17才の帝国〔全5回〕 (第1話・2022/5/7) 感想

NHK・土曜ドラマ『17才の帝国』
公式リンク:Website、Twitter、Instagram
第1話〔全5回〕『帝国誕生』の感想。
なお、本作は、2022年春に全話をクランクアップ(撮影終了)しているため、感想には要望などは基本的に書かずに、単純な感想のみとします。
202X年。没落した日本経済の回復を図る首相の鷲田(柄本明)は内閣官房副長官の平(星野源)に命じ、AIを使った実験都市プロジェクト「ウーア」を実施することを発表。為政者としてAIが選んだのは、‘総理大臣’に任命された17歳の高校生・真木(神尾楓珠)ら若者ばかりだった。半年後、真木に憧れる女子高生・サチ(山田杏奈)ら‘移住組’も加わり、ウーアが始動する。
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
原作:なし
脚本:吉田玲子(過去作/サトラレ、帰ってきた時効警察、モザイコ100)
脚本協力:鈴木貴昭(過去作/ハイスクール・フリート、マブラヴ オリタネイティヴ)
演出:西村武五郎(過去作/あまちゃん、リモートドラマ・Living、きれいのくに) 第1話
桑野智宏(過去作/ウェルかめ、梅ちゃん先生、あまちゃ、おかえりモネ)
音楽:坂東祐大(過去作/美食探偵 明智五郎、大豆田とわ子と三人の元夫)
Tomggg(とむぐぐぐ)(過去作/音楽ゲームアプリ"DEEMO2"、オンゲキ)
前久保諒(過去作/Dragon Night / SEKAI NO OWARI編曲)
網守将平(過去作/NHK Etレ「ムジカ・ピッコリーノ」(シーズン10)楽曲提供)
主題歌坂東祐大 feat. 塩塚モエカ(羊文学)「声よ」
プロデューサー:佐野亜裕美(カルテット、大豆田とわ子と三人の元夫)
こんな内容のドラマ…
タイトルだけでは内容が分かりづらいから、まず内容について。時代は数年後 202X年の近未来、日本のある地方都市に設立された実験都市「UA(ウーア)」を舞台に、最先端のAIで「最も総理に相応しい人物」に選ばれた17歳の若きリーダーの姿を描く、“青春SF×政治ドラマ”。
プロジェクト『君の声が聴きたい』に関連している内容…
なお、NHKは公式リリースしていないが。
2022年4月から、成人年齢が20歳から18歳に引き上げられたことを受けて、1万人の子供や若者たちの声を集めて5月6日(金)~14日(土)まで子供や若者の幸せについて考えるプロジェクト『君の声が聴きたい』を放送中で、このドラマも関連性がある内容になっている。
実験都市・ウーアの総理に選ばれた主人公役は神尾楓珠さん
主演で、主人公であるAI「ソロン」によって実験都市・ウーアの総理に選ばれた真木亜蘭を演じるのは、ドラマ『顔だけ先生』(2021年10~12月)で主人公の演技への評価が高かった俳優の神尾楓珠さん。
主人公に恋心を抱き物語を動かすキーパーソン山田杏奈さん
主人公に恋心を抱き、物語を動かすキーパーソンで、ヒロインの茶川サチを演じるのが、現在放送中のドラマ『未来への10カウント』で、「強くなりたい」と熱望するボクシング部唯一の女子部員を好演している山田杏奈さん。
個性的な若手とベテランの俳優さんたちが多数出演
その他、個性的な若手とベテランの俳優さんたちが多数出演している。
個人的に興味深いのが、ぶっ飛んだ作品で異彩を放つ染谷将太さん。既得権益にしがみつく市議会議員を演じる、前衛的&実験的舞踊家・田中泯さん。
そして、総理大臣・鷲田を演じる柄本明さんは、前述の山田杏奈さんとラマ『未来への10カウント』で共演中。
奇抜で斬新な初期設定を、丁寧に説得力ある映像で魅せた!
