夜ドラ「あなたのブツが、ここに」〔全24回〕 (第11回・2022/9/7) 感想

NHK総合・夜ドラ『あなたのブツが、ここに シングルマザーのキャバ嬢、宅配ドライバーになる』
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第11回〔全24回〕の感想。
緊急事態宣言が出されることになった大阪。亜子(仁村紗和)の宅配先も、客が来ずに店が潰れてしまっているなど影響を受けていた。お月さんでは咲妃(毎田暖乃)が発案したお好みクレープを発売する日が迫っていたが、咲妃はいつもの元気がない。亜子に対しても反抗的な態度を取っていた。亜子は咲妃のことで悩むが、本当のことには気づけずにいた。実は咲妃は学校でいじめられていたが、亜子には言えずにいたのだった。
---上記のあらすじは[公式サイト]より引用---
原作:なし
脚本:櫻井剛(過去作/表参道高校合唱部!、4分間のマリーゴールド)
演出:盆子原誠(過去作/カーネーション、とと姉ちゃん、おちょやん) 第1週
梛川義郎(過去作/純と愛、べっぴんさん、おちょやん) 第2週
佐原裕貴(過去作/おちょやん) 第3週
音楽:森優太(過去作/ホリミヤ)
制作統括:櫻井壮一(過去作/西郷どん、おちょやん、阿佐ヶ谷姉妹の~)
※敬称略
人は "見えない恐怖” は何より怖いもので…
劇中の時間軸は、2020年4月、2021年1月に続いて、3回目の緊急事態宣言の直前だ。
思い返すと、コロナ禍が始まって丸一年経過し、世間の風潮は “慎重派” 一辺倒だったのに対して、ぽつぽつと “様子見派” は増えてはきたが、まだまだ目に見えない脅威への “恐怖心” と戦っていた頃だ。
そして、この3度目の緊急事態宣言が終わった夏頃から「エッセンシャル・ワーカー」と呼ばれる人たちへの世間の感謝の声が上がって来たから、そんな時節の前でもある。
従って、まだまだ「宅配業者さんはコロナを運んで来る」とか「夜の街関連の人はばい菌だ」とかの声は聞いたし、私は妻が医療従事者だから いわれも無き誹謗中傷を受けたのは事実。
まあ、人は “見えない恐怖” は何より怖いもので、2011年の東日本大震災の時も、しばらく福島ナンバーの車は「放射能が付いている」と毛嫌いしたり、県外に被災した子供たちがイジメを受けている何て報道をよく目にしたものだ。
目に見えない脅威への "恐怖心" という共通項で…
今回の15分間が丁寧に描いたのは、目に見えない脅威への “恐怖心” という共通項で、下記の4つ。
●コロナ感染拡大の先行き不透明さ
●お互いの顔を見たことがない咲妃(毎田暖乃)とクラスメイトの愛美(石川小梅)の関係
●不安のぶつけ先になっている咲妃の気持ち
●里奈(高橋真彩)に会うことができない亜子(仁村紗和)の気持ち
中でも、親の事情(都合)で厳しい立場に追い込まれている娘の咲妃と、病院に運ばれた亜子の二人の子どもを中心に、我が子と我が子同然に心配している母の亜子の気持ちの描き方が良く出来ている。
悲しいかな、我が子の方は隠していることに気づかず、我が子同然の方は積極的にかかわりたいと思っているギャップが切なく描かれた。
だから、孤独な咲妃が更に切なく愛おしく映るのだ。
咲妃のマスク無しの笑顔と、アプリのマスク無しの作り笑顔
今回も演出についてちょっとだけ書いてみる。
前回同様に、遠景の使い方が秀逸だったのが、冒頭の下校途中の咲妃と愛美が公園を歩くシーンだ。
1カット目は顔が判別できないくらいの超ロングショットで、二人の会話を見せることで、「表情が見えない会話」を視聴者に疑似体験させた。
2カット目はやや寄りのロングショットで焦らして、3カット目で顔を認識できるバストショット(胸から上)で表情を映して、やり取りも “顔” の話になる構成だ。
ここまでもコロナ禍の小学生や転校生の心情を上手く映像で見せてはいるが、このあともさらに工夫が施されている。
それは、咲妃がマスクを外した顔をクラスメイトの愛美に見せるカットで、その “マスク無しの笑顔” を視聴者には見せずに、カットチェンジしてマッチングアプリの “マスク無しの作り笑顔のプロフィール写真” に切り替えた。
更に、亜子は「修正ですよ」とセクハラ発言が多い原(守谷日和)に忠告するが、のちに、我が娘である咲妃も母に心配させたくないから笑顔を “修正(偽っている)” という含みがあるのが良い。
これで、次回で亜子がいじめに気付くのかどうか、咲妃が気になる展開になっているからだ。
宅配業者ならではの葛藤や苦悩が描かれた
また、敢えて書くほどのことではないが。
宅配業者だからこそできることと、本来は社会インフラでやるべきことが、今の日本では上手く歯車の両輪のようになっていないことも、さり気なく描かれた。
特に良かったのは、武田(津田健次郎)の立ち位置だ。
亜子には「宅配業者がやることでない!」と言いながら、里奈には「あいつが…」とあくまでも自分ではなく亜子が心配していること告げたシーン。
やりたくても、やれない。やるべきことでないけど、やらずにどうする? 的な矛盾した宅配業者ならではの葛藤や苦悩が描かれた。
やはり、タイトルにあるように “ブツ” が “人と人をつなぐ” のだ。
そのことが、しっかりと丁寧に描かれたことに価値と意味があると思う。
あとがき
1年ちょっと前の “リアル” を描いているため、前回に続いてちょっと重たい内容ですが、いいさじ加減でコミカルな描写もあって、メリハリのあるドラマになっていると思います。
こんな秀逸な夜ドラのあとに、『ちむどんどん』を見て感想を書くと思うと…(苦笑)
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