"アイドル"の原点の物語 特集ドラマ「アイドル」 (2022/8/11) 感想

NHK総合・特集ドラマ「アイドル」
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『戦時下の元祖アイドル・明日待子(古川琴音)の青春の日々を描く』の感想。
昭和初期、上京した明日待子(古川琴音)は、佐々木千里(椎名桔平)の目に留まり、ムーラン・ルージュ新宿座の座員となる。先輩の高輪芳子(愛希れいか)に憧れ、看板俳優の山口正太郎(山崎育三郎)や同僚の小柳ナナ子(田村芽実)らと稽古に励む中、ある日突然、舞台のセンターに立つことに。やがて絶大な人気を誇り、トップアイドルとなった待子。須貝富安(正門良規)への恋も芽生えた矢先、戦争が待子の人生を変えていく…。
---上記のあらすじは[公式サイト]より引用---
原作:なし
脚本:八津弘幸(過去作下町ロケット、陸王、ミス・ジコチョー、おちょやん)
演出:鈴木航(過去作/あさが来た、べっぴんさん、わろてんか、スカーレット)
ステージ演出:池田泰洋(過去作/「うたコン」、「NHK紅白歌合戦」)
美術:近藤智(過去作/義経、とと姉ちゃん)
音楽:宮川彬良(過去作/ひよっこ、ひよっこ2、マツケンサンバⅡ)
作詞:及川眠子(過去作/新世紀エヴァンゲリオン主題歌「残酷な天使のテーゼ」)
振付:梅棒(天野一輝 楢木和也)、suzuyaka
TAP振付:HideboH(過去作/2003年の映画「座頭市」農民のタップ&ストンプシーン出演・振付)
制作統括:内田ゆき(過去作/アシガール、スカーレット、これっきりサマー、六畳間のピアノマン)
※敬称略
<史実>に基づくオリジナルの青春ストーリー
昭和初期から終戦間際の戦時下の日本で、約20年間で1日も休むことなく営業を続けた東京・淀橋区(現・新宿区)にあった大衆劇場「ムーラン・ルージュ新宿座」を舞台に…
劇場のトップ・アイドルに登り詰めた “明日待子(あしたまつこ)” の<史実>に基づくオリジナルの青春ストーリー。
出演者のアイドルたちはファンと共に成長していった
劇場「ムーラン・ルージュ新宿座」は当時 “アイドルに会いに行ける劇場” とされ、出演者のアイドルたちはファンと共に成長していった。
そして日本が戦争へと突き進む中でも劇場は営業し、アイドルはステージで歌って踊って、ファンの声援にこたえ続けた。
しかし、戦争が激化してくるとダンスやレヴューといった派手な演目は検閲でダメになり、戦意高揚のための日本軍によるいわゆる “プロパガンダ” が始まり、主人公はファンを励ますつもりで戦地に慰問に行くが、自分は励ましていると思っていたが、実は…
"戦時下のエンターテインメント" の世界を描いたドラマ
今作を「戦争ドラマ」、「反戦ドラマ」だとして見ると恐らく肩透かしを食らう。
それは、その視点で今作を見ると、戦争に関する多くの描写が雑であり、中途半端だからだ。
しかし、今作は “戦時下のエンターテインメント” の世界を描いたドラマなのだ。
“戦時下のエンターテインメント” を、特に演じる側にとって何なのかを、若き主人公の女性の “アイドルの青春” を通して描いている。
従って、劇場での歌やダンスのシーンが物語の中にふんだんに盛り込まれていた。
出演者も、なかなか良かった
また、主演で主人公を演じた古川琴音さんは朝ドラ『エール』でヒロイン・音の娘役、山崎育三郎さんも同『エール』で久志 役、待子のファンとなる須貝を演じた正門良規(Aぇ! group/関西ジャニーズJr.)さんは同『スカーレット』でヒロインの妹の奈緒子の恋人・鮫島を演じた。
待子にトップの座を奪われる高輪芳子 役には元宝塚歌劇団月組トップ娘役の愛希れいかさんと豪華な布陣だった。
ラストで「美空和枝」という少女が登場したが…
ちなみに、今作のラストで「美空和枝」という少女が登場したが…
これは昭和の大スター・美空ひばりさんが昭和21年5月頃、少女時代に母親と「ムーラン」を訪れて、一度だけ「ムーラン」で本番終了後に歌ったという史実に基づいており…
当時は「加藤和枝」だったのを、ドラマとしてわかりやすく「美空和枝」とアレンジしたと思う。
未見なら映画「ライフ・イズ・ビューティフル」を見て欲しい!
1997年公開のイタリア映画『ライフ・イズ・ビューティフル』をご存知だろうか?
“イタリアのチャップリン” と呼ばれたロベルト・ベニーニ監督・脚本・主演作品で、ロベルトの演出が秀逸な作品だ。
内容は、第二次世界大戦下のナチの強制収容所に収監されたユダヤ系イタリア人の家族の物語を、親子の視点でユーモアと残酷と慈愛を絶妙に絡ませて描いた秀作。
未見の人にはぜひ見て欲しいので、詳しい内容は書かないが…
「これは素朴な物語。話すのは簡単ではないけれど。童話にように悲しみがあり、童話にように驚きと幸せにあふれている。」
物語は、上記の主人公である父・グイドの愛息・ジョズエのナレーションで始まる。
戦争の悲惨な痛みを全編を悲痛な映像の連続で表現せずに、時々明るくコミカルな描写を含めることで、そのコントラストの繰り返しによって、ボディブローのように悲痛な戦争が効いてきて自然と平和の尊さが身に染みる作品だ。
この『アイドル』というドラマも、戦争の暗部だけを表現するのではく、明るく、時にエロティックで、コミカルな演目(出し物)を随所に挟むことで「戦時下のエンターテインメント」を通して、戦争の悲惨さと平和の尊さが伝わる点は、映画『ライフ・イズ・ビューティフル』とお世辞にも近くはないが
決して足元にも及ばないほど、縁遠い感じはしなかった…
今作を見る前に歴史教養番組「歴史探偵」を見るのをおすすめ
また、今作は下記の2つの番組とコラボしている。
●歴史教養番組『歴史探偵』(探偵所長:佐藤二朗)
・テーマ「歴史探偵 "戦争とアイドル"」
・8月10日(水)午後10:00~ 放送済み
●#あちこちのすずさん2022 今、戦争を見つめてみる
2022年8月12日(金) 午後7:30~8:42 [総合]
【出演】片渕須直(映画監督)、千原ジュニア(芸人)、伊野尾慧(Hey! Say! JUMP)、黒柳徹子、池田エライザ(俳優)
個人的には、今作を見る前に『歴史探偵』で基礎学習をしてから見るのをおすすめしたい。
見逃し配信は、下記のリンクからどうぞ。 https://plus.nhk.jp/watch/st/g1_2022081025720 配信期限 :8/17(水) 午後10:49 まで
あとがき
「1時間13分」で戦前から戦後まで描くのですから、所詮は無理があります。
ですから、全体のバランスとして、ちょっとステージのシーンが多過ぎたような気もしました。
でも、人間ドラマを多めにしてしまうと、ありきたりな「戦争ドラマ」になってしまいますから、悩みどころだったと思います。
ただ、ステージのシーンは楽曲やダンスを含めて、舞台演出も凝っており見応えはありました。
上手く作れば、こういうメリハリのあるドラマが朝ドラになると良いなぁと思います。
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