連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」〔全112回〕 (第82回・2022/2/25) 感想

NHK総合・連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』
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第82回〔全112回〕/第17週『1983-1984』の感想。
※ 毎日毎日の感想なので、私の気分も山あり谷ありです。ご理解を。
※ また、称賛、絶賛の感想だけをご希望の方は読まない方が良いです。
映画のオーディションに向けて、ひなた(川栄李奈)は五十嵐(本郷奏多)と一緒に虚無蔵(松重豊)に稽古をつけてくれるよう頼むのですが断られてしまいます。それでも役をつかもうと懸命に努力した五十嵐は、なんとか予選を通過。オーディションを翌日に控え、緊張する五十嵐を元気づけようと、ひなたはるい(深津絵里)に頼んで…
---上記のあらすじは[Yahoo!テレビ]より引用---
原作・原案・脚本:藤本有紀(過去作/ちりとてちん)
演出:安達もじり(過去作/花燃ゆ、べっぴんさん、まんぷく、おちょやん) 第1,2,4,7.8,9,13,17週
橋爪紳一朗(過去作/てっぱん、花子とアン、半分、青い。、エール) 第3,5,7,15,16週
泉並敬眞(過去作/まんぷく、スカーレット、六畳間のピアノマン) 第11週
深川貴志(過去作/花燃ゆ、とと姉ちゃん、半分、青い。、麒麟がくる)
松岡一史(過去作/まんぷく、心の傷を癒すということ) 第10,12週
二見大輔(過去作/半分、青い。、なつぞら、伝説のお母さん) 第6,14週
音楽:金子隆博(過去作/Q10、三毛猫ホームズの推理 、あいの結婚相談所)
演奏:BIG HORNS BEE(過去作/米米CLUBのホーンセッション)
主題歌:『アルデバラン』(作詞・作曲:森山直太朗、編曲:斎藤ネコ、歌:AI)
語り:城田優
制作統括:堀之内礼二郎(過去作/花燃ゆ、べっぴんさん、まんぷく)
櫻井賢(過去作/4号警備、透明なゆりかご)
※敬称略
昨晩の『SONGS』で"神回"と紹介されていた「第8回」について
昨晩のNHK総合『SONGS/AI』で “神回” と紹介されていたのが、第2週に放送された「第8回」。私はこの回の感想で、脚本の “雑さ” を次々と挙げながら、最後にこう結んだのだ…
<私>が言えるのは、『アルデバラン』に於ける歌詞の奥深さと広さ、AIさんの歌唱力によって、“僅か1分17秒” のオープニング映像が、同じ汽車の中で稔は安子に何を感じ、安子は楽しい時を過ごした思い出に浸る時間の表現として、秀逸だったこと。
『連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」〔全120回〕 (第8回・2021/11/10) 感想』より
そう。ここのエピソードの連結は不自然だが、15分間を一括りとして捕らえると、主題歌をこの回の “総括” に持って来た演出が秀逸だってこと。そして、この演出が、今週の演出担当で今作のメイン監督である安達もじり氏だと言うこと。
この第8回が “神回” と言われると言うことは… ドラマとは順番一つ違うだけで全く違う印象になってしまうってこと。だから、ドラマの設計図である「脚本」が重要なのは当然のことだが、その設計図を基に、どんな材料をどんな順番で組み立てて行くのか、その “仕立て=演出” も、相当に重要だと言うことを、今回の感想の冒頭で言いたい。
アバンは、シリアスから一気にコミカルへ
と言うわけで、今回の本編の感想。
まず、アバンタイトル。出だしは、今週では幾度も登場している撮影所の畳敷きの稽古場だ。そして、前回の五十嵐(本郷奏多)の “時代劇への情熱” を虚無蔵(松重豊)が受け入れるかどうかと言うシリアスなシーンだ。しかし、ナント、途中からリズミカルなハンドクラップで始まる劇伴が重なって来る。
これを良しとするかどうか微妙なところだが、「ひなた編」は “とにかく明るく楽しく” をモットーに進めて来ているから、ここで急にシリアスにするより、劇伴でコミカル路線に一度大きく振って、主題歌で一息つかせると言う演出だと思う。
劇伴でコミカル路線にしたのは、チャレンジ精神のある演出
この辺の、シリアスとコミカルの塩梅は、相当に微妙なさじ加減を要求されるが、恐らく脚本は(台詞のやり取りから想像するに)シリアスに書かれているはず。そこを、安達氏が “演出でコミカル” に振った。
そのことで、スーリーは、「五十嵐と虚無蔵」のものになっているのを、何とか、主人公ひなた(川栄李奈)寄りに引き寄せた… と考えるのが妥当だと思う。この辺は、好みが分かれるかも知れないが、私はチャレンジ精神のある演出だと評価したい…
今回は、劇伴の選曲が、かなり面白い
さて、主題歌明けは、虚無蔵が日常を着流し姿で武士言葉の理由が明らかに。まあ、隠しておく必要も、引っ張る必要もないから、良いことだ。そして、場面は、五十嵐の殺陣の練習に手を貸す主人公ひなた。チョッパーベースのリズミカルな劇伴が、シリアスな虚無蔵の場面から一転させる。今回は、かなり劇伴の選曲が面白い。
もう少し「ひなたの時代劇愛」を描いても良かったような…
で、ちょっと感じてしまったことがある。それは、「ひなたは、どこまで時代劇が好きなのか?」ってこと。今回の序盤で、虚無蔵と五十嵐の “時代劇愛” が描かれた分だけ、気になってしまった。
今でこそ、テレビや映画の時代劇の主人公が女性であるとか、女性が殺陣をやる作品は増えているが。劇中の1984年頃は、まだまだ「時代劇=男性、女性はお姫様か茶屋の娘」と言う “男尊女卑” がまかり通っていた時代。そんな時代だからこそ、「あほな子」なら、この度のオーディションに応募しようと、手を挙げても良かったのではないだろうか?
