが感じられる記事をご紹介します。 こりゃあ、成功するはずですよ。
『バカサバイバー』のED制作秘話と、ドラマにこめた想い 『あなたのブツが、ここに』制作統括に訊く|まいどなニュース
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