妻、小学生になる。 (第9話/最終回・前編・2022/3/18) 感想

TBS系・金曜ドラマ『妻、小学生になる。』
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第9話/最終回・前編『妻、いなくなる。』の感想。
なお、原作となった漫画・漫画・村田椰融『妻、小学生になる。』は、第1巻~第10巻まで既読。3月16日発売の最新刊(第11巻)は未読。
貴恵(石田ゆり子)が消えたことで万理華(毎田暖乃)は自分の人格を取り戻し、母・千嘉(吉田羊)との新たな生活が始まる。一方、心ここにあらずの圭介(堤真一)を守屋(森田望智)が、自分の殻にこもる麻衣(蒔田彩珠)を蓮司(杉野遥亮)が心配する。友利(神木隆之介)もまた、春から高校生になるという出雲(當真あみ)を応援しながら、自分は心にぽっかりと穴が空いたようだった。
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
原作:漫画・村田椰融『妻、小学生になる。』
脚本:大島里美(過去作/花燃ゆ、凪のお暇、おカネの切れ目が恋のはじまり)
演出:坪井敏雄(過去作/凪のお暇、カルテット、わたナギ、恋あた、リコカツ) 第1,2,5,8話
山本剛義(過去作/凪のお暇、コウノドリ2、わたナキ、オー!マイ・ボス!、最愛) 第3,6,9話
大内舞子(過去作/「凪のお暇」AD、恋あた、TOKYO MER) 第4話
加藤尚樹(過去作/コウノドリ1,2、ホワイト・ラボ、MIU404、にぶんのいち夫婦) 第7話
音楽:パスカルズ
主題歌:優河「灯火」
亡くなった人も、遺された人も、成仏する、成仏させてあげる、それが一番…
今日、ご先祖様の墓参りをしてきたばかりだから、考え方が仏教的になってしまうが。亡くなった人も、遺された人も、成仏する、成仏させてあげる、それが一番のような気がするが。
まあ、これを言ってしまったら今作の根本を否定することになるから、そこをツッコむのは止めておく。
連続ドラマとしては、前回か今回で終わった方がスッキリしたような…
と言うわけで、個人的には決して悪いと思わないが、全体的に間延びしたのが気になった。もちろん、これを “丁寧な描写” と評することも出来なくはないが。やはり、もはや “成仏” と言う単語が劇中に出ている時点で、成仏するまでは “間延び” だと思われてもしょうがないような。
だって、この設定だと、貴恵(石田ゆり子)が戻りたくなるのは当然で、だから成仏できないのだから。だから、連ドラとしては、先週で謎解きが終わった時点で終わるか、圭介(堤真一)と麻衣(蒔田彩珠)が前向きになったのを見届けた貴恵が成仏して終わった方が、スッキリしたと思う。
「人間が人の死をどう受け止めていくのか」を当て嵌めてみると…
私のブログで度々紹介する、1960~80年代に活躍したアメリカの精神科医「エリザベス キューブラー・ロス」の著書『死ぬ瞬間―死とその過程について』に書かれている「人間が人の死をどう受け止めていくのか」について書かれている心の変化を引用すれば…
人は非日常的なことが目の前で起こった時に、「否認と孤立」「怒り」「取り引き」「抑うつ」「受容」と言う段階を経て昇華すると言う考え方があると書いてある。この過程を圭介と麻衣、そして貴恵自身に当てはめると下記のようになると思う。因みに、この判断は、看取りを業務としている看護師で、本作の大ファンである妻の意見も反映している。
「否認と孤立」
「怒り」
「取り引き」
「抑うつ」
★今この辺り
「受容」
麻衣:
「否認と孤立」
「怒り」
★今この辺りを行ったり来たり
「取り引き」
「抑うつ」
「受容」
貴恵:
「否認と孤立」
「怒り」
「取り引き」
★今この辺りを行ったり来たり
「抑うつ」
「受容」
要するに、圭介は、あと貴恵の死を「受容」するだけ。貴恵は、前回で「受容」の手前まで来たが、今回で後退して「取り引き」と「抑うつ」の間を行ったり来たりで、ラストで「取り引き」へ傾いた。そして、麻衣は一番「受容」に遠い位置づけで、今回のラストで漸く「取り引き」を受け入れた感じ。
圭介の「ゆっくりでいい どれだけ時間がかかっても」は麻衣にとって"救いの言葉"…
まあ、現実の感情は数学のように明確な線引きは出来ずに、ふわふわと行ったり来たりを繰り返して「受容」に辿り着くのだが。その意味で、圭介が「ゆっくりでいい どれだけ時間がかかっても」と麻衣に励ましたのは悪くないと思う。
毎回、新しい何かが起きて変化が生まれるのが連ドラの醍醐味!
