朝ドラ「ちむどんどん」の読者様コメントにみる“木を見て森を見ず”のもったいなさ

©NHK
作品の粗探しや重箱の隅を楊枝でほじくること、脚本家などの人格否定や俳優の個人攻撃が目的ではないことをご理解ください。
最近、Web拍手コメントに"自己主張を書く人"が増えて…
ハイサイ~ 皆さん、管理人の “みっきー” です!
NHK連続テレビ小説(以下:朝ドラ)『ちむどんどん』のコメント受付を閉鎖しているからでしょうか、最近 Web拍手コメントに自己主張を書く人が増えており、ちょっと困惑しております。
例えば、前回(9月13日放送・第112回)では「これって、イタリア料理への冒涜ですよね?」と私に同調を求める書き出しで、粗探しの結果を延々と拍手コメントして書いてくださるわけです…
もちろん、ここで全文は書きませんし、申し訳ありませんが当ブログの立ち位置としてお返事もしませんけど。
コメントの趣旨は、前回で「房子(原田美枝子)が清恵(佐津川愛美)と飲むために抜栓したワインが赤ワインなのはおかしいですよね?」というもの。
「POMINO」のエチケットの赤ワインは、時代考証が雑…の主張
ワインに詳しくない人のために、ワインを飲むのが大好きな私がうんちくを書きますね。
房子が抜栓した “赤ワイン” のエチケット(ラベル)には、イタリア・トスカーナ州のポミーノ地区をイメージさせる「POMINO」と印字されていました。
現在のポミーノ地区は、イタリア国内でも偉大な赤ワインの産地であるトスカーナ州の “秘宝” とも呼ばれ、特に “白ワインの銘醸地” として有名な場所。
だから、そもそも論として、「ポミーノ地区」でおすすめなのは “白ワイン” が一般的なのです。
でも、房子が開けたのは “赤ワイン”。
「イタリア料理への冒涜」の主張は間違ってはいない
で、ここからがツッコミどころ。
確かに、現在は 「ポミーノ地区」には「POMINO ROSSO(ポミーノ ロッソ)」という赤ワインがありますが、生産初年度が1983年なので、劇中の時代(1979年)には “ポミーノ地区の赤ワイン” は “この世に存在しない” のです。
「POMINO ROSSO(ポミーノ ロッソ)」を詳しく知りたい方は、下記のブログが参考になります。
フレスコバルディ:ポミーノ ロッソ 1985 その2 | 古きイタリアワインの魅力を読み解く
コメント投稿者さんたちは、このことを “イタリア料理への冒涜” と言っているのだと思います。
はい、主張自体は正しいです。
でも、でも、でもね。
以前に当ブログでも書きましたが…
料理への冒涜を公言している作品の粗探しの無駄さ
NHKドラマ・ガイド『ちむどんどん Part1』(NHK出版)に収録されている、主演の黒島結菜さん、脚本家の羽原大介氏、制作統括の小林大児氏、チーフ演出の木村隆文氏による座談会の中で、羽原氏が次のように語っているのです。
ここで白状しますと、僕たちおじさん3人は料理の知識が全くないんです
材料も調理法も分からないので、脚本に「××を××する」などと書いておいて、あとでご指導いただくんです(笑)
そう、イタリア料理だけでなく、このトップ3のおじさん3人は(私も立派なおじさんですが)最初から “食を冒涜して” 作品制作に臨んでいるのですよ(怒)
だから、何度も書くのです… 今作において特に “食” に関して、粗探しや重箱の隅を楊枝でほじくるようなことをしても無駄だって。
時代考証のミスの粗探しをやって、何になりますか?
で、私はこの類のコメントを読む度に次のように思うのです。
むしろ、この類のコメント投稿者さんたち自身が 「多分、今回もドラマがどこか間違えているだろうな?」と期待して、当然のようにネット検索して “間違いを指摘” しているだけでは? と。
私も当初は粗探しをやっていましたし、他のドラマではツッコミをやっているので、そういうドラマの楽しみ方を、全否定するつもりはありません。
でも今作については、上記の羽原氏の発言を知ってやめたのはご存じの通り。
だって、私は今作に “時代考証ミス” を期待しているわけではないからです。
そして、今思うのは、「時代考証のミスの粗探しをやって、何になりますか?」ってことなんですよ。
まあ、私が今作の本質を掘り下げる行為だって、まわりまわれば「それをやって、何になりますか?」ってことですけど(苦笑)
「監修」や「美術部」のスタッフは一体何をしていたのか?
