連続テレビ小説「ちむどんどん」〔全120回〕 (第25回・2022/5/13) 感想

NHK総合・連続テレビ小説『ちむどんどん』
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第25回〔全120回〕/第5週『フーチャンプルーの涙』の感想。
※ 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
※ また、称賛、絶賛の感想だけをご希望の方は読まない方が良いです。
暢子(黒島結菜)は、兄・賢秀(竜星涼)のおかげで無事に卒業後に上京できることになった。別れの春、妹の歌子(上白石萌歌)は転勤が決まった音楽教師・下地(片桐はいり)から、心に残るレッスンを受けることに。1972年5月15日、沖縄が本土復帰を果たしたその日に、暢子は故郷を離れて単身東京へ去ることに。母・優子(仲間由紀恵)、姉・良子(川口春奈)、妹・歌子に見送られ、夢に向かって出発する。
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
原作:なし
脚本:羽原大介(過去作/マッサン、昭和元禄落語心中、スパイラル~町工場の奇跡~)
脚本協力:新井静流(過去作/舞台「未来記の番人」)
演出:木村隆文(過去作/ひまわり、梅ちゃん先生、ごちそうさん、なつぞら) 第1,2,3週
松園武大(過去作/おひさま、とと姉ちゃん、半分、青い。、エール) 第4,5週
中野亮平(過去作/花子とアン、マッサン、あさが来た、べっぴんさん)
音楽:岡部啓一(過去作/真夜中のパン屋さん)
高田龍一(過去作/ドラマ劇伴無し)
帆足圭吾(過去作/真夜中のパン屋さん)
主題歌:三浦大知「燦燦」
語り:ジョン・カビラ
制作統括:小林大児(過去作/演出:ちゅらさん4、てっぱん、純と愛、CP:ミス・ジコチュー)
藤並英樹(過去作/演出:てっぱん、純と愛、CP:第3夜 転・コウ・生)
※敬称略
注意書き
最初に断っておきます。今回を見て「涙腺崩壊!」、「旅立ちに納得!」、「歌子の歌に感動!」、「懐かしい場面に泣いた!」に該当する人は、絶対に読まないでください。
今日一日、間違いなく “いや~な思い” をします。そうでない方は、自己責任で…
では、書いちゃいますよ。
すべてが "あざとい演出" にまみれた15分間だった…
とにかく、序盤の歌子(上白石萌歌)の歌の字幕に始まって、主題歌の使い方、通常と違う構成、その他諸々、すべてが “あざとい演出” にまみれた15分間だった。
敢えて、“あざとい演出” と書いたのには理由がある。それは、脚本自体、ストーリーの筋書き時代は、そんなに “あざとくない” からだ。
いいや、むしろ、脚本は次週から「新章」になる直前回として、何とかして締めくくらなければいけないし、大団円で終わらないと格好がつかないから、“ベタ” と酷評するほどでなく、至って “普通” だと思う。
なぜ、演出だけが "あざとく" 見えてしまうか?
では、なぜ、演出が “あざとい” のか? あざとく演出が見えてしまうか?「まだ、やるの?」とか「今さら、急に?」としか感じないのか?
答えは簡単だ。
今回で描かれた、主人公が故郷の沖縄を、本土返還の日に離れて、東京に料理人になるために旅立って行く… と言う “結果” に至った、主人公のキャラクター(他の人にはない際立った個性や持ち味)そのものの “薄さ” や “特徴のなさ” と…
キャラを特徴づけ印象付けるような描写が粗雑で足りなかったこと、この2点に尽きると言っても過言ではない。
簡単に言えば、これといった特徴のない主人公で、物語を紡いだところで、普通の筋書きしか書けないってこと。だから、演出があれこれやって表面を飾り付けても、内面、中身はごく普通にしかならないってこと。
『カムカム』の主人公3人には、良くも悪くも特徴があった
私は全く評価していないが、前作の『カムカムエヴリバディ』は、少なくとも今作より、主人公、それも3人に良くも悪くも特徴があった。
だから、「三部構成」をつくれたし、3人が繋がっていたから、頑張って好意的な脳内補完をすれば、何とか自分で物語を “再構築” することができて、腑に落ちたのだ。
主人公の埋没と、3人きょうだいにエピを盛り込み過ぎて…
しかし、今作は、まず主人公が “個性的” という物差しで考えると、あろうことか「四兄妹」の中で最も “埋没” してしまった。これが、1つ目の失敗。
そして、主人公以外の濃い目のキャラの三人に、更に想像以上のエピソードを盛り込んだ。
兄の賢秀(竜星涼)が良い(悪い… か?)例だが。1つのトラブルを描いて落ち着くと、すぐに次のトラブルを描く。これは大小あれど、良子(川口春奈)も歌子(上白石萌歌)も同じだ。
とにかく、プチ騒動とプチ恋バナを重ねるは、続けるわって感じ。これが、2つ目の失敗。
そのために、一見 “物語” のようにも見えるし、話が動いているようにも感じる。しかし、これは、筋書きが動いているだけで、ストーリーが動いているとは言わないのだ。