さて、ドラマそのものについて語ろう。物語の初期設定も人物設定も、かなり奇抜で斬新だ。
しかし、〔全5回〕の第1話のほぼ全てを使って設定を丁寧に、且つ、説得力を持って描写したのは大きく好感が持てるし、評価も出来る。
ツッコミどころはたくさんあるが、気にならない理由がある
もちろん、数年後の日本の設定のファンタージーだから、当然に「おいおい!」とツッコミたくなる描写は多々ある。だが、ここは敢えて気にしない。いや、大して気にならないと表現した方が正確かも知れない。その理由は…
【理由1】ロケ地の選び方の絶妙さ
1つは、ロケ地の選び方の絶妙さだ。実は、今作の主要なロケ地が、長崎県佐世保市で敢行された。佐世保在住の知り合いから情報提供があったし、佐世保市も情報発信しているから間違いない。
できるだけスタジオセットに頼らず、屋外ロケのシーンを組み込むことで、陳腐な合成だらけのSFドラマにならず、リアルとアニメっぽさを融合した、実写ドラマになっているからだ。
【理由2】撮影と編集上の色調整の妙
もう1つは、撮影と編集上の色調整の妙。
SFを演出する際、色調整は “青” を強調し、“赤” を含めた他の色は彩度を落として、全体をブルーのフィルターが掛かったような “彩度の低い映像” で雰囲気を創るのが一般的。
想像の域になるが。しかし、今作は意外に “赤” を “差し色(アクセント)” として活かし、意外にビビッドな色合いにしている。
これによって、映像的に暗くなりがちなSFをアニメっぽい色彩豊かな世界観の創出に成功している。
【理由3】脚本と演技によるアニメらしい台詞回し
最後の1つが、脚本と演技によるアニメらしい台詞回しだ。簡単に言うと、少しリアリティーでない言い回しだ。
「普通は、そういう言い方はしないな」という台詞を敢えて盛り込んで、俳優さんたちがその台詞を巧みな演技で不自然にならないように喋ってくれるから、リアルでないが、アニメっぽい世界観ができる。ここは、感じてもらうしかないのだが…
実験都市ウーアの住人になったつもりで楽しんだ方が得策
以上の3点から、細かいツッコミを入れるよりも、今作の世界観に違和感を覚えないなら、そのまま自分も実験都市ウーアの住人になったつもりで楽しんだ方が得策だと思う。
近未来SFの恐怖より、昭和の少年SF短編のワクワクドキドキ
映像的には…
1994年に『ドラゴンボールZ』にて脚本デビューし、90年代後半は『おじゃる丸』などに参加。その後2002年には、スタジオジブリ作品の映画『猫の恩返し』の脚本を手がけた吉田玲子氏のオリジナル脚本だから、前述の通りに “アニメっぽい世界観” だ。
しかし、実際に実写ドラマになると “近未来の恐怖” よりも、不思議と… 昭和の頃の少年漫画誌や1970年代のNHK少年ドラマシリーズシリーズに通じる “少年SF短編” の懐かしいテイストを感じて、小学生の頃のワクワクドキドキした気持ちを思い出した。
あとがき(その1)
内容的には、まだ初期設定の説明が終わっただけ。なので、今後の展開次第になりますが。それでも、序盤は「若年層向け?」と思いましたが、終盤になるにつれて「既得権益にしがみつきたがる大人たちへのアンチテーゼ!?」と思って観ていました。
だら~んと何も考えずに見られるドラマも良いですが、テーマ性やメッセージ性のある連ドラが本来好きなので、これからが楽しみです。
あとがき(その2)
それと、実は今作の怪しげなキャラクターの演技をする神尾楓珠さんに期待していたので、『ナンバMG5』の感想を投稿するのをやめました。今のところ、『顔だけ先生』から今作に直結して正解だったように思います。
あとがき(その3)
なお、放送前から今作のサントラ盤が発売が決定されている(2022年6月1日発売予定)のが珍しいです。実際に聴いてみると、なかなか聴き応えのある楽曲ばかりで、テンションが上がりました。
★本家の記事のURL → https://director.blog.shinobi.jp/Entry/16824/
- 関連記事