未来への10カウント (第9話/最終回・拡大スペシャル・2022/6/9) 感想

テレビ朝日系・木曜ドラマ『未来への10カウント』
公式リンク:Website、Twitter、Instagram
第9話/最終回・拡大スペシャル『最終回!それぞれの未来へ―』の感想。
「圭太の父親になってほしい」と、桐沢(木村拓哉)に告げた葵(満島ひかり)。桐沢は、ボクシング部のコーチと非常勤講師、そして焼き鳥店…これまでの時間を取り戻すかのように、全てに全力で取り組む。そんな中、ボクシング部指導中の桐沢に突然の異変が…?悲願のインターハイ出場を懸け、予選に挑むボクシング部の運命は?桐沢と葵の恋の結末は?それぞれの未来へ―熱き青春スポーツドラマ、衝撃の最終回?
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
原作:なし
脚本:福田靖(過去作/ガリレオ、DOCTORS~最強の名医・全シリーズ、龍馬伝、まんぷく)
演出:河合勇人(過去作/お兄ちゃんガチャ、黒崎くんの言いなりに…、Netflix「全裸監督」) 第1,2,5,7話
星野和成(過去作/ハゲタカ、SUITS/スーツ2、イチケイのカラス) 第3,4,6,8,最終回話
音楽:林ゆうき(過去作/DOCTORS~最強の名医、緊急取調室シリーズ、あさが来た)
主題歌:B'z「COMEBACK -愛しき破片-」
約1分間のアバンで、視聴者の期待感を上手くつかんだ演出
どんな結末になるのか、多くの視聴者が気になってしょうがない気持ちで始まった最終回。
その視聴者心理を演出が上手くつかんだのが、約1分間のアバンタイトル。
恋バナ → インターハイ準備 → 芦屋監督登場と一気に畳み込んで「大明神」で、ストンと落とす。そのまま一気にメインタイトル。
このコンパクトな尺の中に上手く詰めこめる演出は、今作では、以前も書いた通りフジテレビ『月9』を多く手掛けた星野和成氏の演出だ。
実は、今作のメイン監督は河合勇人氏。だから、普通の連ドラなら最終回の演出も河合氏が担当するのがお約束。
しかし、今作は、前回と最終回を “セット” と見立てているのだろう。
特に、恋バナの演出は個性が出やすい(経験や好みが強い)から、星野氏で統一したのは、視聴者の見やすさや、わかりやすさを優先させた、丁寧なドラマづくりの表れだと思う。
「登場人物の肩書や名前のテロップ表示」の演出を高評価
この「丁寧なドラマづくり」は、いろいろなところに見て取れる。
例えば、表面的にわかりやすい演出を挙げると。アバンや試合シーンにもあった「登場人物の肩書や名前のテロップ表示」だ。
最近は、意外と省略される演出だ。その理由は幾つもあるが…
1つは、ターゲット視聴者が若いから、役名など容易に記憶できるから必要ないこと。
2つ目は、知りたければ公式サイトを参照してもらえば済むこと。こんなところだろう。
しかし、これまでも書いてきたとおり、今作は主演の木村拓哉さんのモロ同世代からそれ以上の視聴者もターゲットにしていると私は考えている。
そうなると、これだけいろいろと盛り込まれ、若い出演者や本業が俳優さんではない出演者もいると、役名を覚える以前に、誰が何者なのかわかり難くなる。
しかし、「登場人物の肩書と名前のテロップ表示」があると、耳から入って来る台詞の情報と視覚情報の二段構えになって、理解しやすくなる。
そうなると、ドラマの内容にも気兼ねなく入っていける。
これ、人によっては「クドい」と思うかもしれない。
しかし、テレビドラマが昨今の「19歳~49歳の女性向け」にどんどんつくられていく中で、幅広い視聴者層に向けて、わかりやすさ重視のドラマ制作は、私は “テレ朝ドラマらしい” と思う。
「キムタクでスポ根ドラマ」を最後まで描き切ったのが秀逸
では、「幅広い視聴者層に向けて、わかりやすさ重視のドラマ」だから、ぬるま湯的な作品になっていたかと言えば、むしろ逆だ。
それが顕著なのは、「キムタクでスポ根ドラマ」という企画そのものだ。
好みはあると思うが、私は “職業人” を演じる木村拓哉さんの役の憑依はスゴと思っている。
だから、木村さんで “元ボクサー” で “コーチ” で “非常勤講師” で “焼き鳥屋” で… なんて企画をやったら、「今度のキムタクドラマも…?」みたいになるのは、つくり手もわかっていたはず。
その上、22時スタートなら別だが、21時スタートの放送枠は子供が見る可能性が高い。そんな放送枠で、昨今のコンプライアンス重視の作品制作を鑑みれば、スポ根ドラマで、更にボクシングで、何段階もハードルが高い。
しかし、今作は、「格闘技と暴力の違い」や「暴力には暴力で対抗するのではなく、ボクシングで培われる精神的な強さで向き合うこと」などを、積極的に描いてきた。
この辺は、最終回まで、しっかりと描き切ったと思う。
制作陣が"物語"で面白くしようと頑張った成果が出ていた
「しっかりと描き切った」と書けるのには、別の理由もある。
それは、最近の連ドラにありがちな、考察好きを喜ばせるような複雑な仕掛けや奇を衒った展開、バズれば勝ちのようなあざとくて露骨な展開が、殆どなかったこと。
まあ、皆無ではなかったが、そこを見どころにはしていなかった。そう、結果的にそんな感じになっただけ。
