【脚本プチ講座 第3弾】質問にお答えします!「実は、○○でした…」と「のちに…」の違いについて ※連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』完全対応版

【非公開コメント】で頂戴したご質問にお答えします
今回は、【非公開コメント】で頂戴したご質問にお答えします。その質問は、『連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」〔全112回〕 (第112回/最終回・2022/4/8) 感想』に書いた内容についての、次のご質問でした…
「実は、○○でした…」と「のちに…」の違いについて、ちょっと分かり難いので解説して欲しい…
上記のようなものでした。そこで、私なりの解釈と理解になりますが、補足したいと思います。
理解するのに、簡単な実例をご紹介
これ、簡単な実例があります。もちろん、観たことが無い人は対象外ですが。「実話がベース」になっている映画やテレビドラマで、本編が終わった後に、実際のモデルとなった人の写真や映像、または、現在どうなっているのかや、その後の顛末をエンド・クレジットと一緒に流れる作品がありますよね。
本編が終わった後に、モデルの紹介や顛末の映像が流れる
例えば、大人気映画なら英国ロックバンドのヴォーカリスト、フレディ・マーキュリーの人生を描いた映画『ボヘミアン・ラプソディー』や、当ブログで名作と紹介した、60年代のアメリカで黒人女性が人種差別を受けながらもNASAの宇宙開発に貢献したサクセスストーリーの映画『ドリーム』とか。
いずれも、本編が終わった後に、実在のモデルの紹介や、その後の顛末の映像が流れます。
実話ベースの作品の最後の「その後」は気になりますか?
では、私から皆さんへ質問です。
「本編が終わった後の映像」を見て、不愉快な気持ちや、「蛇足だな」とか思いましたか?
もちろん、本編を見る前に、実話ベースであるのか無いのか、実話を知っているか知らないかで、微妙に答えは違って来ると思いますが。おおむね、「なるほど。そうだったのか!」「へえ、そうなったんだ…」と腑に落ちたり、納得したり、更に感動が高まったり… するのではないでしょうか。
作品の構成は「プロローグ+本編+エピローグ」と統一
では、ここで視点を変えます。私は、(特に映画は)エンド・クレジットとエンディング・テーマが終わって、劇場内が明るくなるまでが「一つの作品」と言う考え方です。ですから、本質的には「場内が暗くなってから明るくなるまで、全部が本編」と言いたいところです。
しかし、今回の投稿では分かり易く「一つの作品」は「プロローグ(序章)+本編+エピローグ(終章)」と言う “構成” だと統一します。
「プロローグ+本編」と「エピローグ」の関係性に注目!
そして、今回で注目するのは「プロローグ+本編」と「エピローグ」の関係性です。そこで、そもそも「エピローグ」とは何でしょう? 概念としては、物語を完結するために、物語の中の視点で描いた結末のことを言います。因みに、物語のあとに著者の言葉で書くのは「あとがき」と言い、区別します。
「エピローグ」には、大きく分けて「2種類」あります!
1つ目は、フィクション系の映像に多い、物語中の登場人物に「本編」のあと、何が起こったのかと言う “未来” を表現した「エピローグ」。
もう1つが、ドキュメンタリーや伝記系の映像に多い、物語の主題となった登場人物たちの “顛末” を表現した「エピローグ」。これを、当ブログ流に置き換えますと。前者が「のちに…」で、後者が「実は、○○でした…」となるわけです。
なぜ実話ベースでは「実は○○でした…」と感じ難いのか?
ここで、「いや、むしろ “逆” なのでは?」と思われた方、いらっしゃいますか? いらっしゃったら、あなたは鋭い! そう、逆なんです。いや、正確に言えば、どちらも「のちに…」なのです。
では、なぜ「実は、○○でした…」と感じにくいのか? それは、この文章が「エピローグ」について語っているからです。「エピローグ」の場合は、前者が「のちに…」で、後者が「実は、○○でした…」で良いのです。でも、これが「本編の結末部分」となると、話が変わって来るのです。
『カムカム』には、上記の「2つのエピローグ」があった!