では、なぜ間延びと感じたのか?
それは、連ドラと言うのは、第1話から最終回までが “大きな起承転結” で構成されつつも、1話毎も “丁寧な起承転結” が準備され、毎回、新しい何かが起きて、それによって変化が起きる… の連続こそが、連ドラの面白さだから。
だから、前回の結末を受けただけで、これと言った大木は変化も無いまま、終盤の数分間だけ変化したのでは勿体ないと思うのだ。そして、同時に、間延びも感じてしまうのだ。
圭介と麻衣の心理状態に、もっと"大きな差"を創れば良かったと思う…
これ、間延びに感じさせない方法があったと思う。それは、今回の序盤から、圭介が「受容」の直前まで辿り着いており、麻衣はまだ「否認と孤立」状態にして、親子の心理状態に大きな差を創れば良かったのだ。
そうすれば、娘を引き上げる(前進させる)父親の姿を描くと共に、そんな夫の姿に妻も成仏(受容)への道を模索する姿を描く1時間になって、全員が「受容」する最終回を迎える準備をしたら良かったように思う。
あとがき(その1)
本作は、好きです。原作も最新刊(これから読みます)以外の10巻は読んだくらいです。過去の感想では絶賛もしています。そして、もちろん、本文で書いたような「死を受容する過程」には、人それぞれの “時間” が必要だと思います。
だから、今作の登場人物たちにも、それぞれの葛藤があり苦悩もあり、時間が必要なのは分かります。ただ、やはり “作品” として捕らえると、まだ続くのか… と思ってしまいました。それが偽り無き気持ちです。
あとがき(その2)
大切な人を失った悲しみは計り知れません。その人にしか分からないと思います。そして、いつまでも大切な人を愛することも素晴らしいことです。しかし、人間ですから、突然か突然でないかは別にして、いつか別れは来るのです。
今作が興味深いのは、現実の世界では、遺された人の “死の受容” を考えますが、今作では死を宣告されたのではく、亡くなった人の “死の受容” にスポットを当てている点です。その意味で、“そこ” を最終回に “敢えて残した” と捉えることも出来ます。ドラマは次回で終わります。登場人物たちも前進できるのを期待して、見ようと思います。
あとがき(その3)
今回は、お墓参りに行って、亡き母や父、親戚らに会って来て、菩提寺の住職さまと「コロナ禍の死」について話して来たので、ちょっと精神状態が普通ではないんですよね。それに。母が他界して、5年近くなりますが、未だに、すぐそこに居るような気がするんです。

©浄土宗東京教区教科団『「幸せ」に向かって生きる』
そう言う気持ちの中で、今回を見たので、「圭介、麻衣、友利も、無理しない範囲で前向きに生きるしかない!」って思ってしまいました。と言うわけで、妙な心の状態なので、暫しコメント欄は閉じます。平常心に戻ったら、コメント欄を開けさせていただきます(謝)
※下記の通り、今作のサウンドトラック盤が絶賛発売中!
★本家の記事のURL → https://director.blog.shinobi.jp/Entry/16671/
【これまでの感想】
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