それと、もう一つ言っておきたいのは…
今作の「風俗考証」「民俗学考証」「イタリア料理考証」「イタリア料理指導」「フードコーディネート」「料理監修」をはじめとした “その道のプロ” と、その外注スタッフを束ねるべき「消えモノ(料理など)担当」「小道具担当」「持ち道具担当」などを含めた「美術部スタッフ」はいったい何をしているのか? と。
脚本家も演出家も制作統括も本人たちが「料理の知識が全くないんです」を認めたから、前述の “その道のプロ” を外部スタッフとして契約して、美術部スタッフに協力を仰いだはず。
だったら、“その道のプロ” として少なくとも素人からはツッコまれない程度の監修、いや、敢えて言いますが “指導” を美術部チーフか担当演出家に進言するべきだと思います。
NHK内のドラマ制作現場の風通しの悪さと真剣さの欠如か…
ただ、現実は簡単ではなくて。
「〇〇監修」「〇〇指導」として脚本家や演出家に意見を提出しても、全体の構成や映像的な面白み、スポンサーとの関係性などを優先させるために “その道のプロ” の意見は採用されないことも多いです。
これは、私の妻が医療関係者なので、その知り合いで「医療監修」や「看護師監修」などでテレビドラマや映画で活躍している人たちから直接聞いた話ですから間違いないと思います。
「トップ3」は料理に関心がなく、“その道のプロ” がいるのに、“食” に限らず “沖縄方言” などを含めた映像表現において、ここまで数多くの “史実や現実との差異” が平然と準備され、撮影され、編集され、チャックされ、放送されてしまうのはなぜか?
もう、いろいろ考えても、最もわかり易いのは「NHK内のドラマ制作現場の風通しの悪さと真剣さの欠如」が元凶でないかと思うのです。
誰が空瓶に「赤い水」を入れて "赤ワイン" にしたか?
前述の「POMINO」のワインの話に戻りますが、脚本にも台詞にもどこにも「POMINO」なんて出てこないわけですよ。
そうなると、普通に考えれば演出部と美術部が話し合って「このシーンは赤ワインにしよう」ってなったはず。
この時点で演出部から「POMINO」にしようなんて提案する可能性は低いです。
だとすると、撮影用のワインのボトル(中身は赤い水(水とは限りません)だから)を用意するのは美術部スタッフの「小道具係」か「持ち道具係」で、NHKですから本物のボトルは使えないから、架空のエチケット(ラベル)を作って貼るわけですよ。
問題は、その「係」にワインの知識があるか?
無いなら、「イタリア料理考証」「フードコーディネート」「料理監修」あたりにお伺いを立てて「どんなデザインのラベルにしましょうか?」と聞くはず。
で、その時のチェックで「イタリアワインなら “POMINO” がいいと思います」って、ラベルは決まった可能性はありますね。
ただ、問題は「POMINO」のエチケットをプリントして貼り付けた空瓶のワインボトルに、誰が「赤い水」を入れて “赤ワイン” にしたか?