さて、ここまで来たら、だいぶ見えて来たのではないでしょうか? そう、先日最終回を迎えた連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』には、上記の「2つのエピローグ」が用意されていたのです。
最終回が、フィクション系の映像に多い、物語中の登場人物に「本編」のあと、何が起こったのかと言う “未来” を表現した「エピローグ」。最終回の1つ前の放送回(第111回)が、ドキュメンタリーや伝記系の映像に多い、物語の主題となった登場人物たちの “顛末” を表現した「エピローグ」だったのです。
「朝ドラの終わり方」についてに"考え"を深めてみる…
では、核心に入っていきますので、皆さん、私について来て下さいね。
その前に、朝ドラに於いての「エピローグ」は “どこ” なのか? と言う議論は、今回は話が複雑になるので止めておきます。とにかく、この場で論じるのは「朝ドラの終わり方」についてに絞り込みます。
で、『カムカムエヴリバディ』では、50年間、姿を見せなかった「一人目の主人公・安子」が終盤から登場した「アニー・ヒラカワ」だった… と、視聴者も劇中の登場人物も知った時点の “あと” からを「エピローグ」と位置付けます。
フィクションで「実は○○でした…」は蛇足に見えちゃう!
では、ここから畳み掛けますよ。
その「エピローグ」で描かれたことは、大きく「2つ」ありました。1つは、これまで描かれて来たこと、描かれたが宙ぶらりんのままだったことの “尻拭い” であり “後付け理由” とも言うべき「実は、○○でした…」の連続です。
そう、これは本来は、ドキュメンタリーや伝記系の映像で使う、物語の主題となった登場人物たちの “顛末” を表現した「エピローグ」なのです。でも、それを『カムカムエヴリバディ』では、フィクションでやっちゃった。『カムカム』が実話ベースなら「実は、○○でした…」は、サプライズになります。「へえ、そうだったんだ」って。
でも、フィクションでやってしまうと、「最後まで隠しておく必要あるの?」となってしまうのです。
フィクションには未来を表す「エピローグ」は馴染みが良い
『カムカムエヴリバディ』の「エピローグ」で描かれたもう1つは、劇中の登場人物たちの「2025年の未来」です。これは、フィクション系の映像に多い、物語中の登場人物に「本編」のあと、何が起こったのかと言う “未来” を表現した「エピローグ」なので、本編との馴染みが良いです。
実際も、私は、最終回だけは「エピローグ」として普通に感じました。むしろ、「マスクを着用しない未来」を描いた「100年の物語」のエピローグとして、意外と前向きで、朝ドラらしくて悪くないなと。
「本編の中」で「実は、○○でした…」をやるのは簡単
でも、その1つ前の放送回で、やっちまったわけです。「実は、○○でした…」の連射を。ここが失敗だったと思います。要するに、「実は、○○でした…」をやりたいなら、明らかに「本編の中」でやるべきだったのです。そして、「エピローグ」は1つだけにする。これだけのことです。
「本編の中」で「実は、○○でした…」をやるのは簡単です。出来るだけ「アニー=安子」が視聴者に見抜かれる以前に、「実は、○○でした…」を済ませてしまえば良いのです。そして、最後の最後まで「アニー=安子」を焦らして、本編の最後で一気に「実は、アニーが安子でした!」と花火を打ち上げれば良かったのです。
そうすれば、強引ではありますが「大団円」で本編が終わって、あとは粛々と最終回で、フィクションらしく堂々と「のちに…」と、やれば良かったのです。
まとめ…
お分かりいただけたでしょうか? 簡単に言えば…
●「実は、○〇でした…」 → それまで描かれた前段を受けて「タネ明かし」をするイメージ
●「のちに…」 → それまで描かれた前段とは直接関係のない「想像や未来」のイメージ
です。ですから、いわゆる「伏線と回収」の関係に影響するのは、「実は、○〇でした…」 ですね。「のちに…」は、特にフィクションに於いては “おまけ” や “次作への期待感” みたいなものですから。
あとがき
「実は、○○でした…」と「のちに…」は、物語の終盤に登場して効果を発揮するテクニックですが、上記のように微妙に違いがあるのです。
ただ、両方に共通する点もあります。それは、どちらもむやみやたらに乱用すると、「あざとい」とか「くどい」と言った印象になり易いと言う点です。やはり、効果的なのは「ここぞ!」と言う時に、ピンポイントで使うことだと思います。
最後の最後に。脚本関連の書籍でおすすめの一冊です。「更に、脚本を掘り下げてみたい方」や「脚本家が、どんなことを考えて “ウケる脚本” を書いているのか知りたい方」におすすめです。
本当は、実際の脚本や映像を見ながら解説すると分かり易いのですが、今回は、脚本を書く立場と、視聴者の立場の両方から、伏線と回収を掘り下げて解説しました。皆さんの、ドラマ鑑賞ライフのお役に立てれば幸いです。
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