17才の帝国〔全5回〕 (第2話・2022/5/14) 感想

NHK・土曜ドラマ『17才の帝国』
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第2話〔全5回〕『幸福への選択』の感想。
なお、本作は、2022年春に全話をクランクアップ(撮影終了)しているため、感想には要望などは基本的に書かずに、単純な感想のみとします。
「ウーア」実施地の市長だった保坂(田中泯)は市議会復活を訴えるが、真木(神尾楓珠)は権威に屈せず、街で住民の声を聴き始める。そして、商店街の再開発に反対する住民の「一度失われた風景は取り戻せない」という言葉に心を動かされ、ウーアの未来を住民投票で問うことに。純粋な真木に徐々にひかれていく平(星野源)。真木の志の原点には、‘社会への怒り’があった。
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
原作:なし
脚本:吉田玲子(過去作/サトラレ、帰ってきた時効警察、モザイコ100)
脚本協力:鈴木貴昭(過去作/ハイスクール・フリート、マブラヴ オリタネイティヴ)
演出:西村武五郎(過去作/あまちゃん、リモートドラマ・Living、きれいのくに) 第1,2話
桑野智宏(過去作/ウェルかめ、梅ちゃん先生、あまちゃ、おかえりモネ)
音楽:坂東祐大(過去作/美食探偵 明智五郎、大豆田とわ子と三人の元夫)
Tomggg(とむぐぐぐ)(過去作/音楽ゲームアプリ"DEEMO2"、オンゲキ)
前久保諒(過去作/Dragon Night / SEKAI NO OWARI編曲)
網守将平(過去作/NHK Etレ「ムジカ・ピッコリーノ」(シーズン10)楽曲提供)
主題歌坂東祐大 feat. 塩塚モエカ(羊文学)「声よ」
プロデューサー:佐野亜裕美(カルテット、大豆田とわ子と三人の元夫)
前回の感想に「ウーアの住民の気持ちで観れば…」と書いた
今作にたいへん大きな期待をしているだけに、今回の感想はシビアに書きます…
前回(第1話)の感想で、次のようなことを書いた。
今作は数年後の日本の設定のファンタジーだから、当然「おいおい!」とツッコミたくなる描写は多々ある。だが、ここは敢えて気にせず、自分も実験都市ウーアの住人になったつもりで楽しんだ方が得策だと思う… と。
結局、真木本人が創りたい都市を創っているだけのような…
しかし、今回(第2話)を見て、少し今作に対する印象が変わってしまった。
それは、いろいろ描かれているが、結果的に主人公・真木総理(神尾楓珠)が創ろうとしている実験都市プロジェクト「ウーア」は、真木が創りたい都市を、AI「ソロン」が客観的に市民の声を集計して再構築しなおそうとしているだけでは? と。
真木が一部の市民の声を聞き入れて計画を変えただけでは?
確かに、既存の市議会は「6/20」の反対意見を無かったことにして、再開発計画を推進した。その推進派が汚職や既得権益にまみれた結果だとしても、その結果が民主主義なわけで。
で。今回は市民の70%の投票率の市民投票の結果だとしても、結局は主人公が一部の市民の声を受け入れて、既存の計画をひっくり返しただけに見えてしまったのだ。
前回と今回と似た案件だが、線引きの方法に矛盾を感じて…
ただ、再開発の反対派のウケが良いのは当然だ。そして、推進派の反感を買うのは当然だ。だって、そういう政策が真木のやり方なのだから。そして、ドラマもその部分しか描かない。
まあ、前回と内容はほぼ同じだが、前回は全市民が関わる案件で、今回は一部の市民対象の案件。それを、同じような線引きで決めてしまうのは、流石に矛盾が…
前回の"17歳が帝国を創りそうな怖さ"が薄まってしまった…
今作が描こうとしていることは、分かっているつもりだ。
前回は、弱い立場のはずの市民をマジョリティー(大多数)として味方につけ、マイノリティー(少数派)の議員を犠牲にしても改革を推進した。そこに、“理想の政治” に近づけていくための真木の、計り知れない恐ろしさがあった。
でも、今回では、真木の “嗜好” ほど強くない “趣向” で政治を行っているように感じてしまった。
根本的な問題として「AI」は必要なかったのでは?
今作、根本的な問題として「AI」は必要なかったのでは? もっと単純なファンタジーとして、「総理大臣が17歳の高校生だったら?」で良かったような。
それで、主人公がやりたい放題の独裁政権をつくるのか、市民重視の民主政権をつくるのかだけに焦点を絞り込んで描く。そして更に、主人公の過去、人生観、社会観が、現政権の思惑とどう絡んで行くのかを描くほうが良かったような気がする…
あとがき
キャストも制作陣も豪華。ふんだんな地方ロケと最新のVFXを見ても、NHKとしても巨額の製作費が投入されているのは一目瞭然です。しかし、それが逆効果になってしまったのかも知れません。
要するに、壮大なSF政治エンターテインメント作品に仕上げすぎってこと。
地方ロケと最新映像技術の取り合わせと一緒。リアリティーとファンタージの塩梅がよろしくないのです。どちらにも “振り切れていない” が正しいでしょうか?
いつも感想に書くように、「ドラマは、人間そのものを描くこと」なのです。
ですから、「真木亜蘭」という人間を描くべきで、真木が目指している社会を描くべきで、表面的な社会風刺や政治・政権の問題提起などを軸にしない方が良かったと思います。
今作は “若年層向け” を狙っているようですが、中高年より目の肥えた、且つ、超現実的な若年層は、きれいごとを並べた、説教臭い表面的なSFドラマには反応が薄いと思いますが…
次回からは、ユキという女性が絡んできて、真木本人が掘り下げられそうなので、そちらに進むのを期待します。
★本家の記事のURL → https://director.blog.shinobi.jp/Entry/16853/
【これまでの感想】
第1話
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