もちろん、無茶な話ではある。しかし、ひなたの “時代劇への愛” を描くなら、ミスコンの際の五十嵐との即興芝居、撮影現場での五十嵐との時代劇コントに続いて、オーディション応募も、あって然るべきだったような…
例えば、ひなたが無茶でもオーディションに応募するとか…
「男役を女性が?」と言うのではない。女性である主人公ひなたが、「男役でも良いから時代劇の世界に入ってみたい」と思わせることが重要なのでは? と思うのだ。受ける受けない、受かる受からないは別にして、手を挙げる姿勢を描くだけでも違ったと思う。
そう言う小さな積み重ねをしないと、「るい編」の時のるい(深津絵里)が、あの程度の描写で、英会話が出来て、「On the Sunny Side of the Street」に思い入れがあって、本人の名前の由来からトランペットも大好き… と言う、強引な展開をまかり通してしまったのを、またやることになってしまうと思うから…
ドラマとして良くなって来ているから、"欲" が出て来る!
それに、もしも、ひなたがこの度のオーディションを受けようとして、応募資格の段階で「女性」が理由で応募できなかった方が、今回の五十嵐の殺陣の練習相手に、ひなたが力を入れることも、五十嵐の応援をしたくなるのも、自然な流れになったのでは?
まあ、過ぎてしまったことではあるが、ドラマとして良くなって来ているから、「こうしていれば…」と “欲” が出て来るのだ。
ひなたが店番をしているシーンの"ヒグラシ"のセミの声が…
10分過ぎ、ひなたが店番をしているところへ五十嵐がやって来る。前回と同じ照明だが、今回は “ヒグラシ” のセミの声を強調して、夏の終わりを強調して来た。季節の終わりを強調することで、季節の変化と共に何かが起こりそうな予感をさせる。
そして、ここから一気にホームドラマへ転換だ。「毎日 帰ってから練習してたん」で時間経過も分かるし、珍しく、ひなたの思いの強さも見えて来た。そう、やはり、このように、ひなたは “おしゃべり” だから、何でも感情を表に出しているとは限らないのだ。だから、きちんと脚本で台詞にして、動かして、見せないとダメなのだ。
質は、先週までと格段に良くなっているから、満足感はある
そこを脚本が、「五十嵐の応援」で出来て、「ひなた自身の時代劇愛」で出来ていないから、中途半端に感じてしまう。でも、“ドラマ” として、最近の今作の中では、今週の出来が良いのは間違いない。
脚本も登場人物を動かして、その動力を物語が進むけん引力にしているし。演出も、登場人物の心情を描こうと、演技や劇伴、はたまた細かな演技指導や編集の工夫によって、「ただ単純に物語を見せる」のではなく、「登場人物を描く」ことで「物語を描く」ことに重きが置かれている。
そう、質は、先週までと格段に良くなっているから、満足感はある。特に、先週と比較すると丁寧だから…
あとがき(その1)
11分頃の、ひなたが回転焼きを焼くシーンでは、劇伴をやめて、回転焼きの生地が回転焼きの型に注ぎ入れる時の “生地が焼ける音” を強調して、それに続くように、ピアノから始まる弦楽との、ゆったりとしてアンサンブル曲がスネークイン(ガツンと曲が始まらない)。
ゆったりとした劇伴だが、(恐らく)チェロの豊かな低音と繊細なピアノの音が、“生地が焼ける音” と “紙袋のカサカサ音” に重なることで、≪ひなたと五十嵐の言葉で表せない緊張感≫が伝わって来ましたね。ああ言う “多くを語らぬ演出” が、個人的に好きです。
あとがき(その2)
そして、「大月屋」をあとにした五十嵐が、向こうから来たおじさんとぶつかるのを避けて避けた途端に、「あっつ!」と言って、それをひなたが微笑ましく見送る。あの「あっつ!」は脚本にあったんですかね。エキストラの通行人と合わせて、演出家のアドリブだったような。
でも、あの五十嵐の「あっつ!」があったからこそ、最終選考会の緊張感が際立ったと思います。今週は実質的に「火曜日スタート」でしたが、メリハリもあり、丁寧さもあって、良かったです。オーディションが週跨ぎになるので、演出もこのまま安達さんで繋いで欲しいです。
あとがき(その3)
2月26日、NHKに残る膨大な音声映像資料から歴史に残る著名な人々の珠玉の言葉を今によみがえらせ、永久に保存・公開する『NHK映像ファイル あの人に会いたい』で取り上げるのが、今作のタイトルの由縁である「ラジオ英語会話講師・平川唯一さん」です。
●放送日時:2022年2月26日(土) 午前5時40分~5時50分<総合・全国>
●番組公式サイト:https://www.nhk.jp/p/anohito/ts/K15V8PLV63/
明るくなぁれ、楽しくなぁれ…(Be cheerful, be joyful...)
★本家の記事のURL → https://director.blog.shinobi.jp/Entry/16591/
【これまでの感想】
第1週『1925-1939』
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妄想第2回『算太が町にやって来た』
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第17週『1983-1984』
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