ファイトソング (第9話・2022/3/8) 感想

TBS系・火曜ドラマ『ファイトソング』
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第9話『舞台新たに恋も新展開!? 変わらぬ心と変わってしまった関係』の感想。
手術の2日前に‘お別れ会’を済ませた花枝(清原果耶)と芦田(間宮祥太朗)。翌日、花枝は直美(稲森いずみ)や慎吾(菊池風磨)、凛(藤原さくら)、迫(戸次重幸)ら皆に見送られ、入院する。一方、激しい喪失感の中で新曲を完成させた芦田は、思いに突き動かされるかのように花枝に会いに行くが、慎吾に追い払われてしまう。その頃、花枝は手術に臨んでいた。それから2年。花枝や芦田、慎吾らは…。
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
原作:なし
脚本:岡田惠和(過去作/ひよっこ、最後から二番目の恋、少年寅次郎、姉ちゃんの恋人、虹色カルテ)
演出:岡本伸吾(過去作/隠蔽捜査、インハンド、病室で念仏を、恋あた…) 第1,2,5,8話
石井康晴(過去作/花より男子シリーズ、テレウスの船、逃げ恥、ドラゴン桜2) 第3,6話
村尾嘉昭(過去作/アンナチュラル、Nのために、死にたい夜にかぎって、最愛) 第4,7,9話
音楽:大間々昂(過去作/地味にスゴイ!校閲ガール、ブラックリゲンジ、お金の切れ目が゙恋の始まり)
主題歌:Perfume「Flow」
こうなると、これまでの演出(演技指導)の失敗が痛い!
2年の時間経過があったから、序盤が説明過多になったのは止むを得ない。今回で最も困ったのは、序盤での花枝(清原果耶)の次の台詞だ。
花枝「なんか私 前より しゃべる人になってるよね」
恐らく、これまで本作を見て来た人なら、上記の台詞に違和感を覚えたのではないだろうか? いや、脚本上は間違っていない。主人公は、2年前の病気の手術による失聴と、芦田(間宮祥太朗)との失恋によって “変わった” はずなのだ。だから、<前より しゃべる人>になるのは不思議ではない。
饒舌(口数多く、諄く喋ること)」として描かれて来たのだ。従って、厳しいようだが、この台詞は “嘘” になってしまった。もちろん、演出(演技指導)の失敗だ。
しかし、今作の演出と演技指導によって、清原果耶さんが演じる主人公は「花枝=音声言語を獲得した後の「中途失聴(鼓膜や聴神経などの障害や薬物、事故、騒音などの原因により、聞こえが不自由になった人)」なり、話すことにはあまり不自由しないが、聞くことに障害が生じるのは、撮影前から分かっていたはずだから…
もっと前回までの花枝を口数の少ないキャラ設定にすべきだったと思う。まあ、「花枝が喋り過ぎ」とは何度も書いて来たことだが…
岡田惠和氏の脚本らしいドラマとして進展して来た…
さて、物語は至って普通… と言うか。
これも以前から書いて来たことだが、描かれる世界が “施設内” に集約されたため、かなり違和感が払拭されて見易くなった。また、これまで前面に出ずに後方支援だった慎吾(菊池風磨)がグイっと前に出て来たため、人間関係も分かり易くなった上、物語が前進している雰囲気も出て、悪くなかった。
ただ、全体的に “あざとさ” が残っているのは気になるが。それでも、岡田惠和氏の脚本らしい「弱い立場や悩みを抱えた人たちが希望を見出して生きて行くドラマ」らしくはなって来たと思う。
ドラマを通じて聴覚障害の情報発信をする価値も意味もある
また、ここへ来て、意外と良いと思ったのが、聴覚障害について多少なりとも啓蒙活動になっている点だ。昨年10月に放送された『恋です!?ヤンキー君と白杖ガール?』で、視覚障害にスポットが当たったように。やはり、テレビドラマを通じて情報発信する価値も意味もあると思うから。
その意味で、私も2012年8月に突発性難聴を患い(幸い、早期治療が功を奏して完治したが)、それ以来、聴覚障害のボランティア活動を通して、いろいろ知ったことを、この場を借りて書いてみる。何かの参考になれば…
まず、聴覚障害の人は、ハウスクリーニングや便利屋や代行サービス業で働いてる人が多いと言う現実。これは、ネットで仕事を依頼するつもりで検索すれば一目瞭然。
また、聴覚障害で手話が出来る人は、約2割(情報源)これは、手話を使って話している “ろう児たち” が差別されることが多いために、長い間(凡そ20年近く前まで)、ろう学校では手話は禁止されていたから。そう、信じられないかも知れないが、「手話は言語」とは言えない時代があったのだ。
そのため、“ろう児たち” に日本語を獲得させるため、発音し口の形を読み取ることで話をする「口話法教育」が行われて来た。これが今も続いているのが現状。
現在は、デジタル補聴器や人工内耳など、聴覚をサポートする技術の発達もあり、指の形で五十音を示す「指文字」や、口の動きを読む「口話」、そして手話など、各自が使いやすいコミュニケーション手段を選んでいる。
従って、中途失聴の花江は「口話」の訓練中と言う設定だから、まず自分が全部喋ってから… のような感じになるのは間違ってはいないと思う。
また、聴覚障害のランナーも多い。目立たないと言うだけ。また、中途失聴の場合は、発音に困ることは殆ど無い。ただ、「口話」の訓練中は、自分の声が聞こえないため、音調調節の感覚を掴むのが大変。その意味では、花枝はそれなりの訓練は頑張ったと言う設定で良いと思うし、それが花枝らしいと思う。
あとがき
恐らく、どんなシチュエーションでも使えるようにと事前に準備していた、「これからも 変わらず よろしくな」の手書きのフリップを “あの意味” を被せて花枝に、おどけて見せた慎吾が、清々しくて素敵でした。
遂に、次回が最終回。これまでの進む速度に対して、残り2回が少々忙しないですが。岡田惠和さんらしい、ベタなハッピーエンドで良いと思います。
★本家の記事のURL → https://director.blog.shinobi.jp/Entry/16636/
【これまでの感想】
第1話 第2話 第3話 第4話 第5話 第6話 第7話 第8話
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