ここが運命の分かれ道。
なぜなら、あのシーンの撮影には “料理” がないので、撮影現場に「イタリア料理考証」「フードコーディネート」「料理監修」がいない可能性があるから、美術スタッフだけで「赤い水」を入れて「赤ワイン」にしちゃった可能性があるってこと。
そうなると、例えば私が助監督として撮影現場にいたと仮定して、「監督、あれ、白いワインじゃないと時代的におかしいですよ」とうんちくを言っても通りませんよね。
それこそ、朝ドラの撮影現場は忙しいから、「もう用意した赤ワインでいいよ」って… ってなる。
「演出家になりたいなら、美術スタッフで修業をしなさい」…
ここで、私がまだ某テレビ局や映画撮影所で美術スタッフとしてアルバイトをしていた、30年以上大昔の話をしますよ。
私が映像学校の学生の時の恩師が、「演出家になりたいなら、まず美術スタッフで修業をしなさい。演出家はフレーム内に映るすべてをコントロールできないといけないから、まずは美術を制するべき!」と教えてくれて、ある美術製作会社のバイトにねじ込んでくれました。
それで、時代劇や戦争映画、医療ドラマや刑事ドラマ、近未来モノなどの超下っ端のスタッフもどきとして3年くらい働かせてもらいました。
まあ、勉強になりましたよ。
だって、20歳代前半の小僧が、様々な “その道のプロ” の考え方や物事のとらえ方や矜持、「監修や指導」としての映像とのかかわり方など、バイト料をいただいて聞けちゃうんですから、大儲けですよ(笑)
この頃の勉強が、今は「すぐに粗探しをやっちゃう」とか「ロケ地の使い回しがわかっちゃう」とか「私ならこうやる」みたいな思考回路につながっているわけです。
誰かが「赤い水」を「黄色い水」にするだけで回避できた
おっと、話を元に戻しましょう。
結局、もうだいぶ前からになりますが、日本のテレビ業界は分業化が進んでいるうえに、省力化と時短勤務が奨励されているため、それこそ大昔のように、各スタッフが気になったところをとことん追求して現場に反映するなんて “贅沢” ができなくなっているのです。
今回の「POMINO」のエチケットの赤ワインボトルだって、事前の徹底的な調査と話し合いがあり、更に撮影現場での綿密な最終チェックが行われれば、回避できた案件だと思います。
だって、誰か一人でも異様さに気づいて発言して “ネット検索” すれば、単純に「赤い水」を「黄色い水」にするだけで粗探しの対象にはならなかったわけですから。
結局、NHK(に限りませんが)のドラマ制作現場における “風通しの悪さと真剣さの欠如” なんですよ、わかっていただけます?
「おじさんビジネス用語」に「全員野球」というのがあります…
また、話を逸らしますよ。
私は今テレビドラマ業界で働いていませんが、イベント業界では珍しいフリーランスの宴席ディレクターをやっています。
ここ最近、コロナ禍で大きな案件はやっていませんが(涙)
要するに、ホテルで開催されるいろんな宴席(晩さん会、学会、祝賀会、セミナー、表彰式、社葬、結婚披露宴など)を取り仕切るのが仕事ですが、私以外のスタッフは料理担当からホテルスタッフに至るまで全部別々の組織の人たちをコントロールしなくちゃいけない。
そうなると、流石に孤高の私がジタバタしたって、末端のことまで気が回りません。
だから、私が常に意識するのは…
●すべてのスタッフ間の風通しを良くすること
●最終決断は自分が責任を取る
…の二点だけ。
そして、「何でも良いから、気づいたら私に言ってください」と最初に宣言する。
そうすると、例えば、料理部門のソムリエが「あと1度 室温を下げた方が次にお出しするワインがおいしくなります」とか、会場コンパニオンさんが「会場後方の数名のお客様が<女性のスピーチだけ聞き取りにくい>とおっしゃってます」とか教えてくれます。
「おじさんビジネス用語」に「全員野球」なんてのがありまして、若い人は知らないと思いますが、「全員が実力を出し切ってチームワークで課題や仕事に挑むこと。一致団結」の意味です。
「個人主義」の今どきははやらない言葉ですが、でもどこかで「自分の意見もある!」って人はいるはずで、その貴重な意見を取りこぼさないことが、全体のクォリティーを上げることではないかと思います。
今作は、そこが完全に欠落しているから、毎回ツッコミどころ満載になってしまうのは、致し方の無いこと。
だから、粗探しや重箱の隅を楊枝でほじくっても、何の意味もないように思います。
あとがき(その1)
なんか、堂々巡りのような話になって、申し訳ございません。
ただ、毎回映像をくまなくチェックして粗探しをしても、作っている本人たちが無意識でやってしまったことを、いくらツッコんでも意味が無いかなと。
でも、それを言っちゃうと脚本や演出の本質的、根本的なおかしな点を言及しても、意味が無いかも?
しかし、流石に全体の構成を考えるのは無意識ではできないし、3人集まれば多少の協議はあるはずなので、その上での本質的におかしい部分を指摘することは、「当初にきちんと考えれば防げたはず」なので、最終回まで本質に迫ろうと思います。
あとがき(その2)
そして、ドラマを楽しむためには…
「木を見て森を見ず」の如く “近視眼的になることでチャンスを逃す可能性がある” し、逆に「鹿を追う者は兎を顧みず」のように “大きな獲物に固執することで、小さなものを見逃してしまう” こともあるので、両方バランスよく見るのが、より一層深く “ドラマ” を楽しむ方法だと思います。
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