「筋書き(プロット)」と「物語(ストーリー)の違い
こんな七面倒臭い感想を、ここまで読み進めて下さっている読者さんだから、お礼とお返しに、ちょっとだけ脚本術について書いてみる。
諸説あると思うが、基本的に「筋書き(プロット)」と「物語(ストーリー)」は下記のような違いがある。
●筋書き(プロット)とは…
主人公の物理的な旅(登場人物を開始地点から最終地点まで移行させること)
●物語(ストーリー)とは…
主人公の感情的な旅(登場人物を最初の状態から最後の状態まで移行させること)
要するに、筋書き(プロット)が動いても、物語(ストーリー)が動かなければ、本当の意味で主人公が観客の心を動かすことは出来ないってこと。
だって、筋書きが動いても、主人公の感情は動いていないのだから、観客の感情も動かないのは当然のことだから。
物語(ストーリー)にもなっていないものは"ドラマ"ではない
こうやって考えると分かると思う。
結局、今日時点で、主人公が筋書き(プロット)として、「貧しい家に生まれた → 料理好きの父が亡くなった → 料理大会で料理の腕が認められた → 東京でコックさんになるために沖縄をあとにした」と 主人公の立ち位置的な “地点” が動いても…
肝心な物語(=主人公の感情的な旅)が動いていないのだ。だって、「暢子は 暢子のままで上等」だから、暢子(稲垣来泉 → 黒島結菜)はちっとも変わっていないのだ(笑)
従って、人間そのものを描くことが “ドラマ” だから、物語(ストーリー)にもなっていないものは、“ドラマ” とは言えないということだ。
もっと「暢子は 暢子のままで上等」を活かせば良かった…
これ、もっと父の言葉である「暢子は 暢子のままで上等」を活かせば良かったと思う。
今作は、この言葉を「あなたは、あなたのままで良い」、「変わらなくて良い」と解釈して描いて来た。しかし、それは人間的な “根っこ” の部分、本性とか人間性とかいう深い部分。
そこは変えないで、ある時はしたたかに、ある時は意地を張って、「柔軟性をもって自分らしく生きていく」と、沖縄本土復帰の沖縄に重ねて描けば、暢子の “感情的な旅” や “人間的な成長” を描けたと思う。
今回を見て、暗雲が立ち込めて来たと言わざるを得ない…
前回の感想では、今後 “ちむどんどん” させてくれると期待する… と書いたが、かなり暗雲が立ち込めて来たと言わざるを得ないような。
だって、まだ子ども時代、幼少期なら「暢子は 暢子のままで上等」の解釈を修正して、誤魔化せたかもしれないが。もう、そこを足場にして、次の段階に進んでしまっている。それも、ほぼ主人公は成長しないまま。もしかすると、修正不可能かもしれない…
ナレーションで修正すれば、一縷の望みはある!
ただ、一縷の望みは残っている。それは、ナレーションで修正すること。
今作がお得意の歌子の歌で雰囲気をつくって誤魔化すように、ナレーションを台詞に被せて誤魔化すのだ。
例えば、今回の終盤で、暢子がバスの中から智(前田公輝)に呑気に「バイバ~イ!」と言った時に、「暢子は、自分の選んだ道が正しかったのか、本当は不安で不安でしょうがなかったのです…」と被せたら良かったのだ。
それをやらずに、冒険活劇が始まるような大袈裟な劇伴とナレーションで締めくくるから、“あざとい” し、“取って付けたよう” に見えるのだ。いっそ、新章で演出も心機一転した方が良いと思う。
あとがき
15分の朝ドラの感想を書くのに、約2時間もかかってしまいました。ホント、コスパが悪い感想です(笑)
それにしても、主人公の「18年間の人生」が感じられない「最初の5週間」だったように思います。「残り4/5」ですが、心配ですね。もう少し、沖縄という舞台、本土復帰という時代を、内容に反映しても良かったかなぁと。これなら、ほぼ『ひよっこ』のような(苦笑)
とにかく、週明けから、気持ちを切り替える予定です…
最後に。歌子が劇中で歌っていたのは「♪芭蕉布」です。字幕付きで放送したのは「土曜日版」と「2分でちむどんどん」用でしょうか? 先日紹介した番組で本物の「♪芭蕉布」が聴けますよ。
【おすすめ番組】島唄を通して沖縄を感じる番組!NHK総合「沖縄 島唄を見つめて~2022年春~」の見逃し配信と再放送情報
ちむどんどんさしみてぃくぃみそーれー
※「胸がわくわくする気持ちにさせてください」の意味。
★本家の記事のURL → https://director.blog.shinobi.jp/Entry/16846/
【これまでの感想】
第1週『シークワーサーの少女』
1 2 3 4 5 土
第2週『別れの沖縄そば』
6 7 8 9 10 土
第3週『悩めるサーターアンダギー』
11 12 13 14 15 土
第4週『青春ナポリタン』
16 17 18 19 20 土
第5週『フーチャンプルーの涙』
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