このあたりのつくり方も、つくり手たちが表面的な面白さに走らず、あくまでも “物語” で面白くしようと頑張った成果の表れだと思う。
私は、劇中の猫林教頭(生瀬勝久)の次の台詞が、スタッフやキャストの今作に込めたドラマづくりの矜持に聞こえた。
猫林「確かに 大場校長は厳しい。
しかし その高いハードルを超えようと みんな必死になり
結果 教師も生徒も たくましくなった」
テレ朝のドラマも、主演が木村拓哉さんのドラマも、この調子で突き進んで良いと思う…
部員たちに関しては、意外なほどに平等に見せ場があった
更に、今作は、高校の部活がドラマの舞台。だから、生徒も教師も人数が多い。
だから、最近のドラマなら、視聴率が取れそうな演者のキャラを深掘りして、1話を構成するなんてパターンが多い。
でも、今作は、そこへ行かなかった。
あくまでも、描くのは、「コーチ VS 部員たち」の構造に徹した。
それこそ、「あの人で、もっと引っ張れば視聴率取れそうなのに…」をやらなかったのだ。
もちろん、主人公は別にして、その他のキャラ、特に部員たちに関しては、意外なほどに平等に見せ場があったのはご存知の通り。
やはり、「際立たせるのは主人公」に徹したドラマ制作が、最近のドラマ(特に朝ドラ?)とは大きく一線を画したと思う。
まあ、これが、また好みが分かれる作風にはなったと思うが…
"主人公の再生ヒューマンドラマ"だから息抜きが欲しかった
このように、私としては、今作については、相当に満足度が高い。だから、あえて苦言は無い。
でも、満足度が高いだけに、こうなっていたら、より満足度難かったかな? という部分はある。
例えば、主人公に背負わせた設定の多さだ。
一つひとつ挙げはしないが。
もちろん、「次から次へと…」をやる必要があるのは理解する。
設定が多いわりに、上手く整理して「次から次へと…」に見えたのも大いに認める。
ただ、全9話という構成も相まって、少々情報過多に見えてしまった。
要するに、今作は「主人公の再生ヒューマンドラマ」の側面が大きかったのだから、主人公の人間性を描写することを第一に考えたら、適度な “息抜き” が必要だったと思うのだ。
そう、劇中の登場人物たちにとっては、自分の人生を見つめる時間。
視聴者にとっては、ドラマを咀嚼する時間。
そんな “時間” の余裕が、少しあったら、もっと満足感が高くなったかなと。
では、焼き鳥に例えて… と。ほら、一気に焼き鳥6~10本も食べると思ったより早く満腹なるけど、休み休みだと、あと1~2本はまだ入る! みたいな(違うか?)
文武両道キャラをもう一人くらい増やしたら…
それと、もう一つ。第1話から「文武両道」をうたっていた割に、「文」担当が伊庭(髙橋海人)だけだったのが、ちょっと。
文武両道キャラをもう一人くらい増やしたら、更に「不撓不屈」が今作の “キーワード” として際立って、輝いたと思う。
まあ、あくまでも、さらなる満足度のためにという意味で…
あとがき(その1)
個人的に、驚いているのは、意外過ぎる程に、子役をあざとく利用しなかったことです。
もちろん “コタロー” こと川原瑛都クンの存在感と演技力の賜物でもありますが。
きちんと、桐沢(木村拓哉)と葵(満島ひかり)の “愛のキュービッド” として機能させました。
これは、忘れずに誉めたい部分です。
あとがき(その2)
また、先日も書いた通り、第4話/GW拡大スペシャル『リングの中心で、愛を叫ぶ!? 型破りな恋愛指導で、衝撃結末!!』あたりから、内容が凝縮されて来た今作。
最終回は更に凝縮されました。
これを、詰め込み過ぎだと思う人もいると思いますが。
でも、これ位の凝縮感が、ボクシングドラマらしいテンポの良さに繋がったと思います。
あとがき(その3)
最後の最後に。コロナ禍の撮影で、普通のドラマ撮影よりも至近距離での演技が多かったはずの今作が、最終回まで無事に撮影され、放送されたことに感謝します。
久し振りに、熱い気持ちになれました!
コロナ禍で、未だ仕事が激減中です。
Amazonと楽天市場からお買い物する際は、当ブログ内のバナーなどのリンク経由で買ってくださると、私にポイントが貯まります。
また、ブログを書き続けるモチベーションアップにもなります。
引き続き、皆様のご協力をお願い申しあげます。
★本家の記事のURL → https://director.blog.shinobi.jp/Entry/16945/
【これまでの感想】
第1話 第2話 第3話 第4話 第5話 第6話 第7話 第8話
- 関連記事
-
- インビジブル (第9話・2022/6/10) 感想 (2022/06/11)
- 連続テレビ小説「ちむどんどん」〔全120回〕 (第45回・2022/6/10) 感想 (2022/06/10)
- 未来への10カウント (第9話/最終回・拡大スペシャル・2022/6/9) 感想 (2022/06/10)
- 連続テレビ小説「ちむどんどん」〔全120回〕 (第44回・2022/6/9) 感想 (2022/06/09)
- 連続テレビ小説「ちむどんどん」〔全120回〕 (第43回・2022/6/8) 感想 (2022/06/08)